「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」アナカの声が、暗いリフトの縦穴に響く。「どこに、向かってるんですか?」これまで声を潜めていたマツノキ父が、子を抱きながら訊ねた。「もっと下層だよ、妻が待ってるんだ」アナカが言った。下層のリフト乗場が暴徒に制圧されていないことを祈りながら。 25

2012-08-31 02:02:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リフトが下層に打ち付けられた。自動ライトが照らされ、何本もの銃口がアナカに向けられる。幸いにもそれは、ケビーシ部隊と連携を取っていたマッポたちの銃であった。暴徒でないことを確認すると、彼らは肩を叩きアナカを励ます。「シマッテコーゼ!」「ドーモ」アナカは一礼して駆け出した。 26

2012-08-31 02:11:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

幸いにも、下層はゴーストタウンめいて静まり返っていた。下層民は略奪のために上へ向かうか、あるいは家に閉じこもり嵐が去るのを待つか、いずれかであったからだ。鹿たちが我が物顔で「そでん」「トップ」と書かれた屋台に群がっている。アナカは残された力を振り絞って、自宅へと駆けた。 27

2012-08-31 02:21:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジゴクと化したアッパーとは対照的に、アンダーは奥ゆかしい静寂に包まれていた。……暫くして、リキシャーの揺れが止まる。アナカの家の前に到着したのだ。アナカがインターホンを押し、シャッターを叩く。妻の名を呼ぶ。しばらくして電動シャッターが開かれ、泣き腫らした妻が彼を迎えた。 28

2012-08-31 02:37:38
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アナカは居間で柱に背を預け、息を整えていた。心臓が破裂しそうだった。アナカの妻がマツノキの傷を応急手当すると、マツノキの息子は父の陰に隠れて、人見知りな目を向けた。「すみません」マツノキは憔悴しきった顔で言う。「奥ゆかしさ、それがキョートです」アナカの妻は静かに微笑んだ。 29

2012-08-31 02:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これからどうするかだが」アナカが言いかけたその時。ガシャン!ガシャン!不意にシャッターを叩く音。アナカは立ち上がり、インターホンのカメラを見た。「ウオーッ!」オニ・オメーンを被り包丁を持った男がひとり、シャッターをこじ開けようとしていた。「コワイ!」マツノキの息子が泣く。 30

2012-08-31 02:50:52
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アナカは銃を取り出し、祈るような気持ちでインターホン映像を睨み続けた。疲労で手が震え、撃鉄を起こすのも覚束ない。だが幸いにも「ウオーッ!ウオーッ!…ウオーッ……」オニ・オメーンの男はシャッターと格闘した後、アナカ家への侵入を諦め隣家へと向かった。空家を探していたのだろうか。 31

2012-08-31 02:56:51
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「ハァーッ!ハァーッ!」張り詰めていた緊張の糸が切れ、アナカはタタミに大の字に転がった。下層も安全には程遠いのだ。マツノキ父子が妻とはぐれた事を知ってはいたが、アナカにはもう何も出来なかった。「……祈ろう。祈ろう。祈ろう。嵐が、過ぎ去るのを」アナカは息を吐きながら言った。 32

2012-08-31 03:03:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ガイオンから数十キロ東に離れたキョート・ワイルダネスにおいても、異変は十分に視認できた。特にニンジャ遠視力の持ち主には。 33

2012-08-31 10:13:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……雲。いや、樹か」フォレスト・サワタリは丸めた拳を望遠鏡めいて覗き込み、西の空の不吉な夜の太陽を見やった。地上から生えた黒い何かが、浮遊する建造物に絡みつく。そして相変わらず、稲妻めいた断続的な輝き。「もういいじゃねえか」ハイドラはフードを目深に被った。「気に入らねえよ」34

2012-08-31 10:26:09
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「ビビってんのか、お前」ディスカバリーがハイドラにからかうように言ったが、目は笑っていない。フォレストは向き直った。「核では無いのか」「核?俺に聞くなよ」とディスカバリー。「知らねえし、俺達の行く先は東だし、どっちにせよ何もできやしねえよ」彼は寝転がった。「関係ねえ」 35

2012-08-31 10:40:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「偉そうによ!すかしやがって!」ハイドラは石を蹴った。「まだかよォ、モジャモジャの奴!」「シーッ」フロッグマンが黙らせた。地面に耳をつけている。「……蹄はセントール=サンか?他に……車の音だな、これは」「車?」ディスカバリーが素早く立ち上がる。フォレストは弓を手にした。 36

2012-08-31 10:50:14
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「ニィィーッ」ゴララララ……土煙とともに現れたのは、半人半鹿のバイオニンジャ=セントールと、並走する古びたバギーだった。「……」フォレストは構えた弓矢を降ろした。運転しているイエティめいた毛むくじゃらの存在は、彼らの仲間のファーリーマンである。「車だ!」ハイドラが叫んだ。 37

2012-08-31 10:53:54
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ゴララララ、バギーはガタつきながら停止し、ファーリーマンが飛び降りた。後部にはドラム缶が二つとアタッシェケース、ザック類が積まれている。「何だそりゃ!すっげえな」ディスカバリーが指差した。「分捕ったのか?」「そう」モップのような長い毛で全身が覆われたファーリーマンは頷いた。 38

2012-08-31 11:01:01
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「……俺、セントール=サン、盗賊、返り討ち、皆殺し」「素晴らしい戦果だ!」フォレストは戦利品をあらためた。「お前達二人の殊勲の申請を行う!これで我が部隊は実際非常に強化されたぞ!移動手段!」「クルマ!」「いや、たいしたもんだ」 39

2012-08-31 11:06:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キョート、ネオサイタマ、遠い、無計画、実際死ぬ」ファーリーマンは手振りをまじえて言った。毛に隠れてその表情は窺えぬが、彼は思慮深く、謎めいて哲学的なニンジャであった。「違いない、違いない」ディスカバリーが言い、バギー後部座席に乗り込んだ。「これで楽できるな」 40

2012-08-31 11:21:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「文明、不可欠」ファーリーマンはフォレストに言った。「無くば、死ぬ。サヴァイヴ、する、できぬ」「……そうだ」フォレストは頷いた。彼らは文明の枠組みから逸脱した生き方を選んだ存在でありながら、その実、文明の産物を必要とする。矛盾を抱えているのだ。 41

2012-08-31 11:29:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストは一同を見渡した。「出発だ。ゴー・イーストだ。西に、後ろに道は無し」遠く彼の背後の空では、浮遊する建造物が奇怪な光を地上に放ち続けている。ファーリーマンはそちらへ首を巡らせ、呟いた。「恐ろしき光」 42

2012-08-31 11:34:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バンシー、ミラーシェードは次々にクローンヤクザを蹴散らし、テンプルの入り口めがけスプリントした。「コシャクな真似……」ヘリオンが立ちはだかるが、「イヤーッ!」「アバババーッ!」突如、血と臓物の渦を噴き上げてテンプル内から現れたニーズヘグが、二人と入れ替わった。 44

2012-08-31 12:31:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テンプル内は凄惨なありさまである。書棚の間にはクローンヤクザやニンジャ達の惨殺体が散乱し、鮮血が貴重な書物群を汚していた。バンシーとミラーシェードは生存者を探した。「下だろう」ミラーシェードはバンシーに言った。「地下牢まで後退したに違いない……」「イヤーッ!」 45

2012-08-31 12:35:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死体を跳ね除け現れた生き残りのニンジャが、ミラーシェードめがけ吹き矢でアンブッシュした。「イヤーッ!」振り向きざまにミラーシェードは暗殺剣を閃かせ、これを弾き飛ばす。バンシーは既にアンブッシュ者の目の前に到達していた。「イヤーッ!」彼の蹴りは敵の顎から上を一撃で砕き飛ばした。46

2012-08-31 12:39:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アーララ」螺旋階段を上がって、女のニンジャが姿を現す。「ヘビのおじさま、しずまらないのね……こんなにしちゃッて、お外まで」「ドーモ、パープルタコ=サン」バンシーがアイサツした。「ドーモ……あの子、結局ダメね?」「ネクサス=サンが引き続きコンタクトし、撹乱の助けともしよう」 47

2012-08-31 12:52:33
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