#366days 8月まとめ

相応恣意 @aioushii

“それ”が――パンドラの箱が開かれ、災厄が齎された。その罪は果たしてパンドラの箱が負うべきものだろうか？いや、箱そのものに罪があるはずがない。誰かが裁かれねばならぬなら、それはきっと、欲望に負けて箱を開けたパンドラなのだ。 #366days そう、つまり災厄の責任を負うべきは――

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予言された日まであと5カ月。人々の認識に社会がようやく追いつき始めていた。予言の日に何かが起こることは、最早当然の前提に。そしてそれは近い将来、平穏な日常が喪失することをも意味していた。 #366days 望むと望まざるとに関わらず、変わる世界。無償で手に入る安寧など、いまや幻。

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幼女は薄情者の変わり振りに、息が止まりそうなくらい驚いた。あの薄情者が、親友の前ではあんなに柔和な表情を見せるなんて！それが彼女の心に火をつけた。（私だっていつか、あの人を笑顔にするんだから！） #366days 遥か遠くに見える理想。時にそれは、ほんの少しだけ手を伸ばした先に。

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優男は浮かれていた。恋人には一生縁がないと思っていた自分が、人生の最期を目前にして告白される日が来るなんて！しかも2人から！最初で最期の恋人なんだ、どちらか1人を断るなんて勿体無い！どうやって選べばいいかな？ #366days 優男の優は、きっと優柔不断の優。優しさからは程遠い。

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打算家は優男のことを愛してなかった。彼女が探してたのは、恋人がおらず、十分な財産を持ち、予言を聞いた人物。清純な振りして告白すればイチコロ……のはずだった。そう、あの女の邪魔さえなければ。 #366days 未来に備えて。それだけで他人の気持ちを踏み躙ることは許されるのだろうか。

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純情娘は憤っていた。ポッと出の女なんかに、あの人を獲られたくない！あの人を遠くから見守ってきた私の方が、相応しいに決まってる！なのに貴方は、なぜあいつと私の間で悩んでいるの？どうしてどうしてどうしてどうし #366days 見境のない強すぎる思い。それは時に、誰かを傷つける程に。

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作者は「やればできるじゃないか」と思わず呟いていた。構想時より旅の行程は短くなってしまった。至らないところもあったかもしれない。それでも――最期に物語を完結させることができて、よかった。 #366days 果たされた作者の責任。もしかしたらこれも、予言が招いた世界の終わりの1つ。

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男性は絶望した。後事を託すことにした親友と連絡がとれなくなり、はや2カ月。不審に思い親友の家を訪ねた男性は、彼の死を知る。膝をつく男性に「父がやり残したことは、僕が成し遂げます」少年は告げた。 #366days 人は出会い、いずれ別れる。けれど別れもまた、新たな出会いの始まりで。

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「君は私が彼に何を頼んだのか、知ってるのかい？」「いえ、知りません」男性の質問に少年は即答した。「でもそれが、とても大切な約束だったことはわかります」少年の真剣な眼差しに男性も応える。「君に子供1人が育てられるかい？」 #366days 受け継がれる意志。たとえそれが茨の道でも。

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少女は寝ぼけ眼をこすり少年に尋ねた。「どうしたの？こんな時間に？」「うん、考えたんだけどさ……」少年は少女を真っ直ぐ見つめて告げる。「僕と一緒に子育てしようよ」少女の顔はみるみる紅潮し―― #366days 予言の日まで無駄にできる時間なんてない。とはいえ、結論を急ぐのも考え物。

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同好の士たちは一堂に会していた。それはきっと彼らが集える最期のお祭り騒ぎ。浮世の憂さを晴らし、理想を語り合い、そして――「なら、次に会う時にお渡しします」「……ええ、楽しみにしてます！」 #366days 交わした約束、全てを果たせはしない。けれどだからこそ、意味があると信じて。

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記者は真実に辿りついてしまったことを後悔した。予言には誰かの悪意が介在していて、人類の半数が死滅するなんて性質の悪い冗談だ。そう笑い飛ばせると思っていたのに――「じゃあ一体、誰を恨めばいいんだよ！」 #366days 真実は常に一つ。けれどその真実が、常に優しいものとは限らない。

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編集長は記事を握りつぶした。「……お前はこの記事を世に出すのが、本当に正しいことだと思ってるのか？」「はい」即答する記者に何か察したのか、編集長はため息を吐く。「高度な政治的判断だ、あと1月待て」 #366days 一刻も早く世に真実を。迫る死にも臆せず待つのは、来たるべき好機。

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歌姫のライブには、連日満員の観衆が訪れていた。考えうる限り最高の舞台に立ち、彼女の胸に浮かぶのは1つの疑問。（もし自分の死ぬ日を知らなくても、本当にここまで辿りつけたかしら？） #twnvday 影さえ霞むほど圧倒的に輝く存在――“星”。それでもきっと、振り返る暇くらい許される。

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予言の混乱は、世界中に争いの火種を生んでいた。対応を1つでも間違えれば、この国も戦禍を被るのは避けられない。それを誰よりも理解している首相は、平和への誓いを新たにしていた。 #366days 手をとりあうことを良しとせず、奪い合う未来ばかり選んで。いつの時代も抗えぬ悲しき人の性。

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役立たずの元に届いた一通の封筒。それは彼が骨髄ドナーの候補者として選ばれたことを報せるものだった。誰からも必要とされず、無為としか思えなかった人生だけれど「こんな私でも、誰かの役に立てるんですね」 #366days 他人の生命に刻まれる生きた証。きっと誰もが誰かの役に立っている。

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ルーキーは更なる高みを目指していた。憧れの先輩にもらった前に進む勇気。恩返しは先輩の記録を塗り替えることで果たしたい。思い、ルーキーは胸に静かな闘志を燃やす。そう、先輩が遠くに逝ってしまう前に。 #366days 先人が打ち立てた高き壁。強き意志で望めば、越えられない道理はない。

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先達者は後輩の活躍に目を細めていた。飽くなき挑戦者から圧倒的王者となり早幾年。遂に現れたその地位を脅かす存在が、よもや自分を目標に頑張ってきた後輩だなんて。だから後輩よ。「次はお前が皆に勇気を与える番だぞ？」 #366days 時を超えて受け継がれる意志。たとえ命が尽きようとも。

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怪盗は自問していた。探偵の申し出を受けたのはいわば緊急避難。隙あらば逃げ出す――はずが、今はこうして彼の帰りを待ちわびていて。怪盗のくせして最期に一番大切なものを盗まれるなんて、笑えない冗談ね。 #366days 昨日の宿敵は今日の最愛の人。歪な過程でも幸せな家庭が築けるのなら。

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探偵は自らの失態を嘆いた。怪盗を捕える最期の一手のために用いた、非合法の手段。そのツケが今頃になって回ってきて――「悪いな、今日は帰れそうにない」痛む腹を押さえて、探偵は夜の街に消える。 #366days 大切な人のために尽くした行動。代償が、その人との別れだなんて思いもせずに。

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純情娘は遂に痺れを切らした。「あなたに彼は相応しくないわ！」溢れる思いは止まらない、止められない。握ったナイフは、打算家の腹を違わず抉っていた。 #366days 強すぎる想いが誰かを傷つけるなんて分かりきっていた。だから最大の不幸は、それを止めてくれる人が一人もいなかったこと。

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打算家は我が身に起きたことが信じられなかった。「……何なの、これ」突き刺さっていたナイフを抜けば、真っ赤な生命が溢れ出す。なぜこんなことに……でも、１人でなんて逝くものか。高笑いしてるあいつを道連れに―― #366days 誰もが幸せになりたかった。そして誰も幸せになれなかった。

相応恣意 @aioushii

「２人が、死んだ？」突然の凶報に優男は絶望した。「一体どうし……て……」問おうとしてすぐに思い当たる。自分が選ばなかったせいだ。徒に時間を浪費し、答えを出さなかった――その罰がこれだ。 #366days 何も為さなかったが故の罰。報いを受けるのが自分であれば、どんなに楽だったか。

相応恣意 @aioushii

限界を迎えた公務員は倒れた。滅私奉公の名の下に、身を粉にして働いた末にたどり着いた結末がこれだ。自嘲しながらもどこかホッとしている自分に気がつく。ああそうか、これでやっと解放されるんだ。 #366days 変わりゆく世界で、誰かのツケを払わされ続けて。次にツケを払わされるのは誰？