「メリー、日曜どこいくの?」「私と蓮子の結婚式」「えっ」

秘封倶楽部の不思議な、不思議な、物語。 タイトルも浅木原さん本人に考えて頂きました。
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浅木原忍 @asagihara_s

「メリー、日曜どこ行く?」 「日曜は予定が入ってるからダメよ」 「うん? 蓮子さんを差し置いてどこいくの?」 「結婚式」 「あら、誰の?」 「私の」 「えっ ……えっ?」 「だから私のよ」 「……ちょっと待ってメリー、相手はどこのどなた?」 「何言ってるの蓮子、貴方よ」 「えっ」

2012-09-06 22:27:50
浅木原忍 @asagihara_s

「蓮子、ひょっとしなくても忘れてたの?」 「いやちょっとメリー私今何がなんだかよくわからないんだけど」 「こっちがわからないわ」 「結婚式?」 「そうよ」 「私とメリーの?」 「随分前から決まってたじゃない」 「……いつ頃?」 「半年前かしら」 「待って待ってちょっと」

2012-09-06 22:30:14
浅木原忍 @asagihara_s

「どうしたの蓮子、さっきからおかしいわよ」 「おかしいのはそっちよ! 私そんな話まったく聞いてないし覚えもないわよ!」 「えっ」 「えっ」 「蓮子、どうしたの本当に。去年のクリスマスにプロポーズしてきたの蓮子じゃない」 「えっ」 「指輪も貰ったわよ、ほら」 「えっ」

2012-09-06 22:32:43
浅木原忍 @asagihara_s

「蓮子、まさか今更やめたいとか言わないわよね」 「いや、それ以前に全く身に覚えがなさ過ぎて」 「ちょっと蓮子、大丈夫?」 「大丈夫じゃないわよ!」 「……本当に何も覚えてないの? 頭でもどこかにぶつけた?」 「いや……そんな」 「これ何本に見える?」 「3本」

2012-09-06 22:36:28
浅木原忍 @asagihara_s

「蓮子、私の名前は?」 「マリベリー・ハーン」 「マエリベリーだってば。私たちのサークル名は?」 「秘封倶楽部」 「私の誕生日は?」 「2月17日」 「私の背中のほくろの数は?」 「4つ」 「やっぱり蓮子よね」 「そりゃそうよ」 「じゃあなんで結婚式のことだけ覚えてないのよ?」

2012-09-06 22:39:38
浅木原忍 @asagihara_s

「そんなこと言われても……本当に知らないんだもの。去年の私はメリーにプロポーズしたの?」 「そうよ」 「……なんて言ったの?」 「『これからもずっと、私の人生のパートナーでいてくれない?』」 「やめてその本当に自分の言いそうな台詞」 「本当に言ったんだってば」

2012-09-06 22:42:54
浅木原忍 @asagihara_s

「ううう……で、日曜は結婚式なの?」 「そうよ。もう参加者も確定してるし。誰かに電話してみる?」 「そ、そうね、ちょっと待って……もしもし、岡崎教授ですか? あの、日曜なんですけど、……あ、はい、そうですよね、ええ、いえ、なんでも。はい、では日曜に……」 「ね?」

2012-09-06 22:45:51
浅木原忍 @asagihara_s

「ねえメリー、これドッキリじゃないよね?」 「心外だわ。蓮子、本当に大丈夫? 病院行った方がいいんじゃない」 「いや待って、こうなったら思い出すわ。なんとかして……うー、ああー、ぐぬぬ」 「蓮子」 「どうなってるのよ私の灰色の脳細胞は! あーもう!」 「蓮子ってば」 「なに!?」

2012-09-06 22:49:49
浅木原忍 @asagihara_s

「もういいわ。本当に覚えてないみたいだもの。何か蓮子に大変なことがあったんだわ。私がそれに気付いてないのよ。ごめんなさい」 「いや待ってメリー、そんなピンポイントで結婚式のことだけ忘れるとかどんなことよ!」 「何か結婚というワードにトラウマで植え付けられたとか」 「トラウマ…」

2012-09-06 22:52:21
浅木原忍 @asagihara_s

「蓮子、何か思い出した?」 「……メリー」 「なに?」 「これは夢よ」 「えっ」 「メリーの能力が時間を超えたのよ。メリーは今未来の夢を視ていて、私はそれを共有しているのよ」 「え、ちょっと待って蓮子、何を言い出すの急に」 「じゃあメリー、聞くけど、今は西暦何年?」

2012-09-06 22:55:32
浅木原忍 @asagihara_s

「今は……2088年よ。私は院の1年」 「ほら! 今の私は2087年で大学4年生よ! そりゃ知らなくて当然よ!」 「ちょ、ちょっと待って蓮子」 「そう、今は本当は2087年の12月……え?」 「え?」 「メリー、私がメリーにプロポーズしたのはいつ?」 「去年のクリスマスだってば」

2012-09-06 22:58:40
浅木原忍 @asagihara_s

「……2087年12月24日?」 「そうよ」 「再来週じゃない!」 「去年だってば」 「え、再来週に私メリーにプロポーズしないとだめなの?」 「ちょっと蓮子」 「いや……そうよね、これが未来なら、そうなるように私は行動すべきなのよね……」 「蓮子ってば」

2012-09-06 23:00:24
浅木原忍 @asagihara_s

「解ったメリー、再来週のクリスマス、私は貴方にプロポーズするわ」 「いや、だからそれは去年――」 「この夢のせいじゃないわよ。そうね、いずれそうするつもりだったのが早まっただけ。貴方が背中を押してくれたんだわ。ありがとう、未来のメリー」 「蓮子――」

2012-09-06 23:01:39
浅木原忍 @asagihara_s

「愛してるわ、メリー。私の世界での1年後に会いましょう」 「――なんだかよく解らないけど、解ったわ」 「じゃあ――また、結婚式で」 「――うん」 *** 「という夢を視たのよ、メリー」 「ああ、この前何か変だったのはそういうこと?」 「そういうこと。ほら、式が始まるわ」

2012-09-06 23:03:58
浅木原忍 @asagihara_s

何も考えずに書き始めたらなんか予想だにしない展開になったでござる なんだこれ

2012-09-06 23:04:37