私たちのピエタ

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@8yanagi_lika

僕から君へと意味をたどる祈りは、晩鐘に落ち穂を拾う君のかがめた背筋や柔らかなほつれ毛にやどる光へと、痛みながら君に伝わるだろうか。農夫の脂に黒ずんだ指の間に今晩の固パンが置かれているのを。藁を編む僕の不器用な手のひらの厚さを、夕餉にともる光を、君の孤独の名前を。#私たちのピエタ

2012-09-12 11:44:22
@kajiyagi0622

ゆるりと絶望へ向かうひとみが、ひどくかがやき、湖面を沈んでゆく。空高く、滑っている、あなたは何時も私に向かってうまれてくる、朝陽がうるむ夏の、それは、私たちの。土に汚れ、あなたが転がり、私のドレスを落ちてゆく、睦みあう意味など裂きながら、私たちの影は、幼いまま。 #私たちのピエタ

2012-09-12 12:45:20
@8yanagi_lika

僕は土にまみれた指を折り、数える。夕陽、花、雨の午後…君はたくさんの名前のなかで明るんでいる。君の輪郭をふちどり、僕が異国の鍬で泥を鋤くように、君は細い指で髪を梳くのだろう。落ち穂拾いの祈りのうえを、僕の言葉が君へと落下を繰り返す。いつだって僕らふたりだった。 #私たちのピエタ

2012-09-12 17:58:18
@kajiyagi0622

蒼くすすけた乳房にその首を抱き、流れ出る血潮で祈りましょう、私の手で。たおられた金の穂、凪いだふたりだけのベッドに髪を飾って、ほら唄って、あなたを何と呼べばいいのだろう、あなたを何と?、夕立が私をよぶ、雲の下はもうあかるい。濡れたあなたは、すでに手折られている。 #私たちのピエタ

2012-09-13 12:47:30
@8yanagi_lika

手折られた私は傾ぎ、あなたの残像を追いかける。祈りながら、祈りながら開かれた傷口は、世界に触れ濡れている私たちの瞳。教会の鐘を数えるように、多くの一人称に揺れ、移ろい、埋もれてゆく。目覚めのあとはじめて発声したことばが、私の名前。それは移ろいながら洗われてゆく。 #私たちのピエタ

2012-09-13 17:27:36
@kajiyagi0622

″きみの消えていったドアに、温かく濡れた指先が閉じてしまう、その朝に。くずおれたきみが口づけた大地と、ぼくのためにうまれてくる水と、やがて人びとの去ろうとする、その昼に。いつか夜へ向かう、ぼくたちの約束は言の葉に綴じよう、きみはあのオリーブ、いまも永遠に似て。″ #私たちのピエタ

2012-09-15 13:41:28
@8yanagi_lika

"消えてゆく夕陽の影に、きみの輪郭が淡くなってゆくのを、掴もうともがく、僕の土くれ。水に沈むきみの透明に、僕のオリーブ色をしたにこ毛の、柔らかな移ろいに、きみは色づいたネロリ。いつか去ってゆく夜を綴じて、開かれることばは、行き交う昼夜のした、きみの新しい名前。"#私たちのピエタ

2012-09-15 21:26:42
@kajiyagi0622

″覚えている?覚えている、君は陽射しを背にしていたから。円く閉じてゆく永遠に、君の肩に透ける光が隠されてゆく。そらは水と水とを分けて、焔が東の地平を廻る。傷み、痛みがわたしの全て。君とわたしを隔てることで、世界がはじまり、瞳は拡がってゆく、空を掴む、君の両手。″ #私たちのピエタ

2012-09-18 23:21:23
@8yanagi_lika

"記憶からの、手探りが触れる、新たな出会いと別れを交差して、僕らはどんどん近くなる。とめた息の数だけ指折り数えて、真夏のプールの底で、ゆらゆら光る水面を見上げていたのに。秋を教えるさめたミルクの、ほのかな苦味にとろけて。夏から秋、秋がから冬へと僕らは加速する。" #私たちのピエタ

2012-09-19 05:30:28
@kajiyagi0622

木枯らしのダンス、春を身ごもって。あなたの名前を、硝子の星座に描く、この指の凍えがもう木漏れ日を纏っている、あなたが放した私のヴェール、祭壇に落ちた雪空。ほら、波の糸に引かれて私たちの命も満ちる、いばらに繋がれたあなたの手が私を暖める、溶けだした花弁のその早さ。 #私たちのピエタ

2012-09-21 00:10:53