山本七平botまとめ/【反捕鯨運動の陰に見えるレイシスト的思考①】/~まず国を想起するのが人種差別主義~

山本七平著『日本人とアメリカ人」/第七章 捕鯨禁止運動の背後にある人種主義に気づかぬ日本人/150頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【アメリカ人が激しく反応する”ある言葉”】前略~アメリカ人が相当に神経質な態度で使用し、ロにするかしないかは別として絶えずその言葉を意識し、どこかで強い影響を受けていると思われる強烈な言葉…それはレイシズム、およびレイシストである。<『日本人とアメリカ人』

2012-09-16 10:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

②人種差別主義(と訳してよいかどうかわからぬが)ないしは人種差別主義者というこの言葉の定義は、現地で確かめてみると非常に不明確で、時には、日本の「ファッショ」同様、政敵にはりつける意味不明のレッテルの標語のようにも見える。

2012-09-16 10:58:01
山本七平bot @yamamoto7hei

③従って「あいつはレイシストだ」といわれている政治家を、「人種差別主義者」と訳してよいかどうか、いやそういうレッテルをはる連中の方がはるかに徹底した人種差別主義者ではないか、と思われる場合もある。

2012-09-16 11:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

④政敵にレッテルをはるのはどこの国にもあることで、この点では日米に差はないかもしれぬ。しかし、人種という意識なしで生活していける日本では、レッテルの言葉を「レイシスト」とするわけにはいかない。

2012-09-16 11:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤従って、日本では知覚できず、現地で感じて知る以外にないアメリカの特徴の一つは、レイシストがレッテルになりうるその社会的背景だ、ということになる。今回の訪米で探りたかった重要な点の一つは、それであった。

2012-09-16 12:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥【「人種意識」なしに生活できぬ米国】人種という意識なしに生活しろ、といってもそれはアメリカでは無理である。…ではレッテルは別として、レイシスト、非レイシストはとこでどのように区別されるのか?いや、なぜレイシズムが存在するのか?これは多人種国家の宿命であろうか?

2012-09-16 12:58:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【まず「国」を想起するのが人種主義】一体「天皇への鯨デモ」や「鯨を殺すなキャンペーン」の正体は何なのか。出発前に、日本で資料を調べただけで、その背後にあるものが「動物愛護」でも「資源保護」でもないことは、うすうす察せられた。

2012-09-16 13:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧ではこれはレイシズムの一表現であろうか?一表現とすればなぜこのような表現になるのか?疑問は際限なくわいてくる。だがそれらを探索する前にまず、レイシズムの定義を明確にしておかなければならない。

2012-09-16 13:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨だがその定義は以上のように、きわめてはっきりしていない。一体、レイシズムとは何を指し、レイシストとはどのような状態にある人を指すのか?

2012-09-16 14:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩「そうですなあ……」といってから、堀内さん(四世、日系市民協会ワシントン支部長)はしばらく考えていたが、「具体例をひいて言いますと、次のような発想がレイシズムです」とつづけた。

2012-09-16 14:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪その説明を要約すると、たとえば一台の車が来たとする。「あ、車だ。ほう、フォルクスワーゲンだ、とするとドイツ製か」これが普通の発想。

2012-09-16 15:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫ところが、ショーウインドーをのぞきこむ。そして「ありゃ、日本製品だ、ソニーの品か、一体こりゃ何だ、ヘエー、テープレコーダーか」となる、前者とは、逆方向の発想、これがレイシズムであると。

2012-09-16 15:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬簡単に図式化すれば、その発想が、製品→メーカー→国(民族・人種)という順序か、国(民族・人種)→メーカー→商品となるかの差だという。こう言われると何となくわかったようだが、さてその実感となるとなかなか掴めない。

2012-09-16 16:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭だが後に私はロサンゼルスでウェートレスと話している時、堀内さんが言ったのはこの事だな、と感じた事があった。彼女は白人で学生アルバイトらしいが、日系・中国系・黒人に全く差別なく実に親切で…好感がもてる。その上ロサンゼルスは日系・中国系が多いから、レイシズム的雰囲気を我々は感じない

2012-09-16 16:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮彼女はコーヒーを運んでくると「ロサンゼルスをエンジョイしたか」といったようなことを言った。私も何となくお世辞が出て「実にいい町である…スモッグがひどいと聞いていたが、東京の方がはるかにひどい。これもラルフ・ネーダーなどの運動の結果ですか?」とたずねた。

2012-09-16 17:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯その瞬間彼女は「でも、ネーダーはレバノン人ですから……」と答えた。私の発想は、ロサンゼルス→意外にスモッグがない→反公害→ネーダーという順序である。ところが彼女は、ネーダー→レバノン人→?……?で、その先には、固定化し類型化した”レバノン人”というイメージがあるのであろう。

2012-09-16 17:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰この発想、ネーダーを一人間と見ないで、人種・民族というステレオタイプにまずはめこんでしまう発想が、レイシズム的発想であろう。

2012-09-16 18:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑱こういう発想は、対外的には我々にもあって「レバシリ」(レバノン人とシリア人、最もガメつい人間)といった隠語もあるわけだが、アメリカの場合は、これが対外的にではなく、対内的に作用するから、国際問題ではなく国内問題・社会問題になり、奇妙な緊張を社会にもたらす。

2012-09-16 18:57:49
山本七平bot @yamamoto7hei

⑲幸い日本にはこれがないが世界が狭くなり対内・対外の区別がつきにくくなってもこの問題に無関心でいると、レイシストと言われまいとしてA型発言をして非難され、あわててB型発言をしてまた非難され「天性のレイシスト」などと言われてどうしていいかわからないという状態に落ち込むかもしれない。

2012-09-16 19:28:06