第一次聖杯戦争4日目

最終日
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時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

翌日。玲奈は目を覚ますなりアーチャーの様子を確認した。 「……心配ない。戦える」 アーチャーは、玲奈の心配そうな目線に応えるように笑った。青のセイバーは知っている。アーチャーは最早全力では戦えない事を。それでも、戦うのだろう。

2012-09-22 01:13:59
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「……行きましょう、マスター、アーチャー。戦いの場へ」 玲奈は力強く頷く。玲奈は持っていたほとんど全てを失ったが、逆に強い気持ちを得ていた。勝利への執着心、何としても勝ちたいという心。その目の光は昨日までとは違う。漆黒の炎が、内に燃えていた。

2012-09-22 01:17:13
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柳洞寺の地下には、巨大な空洞がある。それは天然の物なのか、あるいは人工的に作られた物なのか。この街を走る地脈、星の持つ魔力の流れはこの地点に集結していた。その場に、四人の人間と五騎のサーヴァントが立つ。 「監督役、カレン・オルテンシアです」 人が揃ったのを確認し、カレンが言う。

2012-09-22 01:21:12
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「私はルーラーのサーヴァント。今日はカレンと共に、この戦いの執着を見届ける為に来た」 カレンが一つ深呼吸をする。 「聖杯戦争監督役と、ルーラーの名において。貴方方の戦いを見届けます」 ルーラーが、持っていた旗を地面に突き立てた。 「ここに、聖杯戦争最終戦を始める!」

2012-09-22 01:24:27
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合図があっても、しばらくは誰も動かなかった。最初に動いたのは、青のセイバー。 「……貴方も来ていたんですね、アーチャー」 赤の男はそう呼ばれると、鼻で笑って応えた。 「何かに呼ばれて来てみれば、誰かに似た少女がべそをかいていてな。……まぁ、そんな所だ」

2012-09-22 01:26:47
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「そうですか……今の私のマスターはこの玲奈です。奉じる旗が違う以上、戦いは避けられませんね」 「そうだな。私はお前が如何に強力かを知っている……悪いが加減はしないぞ」 赤と青のサーヴァントが会話を終え、お互いのマスターに合図を送る。

2012-09-22 01:28:56
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「アーチャー!セイバー!」 玲奈が叫ぶ。 「ライダー!アーチャー!」 ユアネスも呼応するように叫ぶ。 サーヴァントが並び立つ。 先手は、ユアネス側だった。

2012-09-22 01:31:31
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「ッまずい!マスター!あれを止めなければ……大変な事になります!」 青のセイバーが玲奈に言う。玲奈は頷くと、アーチャーを不安げに見た。 「大丈夫だ。玲奈の指示は全部完璧にこなして見せる。……さぁ、指示を、マスター!」

2012-09-22 01:33:44
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その間にも、赤のアーチャーの詠唱は続く。 「Steel is my body,and fire is my blood.」 「アーチャー!マスターを狙って!セイバーはあっちのアーチャーに!」 玲奈が指示を出す。サーヴァント達は、返事もせずに動いた。

2012-09-22 01:35:33
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きりり……と弓が引かれ、ユアネスを狙う。 「I have created over a thousand blades.」 セイバーが赤のアーチャーに向かって疾走する。 「Unknown to Death.Nor known to life.」

2012-09-22 01:38:59
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「ライダー!」 迫り来るセイバーを止めるべく、ユアネスの命にしたがってライダーが立ち塞がる。が、ライダーとセイバーでは基本スペックが違う。打ち合う事などできるはずもなかった。 「はぁぁ!」 セイバーが気迫と共に剣を振るう。これが通れば、ライダーはかなりの手傷を負うだろう。

2012-09-22 01:40:49
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しかし、ライダーではセイバーに勝てない事は……ユアネスも、はっきりと理解していた。 消えたランサーの令呪に変わって、新たに現れたアーチャーの令呪。その内一画を使う。 「急ぎなさい、アーチャー!」 本来アーチャーの持ち得ないスキル、高速詠唱を行使する。

2012-09-22 01:42:09
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Have withstood pain to create many weapons. Yet,those hands will never hold anything. まるで機械仕掛でもあるかのように、高速に、正確に術式が組み上がっていく。 そして、その時は来た。

2012-09-22 01:43:12
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

大きな音がした。突進していたセイバーが動きを止める。周囲の風景が、さっきまでの洞窟ではなくなっている。 「……光栄に思え。お前がこれから味わうのは、剣戟の極地」 いつの間にか、赤のアーチャーの手には一対の夫婦剣が握られている。

2012-09-22 01:46:06
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「引きなさい、ライダー!」 ユアネスはライダーに命ずる。こうなった以上、最早打ち合う必要はなくなった。 「アーチャー!」 「来い!」 セイバーが叫び、アーチャーが受ける。剣士の英霊と弓兵の英霊は、ほとんど互角の剣技を持っていた。

2012-09-22 01:48:05
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「アーチャー、お願い!」 玲奈が言うと、アーチャーが一度の何本も矢を番う。ぎりぎりと弦を引き絞り、放つ。怪我をしているとは思えない正確さで、それは赤のアーチャーを狙う。 「効かん!」 アーチャーは片手の剣を落とし、円盤状の盾を矢に向けて構えた。

2012-09-22 01:50:54
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

熾天覆う七つの円環。飛び道具に関しては無類の強さを誇る盾の宝具。飛来した矢は全て地に落ちた。 「今!セイバー!」 が、二刀を持って互角だった両者。片側を離した今、セイバーが打ち込めば押し切れるはずだ。セイバーも、機を逃すなと攻勢に出る。

2012-09-22 01:52:22
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

だが、それを機とみたのはユアネスも同じだった。 「アーチャー、魔力はいくら使っても構わない。なんとしても押し切りなさい」 それを聞いた赤のアーチャーはにやりと笑う。 「ならば存分に使わせてもらうぞ」 そう言って、夫婦剣のもう片方も取り落とす。そして次の瞬間、金色の剣を投影する。

2012-09-22 01:55:34
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

「それは……!」 セイバーには、馴染み深い剣だった。自分がいつの間にか失った、精霊にもたらされた黄金の剣。 「『勝利すべき……』」 アーチャーが振りかぶると、剣身から光が溢れる。 「玲奈!あれは……」 言い切るより早く、玲奈はアーチャーに目線を送る。

2012-09-22 01:57:22
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

アーチャーは、何も言われずとも理解した。 「南無八幡大菩薩」 残された力をゆっくりと込め弓を引く。ここが日本である限り、御佛の加護はあるはずだ。そう信じて。 「『黄金の剣』!!」 アーチャーの剣が振り下ろされる。膨大な魔力は破壊の光となって周囲を覆い尽くした。

2012-09-22 01:59:12
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

アーチャーの宝具、『清水の弓』は、武器のようで武器ではない。それは、持ち主に極端なまでの御佛の加護を与える宝具。だから、それは偶然起こった事だった。偶然、赤のアーチャーが剣を振り下ろす瞬間、アーチャーの打った矢が剣身を掠めた。剣戟は、ブレていたのだ。

2012-09-22 02:01:47
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

本来なら、いかなアーチャーと言えどその瞬間、そのタイミングを狙う事など出来ない。しかし、この地にいる限り、アーチャーの幸運は無限に近い。結果として、これ以上ない完璧なタイミングで、これ以上ない完璧な効果をあげる一撃を放った。セイバーは、至近距離でいながらほぼ無傷だった。

2012-09-22 02:03:41
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

「すごい!アーチャー!」 予想以上の効果に、玲奈がアーチャーを振り返った時。じゃらり、と金属が擦れる音がした。振り向いた先にアーチャーはおらず、音のした方向……今まで、ほとんど戦闘から“消えていた”ライダーの目の前に、いつの間にか拐われていた。

2012-09-22 02:05:19
時折何かを綴る機械 @velvetroom_An

「捕獲完了」 ライダーはユアネスの指示を受け、自身の宝具『威厳高むる黄金鎖』によってアーチャーを捕捉していた。気付かれなかったのは、偏に全員が『黄金の剣』を注視していたからだろう。 「ライダー、後は」 わかっているわねと目で語る。ライダーは黙って頷くと、アーチャーに手を伸ばした。

2012-09-22 02:07:37