「フロム・ネオサイタマ・ウィズ・ニンジャ」#2 (#1:http://t.co/r7UogtpQ 実況用タグ: #piyo_nj )
2012-10-07 13:19:54■忘れていた■(前回のあらすじ:ロシアより来たスパイニンジャ「サボター」は、ミッション中に謎のニンジャ「モスキート」に遭遇、辛くもこれを退ける。ラオモト・カンより彼に与えられた次なる指令は、カスミガセキ教区を統括するジョーレン・テンプルの令嬢「エニ・ジョーレン」の護衛だ。)
2012-10-07 13:33:31(エニの出席する記念パーティーにアナキストの襲撃を察知したラオモトは、これを利用しネコソギ・ファンドとブディズム界のさらなる結束を図る。難易度不可能級のミッション、そしてモスキートの裏で糸を引く謎の組織!スパイニンジャアクション再びの幕開けだ!)
2012-10-07 13:37:06ネオサイタマ湾上、巨大豪華屋形船「クイーン・ヨドギミ=サン」。電子オイラン空母めいたきらびやかな威容がヘドロの海に浮かぶ。船体各部に取り付けられたアークライト灯の光は清潔な白、陸上の猥雑からは完全に隔絶された空間を演出する。デッキ中庭プールにはドクロめいた月が映り揺らいでいた。1
2012-10-07 13:37:47クラシック雅楽のストリングスが優雅に鳴るパーティーホールでは、フォーマルに着飾ったカチグミ男女達が思い思いの談笑を続けている。よく観察すれば所々にボンズヘアの男が混じっていることに気付くであろう。それもその筈、今宵はネコソギ社によるジョーレン・テンプルへの出資記念パーティーだ。2
2012-10-07 13:41:51振舞われるスシもサケも贅を尽くした最高級品。本来ボンズはこれらを戒律で禁じられているが…ここは洋上だ。出席しているのは事情を知る関係者のみ、咎める者は居ない。招待された高位ボンズ達は何のためらいもなくこれら美酒美食を口に運んでいる。トロを…トビッコを…コメ・ワインを…!堕落!3
2012-10-07 13:46:33その堕落ボンズ達を冷ややかな目で眺める壁の花あり。上質なボンズドレスに身を包んだ彼女の名はエニ・ジョーレン。カスミガセキ教区を統括するジョーレン・テンプルのアーチボンズ、タダオ・ジョーレンの一人娘。テンプルには数少ない清廉なボンズシスターであり、そしてこの夜会の主賓でもある。4
2012-10-07 13:52:57ブディズムにおける女性蔑視は顕著である。例えそれがアーチボンズの血統であろうと、将来に渡りエニが実権を握ることは無いだろう。堕落ボンズ達はその事を充分に理解している。彼女には彼らを咎められない。無言の軽蔑だけが唯一の抵抗である。「ナムアミダブツ…」エニはブッダに許しを請うた。5
2012-10-07 14:00:51喧騒の最中、タキシード姿のサボターは隅のテーブルでボルシチに舌鼓を打っていた。鎖国下にある日本においてはガイジンの存在は実際珍しい。白い肌に金髪のコーカソイドとなれば尚更であり、彼のテーブルにはひっきりなしに婦人が訪れる。「ンマー!金髪!白い肌!どちらから?ンマー!ロシア!?」6
2012-10-07 14:08:34サボターは日本人のこのような性質を心底バカにしていた。極東の猿どもめ!心の中でそう呟きながら、しかし笑顔で故郷ロシアのジョークなどを飛ばす。「ロシアでは詩があなたを書く」「ホホホホ!オモシロイ!」「ハラショ、そう言って頂ける嬉しいです私ものこと」「ンマー!変な日本語!ホホホ!」7
2012-10-07 14:15:48日本人は自分たちの常識が絶対の価値基準だと思っている。そしてそれこそが彼のようなスパイが付け入るスキを生む。事実彼のニンジャ洞察力はこの婦人が重要人物でも何でもない事を見抜いていた。ガイジンを珍しがる…つまりガイジンと接触した経験があまり無い、そのようなVIPは居るまい。8
2012-10-07 14:22:31彼のブロークンな日本語も、実際相手を油断させるためのツールに過ぎない。日本人が考える知性とは日本語を操る能力である。これが不得手なガイジンは心中いかなる陰謀を企てていようと日本人からは単なるイディオットにしか見えないのだ。…それが例え油断ならぬスパイニンジャであろうとも。9
2012-10-07 14:27:57無為な会話をカモフラージュにしつつ、サボターは視界の端でターゲットの監視を続ける。彼女の若い美貌は眉根に寄った皺で歪んでいる。彼がウォッカを一口煽ると、ホールの照明が落ちエニにスポットライトが当たる。エニは不機嫌な顔を一瞬でアルカイックスマイルに切り替え、合掌しオジギした。10
2012-10-07 14:39:32しずしずとステージに進み出るエニをスポットライトが追う。ステージに立った彼女は再度深々と合掌オジギし、スタンドマイクのスイッチを入れた。日本的文化素養を全く持たないサボターでさえその所作の奥ゆかしさに舌を巻く。周りの招待客に至ってはナムアミダブツを唱える者すら出る始末である。11
2012-10-07 14:45:09「ドーモ、ジョーレン・テンプルのエニ・ジョーレンです。まずはお詫びをしなければなりません。せっかく盛大な祝賀会を開いていただきましたが、父タダオは急なソーシキが入ったためこの場には参れませんでした。代理出席をお許し下さい」彼女はここで一度オジギした。割れんばかりの拍手と歓声!12
2012-10-07 14:51:33エニは言葉を続ける。「今回のネコソギ・ファンドによる出資、タイヘン・チョージョーと言う他ありません。これにより我々カスミガセキ教区の活動は今までに無いほど活発化し、必ずや市民の皆様に安寧を提供できるものと信じております」彼女はここで一度オジギした。割れんばかりの拍手と歓声!13
2012-10-07 14:54:44「ブディズム保護の為、喜捨めいた出資の決断を下されたラオモト社長の徳の高さを賞賛致します。残念ながら本日はご出席頂けませんでしたが…ネオサイタマ経済のリーダーたる彼の多忙さ、私には想像すら出来ません。カラダニキヲツケテネ」彼女はここで一度オジギした。割れんばかりの拍手と歓声!14
2012-10-07 14:56:56「ここで一つ、ブッダの故事をお話したいと思います。ある日ブッダが弟子のパンを…」エニのスピーチを聞いていたサボターは不意の悪寒に総毛を逆立たせた。この感触には覚えがある。「フィーヒーヒー…。振り向いてはいけないぞ、殺されたくなければ…」耳元で囁く、蚊の羽音めいた不快な声。15
2012-10-07 15:03:25「またあなた邪魔するしますか。この船はネコソギの借り切っていること、生きては帰さない確実です」サボターは小声で応える。ホールは暗く、この異常に気付いた者は居ない。「フィヒヒ!俺はただあの可憐なボンズシスターと…実際可憐な…血液循環…ニルヴァーナ…フィヒッ、フィーヒヒ!」16
2012-10-07 15:08:52「と思って潜入したはいいが、何やら見知ったロシアン顔。これはアイサツの一つもしておかなければシツレイと…実際紳士的な…」「日本人知り合い見つけるとすぐ群れ作りますね。ミーニャ・ダシュンニト」「調和は重点!輸血がすぐさま体に馴染むように…いや、ポエムはお嫌いなのだったな」17
2012-10-07 15:16:12「ダー。実際あなた目的ですか?何?」「俺のミッションは監視とそれと…フィヒッ、役得。だがそうも言っていられなくなった。何やら剣呑な船が近づいているのだ」「シトー・エータ、アナキストの連中ですね。予定よりハヤイ」「これは俺のカンだが…ニンジャも交じっている。実際キツイのでは?」18
2012-10-07 15:22:31「アナキストに?ニンジャ?パチムー?」「フィヒッ!ネオサイタマの事情など知る訳がない!そもそも俺達がそうなのだ、どこにニンジャがいても不思議は無い」モスキートの言葉は事実だ。そして敵にニンジャが紛れていた場合…計画通りに事が運ぶ保証は無い。「どうだね?手助けが要るのでは?」19
2012-10-07 15:28:26「アジーン、やはりあなたの目的が見えません」「アナキスト共に増長されると困るのは君達だけではない。それに…あのシスターを助ければ…循環は無理でも…血液を…実際神聖な…フィヒッ、フィヒヒー!400ccばかり!役得!背徳!フィヒヒヒーッ!」「あなた狂ってるいます」「フィヒヒー!」20
2012-10-07 15:37:00サボターは考える。モスキートは明らかに異常な変態だが、それ故にこの局面では信用できる。腕前は自らの命で実証済みだ。何かあっても最悪正面から挑めば勝ち目の無い敵ではない。彼は覚悟を決めた。「…ニンジャが二人も揃って正面から迎え撃つ、ではイジオートですね」「しかも我らはスパイ」21
2012-10-07 15:42:51「イェ・ズィオー。こうするどうか?まず奴らにボンズシスター確保させる、そして私が正面から奴らの気を惹く。あなたスキを突いて暗殺」「それでは彼女に危険が及ぶ!いけない!俺は紳士なのだ!」「ノウ、それ以外に無い、策は」「ヌーッ!…待てよ…ピンチを助ければ…そちらの方が…役得…?」22
2012-10-07 15:52:17