タイバニSSまとめの長いやつ

苗床とジェイク様関係と琉夏関係が入ってます。
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微糖 @cEzE_LYAarhou

[夏の少し手前の暑い日。日曜だというのにこの日は虎徹にも予定がなく、琉夏からのSOSを電話越しに聞いてから程なく駆け付けることが出来た。蒸し暑かったWestBeachの中を、冷たい風が潤していく。「…しかし、冷房効果は薄そうだな」「風通しいいからね、この家」]

2012-05-28 09:31:13
微糖 @cEzE_LYAarhou

[階下から見上げると、彼の兄のいる屋根裏部屋まで覗き見ることが出来た。これではエアコンが直ったところであまり快適な生活は送れないだろうが、琉夏が満足そうにしているので良しとする。]

2012-05-28 09:33:36
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「そういや、今日は兄貴は?」冷蔵庫から両手に持ってきたコーラの缶をテーブルに置いてやり、もう片方を開ける。やはり暑い日はきんきんに冷えたコーラに限る。汗にまみれたシャツを避けて、琉夏の隣へ腰を下ろすが、いくら待っても返事がない。]

2012-05-28 09:36:48
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「バイトか?」質問を変えて尋ねてみると、ややあって答えがあった。「……カノジョとデート」ふてくされたような声音は掠れるほどに小さい。短い付き合いではあるが、虎徹はこの少年の地雷を何となく理解している。だから、ああ、と応じるだけで留めておこうと思った。]

2012-05-28 09:39:33
微糖 @cEzE_LYAarhou

[こんな時の彼はそっとしておくに限る。恐らく、一人残された家の中で無性に淋しくなって、自分に連絡して来たのだろう。そう理解出来たから、彼が甘えるように肩に頬を寄せてきても何も言わなかった。]

2012-05-28 09:41:33
微糖 @cEzE_LYAarhou

[ただ、恐ろしいほどに整った彼の双眸がこちらを捉え、ゆっくりと近付いてきた時には。色素の薄い唇がこちらに触れる前に、片手で胸を押し返してやった。]

2012-05-28 09:43:18
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「こら。もっと自分を大切にしなさい」「……でも、タイガー」「でもじゃない。前にも俺と約束したろ?」]

2012-05-28 09:44:22
微糖 @cEzE_LYAarhou

[静かに言い聞かせると、やがて美しい相貌が悲しげに歪められて離れていく。俯いたまま黙り込んでしまった琉夏の頭を、虎徹は優しく撫でてやる。]

2012-05-28 09:45:54
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「だって、タイガーとキスしたいんだ」「俺でいいのか?」「よくない。でも、コウ以外ならタイガーがいい」駄々をこねる子供のように幼い口調で彼は呟く。虎徹は彼に聞こえないようにそっと嘆息して、心持ち身を屈め、俯いた少年に視線を合わせる。]

2012-05-28 09:48:10
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「好きな人とキス出来ないのは、つらいな」そう呟いて頬を撫でてやると、琉夏の顔がくしゃりと歪んだ。ぽろぽろと溢れ始めた涙を指で拭って、片腕で抱き寄せ胸に顔を押さえ込んでやる。]

2012-05-28 09:50:20
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「泣くな、男の子だろ。そんなことじゃヒーローになれないぞ」「一人ぐらいカッコ悪いヒーローがいたっていい」「そりゃ俺の役目だ。キミには譲れないな」]

2012-05-28 09:51:23
微糖 @cEzE_LYAarhou

[「強くなれ、ヒーロー。好きな人がキミに惚れるくらいに」「無茶言うなよ、ヒーロー。俺はタイガーみたいに強くなれない」「それでも強くなれ。いざって時、好きな人を守れないぞ」頭を撫でながら諭してやると、鼻を啜る音がだんだんと落ち着いてきて。]

2012-05-28 09:54:27
微糖 @cEzE_LYAarhou

[暫く黙り込んだ後に、琉夏は静かに虎徹の胸を押し返した。目の回りは真っ赤に泣き腫らしているものの、もう涙は流れていない。「ゴメン、ありがと。さすが、ヒーローだ」そう答えた声は、先程よりもずっと落ち着いていた。「顔洗ってくる。今この瞬間コウがフラれて、戻ってきたりしたら大変だ」]

2012-05-28 09:58:19
微糖 @cEzE_LYAarhou

[早足で洗面所へと向かう少年の後ろ姿を眺めながら、虎徹は心中溜息をつく。やはり、あの年頃の少年は元気で危なっかしくて、見ていてやらないと不安になる。自分にもそんな時代があっただろうかと思い返しながら、すっかり気の抜けたコーラを飲み干した。(虎徹と琉夏・夏のダイナーにて)]

2012-05-28 10:03:14

紳士2人にエスコートされる少女

微糖 @cEzE_LYAarhou

[─着飾るだけのパーティ、耳障りな喧騒、こちらを値踏みする下卑た歓声。足の竦む私に付き添いの青年が耳打ちする、「胸を張りなさい」眼鏡の奥の瞳はいつになく優しい。付き添いの男が耳打ちする、「胸を張れ」それは痺れるような甘い低音で。]

2011-10-11 19:28:07
微糖 @cEzE_LYAarhou

[二人に恭しく手を引かれ会場に現れれば、観衆の目がこちらへ釘付けになった。ギリシャ彫刻のように美しい青年と、大人の色香を漂わす妖しい男性を引き連れて。水を打ったように静まり返る会場の中、ひとえに注目を集めた私はお姫様。(薔薇と虎兎・パロ)]

2011-10-11 19:28:22
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