babel先生の憲法論証に関するツイートまとめ

10月17日付け
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anonymity @babel0101

憲法上の権利の保護範囲→制約→形式的・実質的正当化を行う権利論証と,制度に準拠して行う制度論証の2つの論証トラックというものが近年では認知されてきている。

2012-10-17 21:34:20
anonymity @babel0101

このうち自由権であれば基本的には権利論証に乗って原則違憲となり,実質的正当化論証では目的手段審査がトリガーされる。しかし,自由権であるからといって常に権利論証が用いられるわけではない。例えば,情報公開請求権のように自由権たる表現の自由の請求権的側面には制度論証が発動される。

2012-10-17 21:36:10
anonymity @babel0101

そのほか職業選択の自由,営業の自由,財産権などの明文で「公共の福祉」による制約を要求し,実質的にも社会的制約が強い自由権については,権利論証による原則違憲の論証が用いられ,目的手段審査ができるとは限らない。

2012-10-17 21:36:51
anonymity @babel0101

経済的自由に関しては,職業選択の自由,営業の自由,財産権でおそらく個別に検討していかなければならない。むろん実務家やロー生は学説にとらわれることなく最高裁判例を勉強すればいいわけであるが,問題の最高裁判例の分析「視点」をもたないと結局何の問題も解けない,ということになりかねない。

2012-10-17 21:38:59
anonymity @babel0101

職業選択の自由は人権フレンドリィな薬事法違憲判決が学説によっても友好的に受容されていて,狭義の職業選択の自由そのものに対する強度の制約としての許可制があれば重要な公共の利益を確保するために必要性・合理性のある措置でなければ違憲とし,さらに消極目的ならLRAを見るとすれば良い。

2012-10-17 21:41:47
anonymity @babel0101

これに対して営業の自由は,どの判例でいこうかなあというのが非常に難しい。もっと難しいのは財産権である。

2012-10-17 21:42:46
anonymity @babel0101

財産権は,①憲法次元で個々の財産権の原形が常に描けるという説,②憲法次元では原形が論理的に描けないので,法律により常に財産権の内容が確定するという説,③憲法上の財産権の内容は憲法次元で獲得しえないが,法律で形成された財産権が憲法上の要請にもなるとの説などがある。

2012-10-17 21:44:43
anonymity @babel0101

憲法次元で財産権の原形を描ける①説はいわば自然権的な財産権の構成であるが,いったい何が原形なのかはほとんど確定できない。自然権的な財産権を所有権に限定しまう見解もあるが,そうすると所有権以外の権利は財産権で保障されなくなってしまう,との批判がある。

2012-10-17 21:46:05
anonymity @babel0101

財産権は法律によって内容形成されることに異論はない制度的権利,法律依存的権利である。したがって,財産権って権利なの? 制度なの? という話が出てくる。①の自然権構成は権利論を推し進めた究極形であり,②の法律優位の学説は制度によって権利の領域を否定しまう論法である。

2012-10-17 21:48:12
anonymity @babel0101

そのほか最近の流行では,憲法上の財産権を立法府が内容形成するのだから,その内容形成の必要性・合理性を統制する,という内容形成モデルもある。つまり,いろいろある笑。

2012-10-17 21:49:26
anonymity @babel0101

現段階では,財産権の中には,主観的権利として既得権保障と客観法として法制度保障の2種類があって,前者には基本的には権利論証が用いることができ,後者には基本的には制度論証を用いることができる,という整理が一番しっくりくる。

2012-10-17 21:52:56
anonymity @babel0101

ベースラインを引けるほどの強度の既得権を観念し得るのであれば,権利論証がトリガーされ,目的手段審査がなされる。もっとも既得権にも濃淡があって利益衡量審査に留まる場合もあるので,ここは難しい。

2012-10-17 21:55:02
anonymity @babel0101

一方で,財産権の法制度保障としての側面が審査されるのは森林法違憲判決のようなケースだが,森林法違憲判決は共有形態を近代法治国家の原形と理解したがゆえにベースラインが引けた事案である。したがって法制度保障の問題にも関わらず,防御権類似の目的手段審査がなされた点が特異である。

2012-10-17 21:57:02
anonymity @babel0101

要は,目的手段審査による保護を受け得るかは,権利か制度かという二者択一的には分けられず,ベースラインを引けるかで決まる。今のところ,これがしっくりきているが,まだまだ勉強中なのでよく分からない……というのが正直なところです。

2012-10-17 21:58:25