Ustでだだ漏れしながら即興で怪談を書きました。
- nakata_seiji
- 1372
- 0
- 0
- 0
【こわいはなし】そもそもここは一体どこなんだろう。私はどうしてしまったんだろう。そのときです。廊下の向こうから、ガラガラガラ――という音が聞こえてきました。
2010-08-01 00:33:33【こわいはなし】あれはたしかストレッチャーというのではなかったでしょうか。病気の人を、手術室などに運ぶアレです。誰かいるんだ、と思って、私は音の方向へかけだします。ストレッチャーなら病院の人、つまり看護師さんかお医者さんでしょう。
2010-08-01 00:35:46【こわいはなし】――と、そこで私は目が覚めました。なんだ夢か……。すでに朝になっていました。なんだか異様にリアルで、なぜか不安になる夢だったな、と思いましたが、その日はなにごともなく過ぎていきました。退院の日も今週の土曜日に決まりました。
2010-08-01 00:40:02【こわいはなし】ところが、その夜、また同じ夢を見たのです。私は廃墟の病院のベッドで目を覚まします。でもこれは夢だから実際には目覚めてはいないはずです。夢の中なのに夢だとわかる不思議な感覚。でも夢だからさほど怖く感じませんでした。
2010-08-01 00:41:41【こわいはなし】私は廃墟を探検してみることにします。どうやら、やはりここは私が入院している病院のようです。廃墟のようですが、構造が同じなのです。歩いていると、またどこかでストレッチャーの音が聞こえました。そして耳を澄ますと人の声のようなものも。
2010-08-01 00:43:55【こわいはなし】ひそひそ。ひそひそ。どこかで声がします。かすかに、「……がんばって」とか「だいじょうぶ」とかいう言葉の切れ端が聞こえます。そしてすすり泣きのような声。誰かが呻く声。私はまた急に怖くなってきました。
2010-08-01 00:45:28【こわいはなし】そこで本当に目が覚めました。……その夢を、私は次の日も、その次の日も見たのです。そしてそれは木曜の夜のことでした。ああ、またか。廃墟の病院の夢の中で私は思いました。
2010-08-01 00:48:09【こわいはなし】そうだ――、私はふと思いました。この病院の「外」はどうなっているのだろう。今まで廃墟になった病院の中を歩いていたけれど、「外」がどうなっているのかわからない。蛍光灯が明滅する廊下を歩きながら、そう考えたのです。
2010-08-01 00:50:03【こわいはなし】けれども、廊下の窓はすりガラスのように曇っていて、外がよく見えませんし、なぜか開きませんでした。……なら渡り廊下へ行ってみよう、と思いました。この病院はふたつの棟を結ぶ渡り廊下があります。
2010-08-01 00:51:51【こわいはなし】そこには何人もの人がいました。そこにそんなに大勢がいたような気配を中にいるとちっとも感じなかったのです。そこにいたのは、異様な人たちばかりでした。
2010-08-01 00:54:52【こわいはなし】ある人は壁に向かってじっとしています。ある人はゆっくりゆっくりすり足で歩いています。ある人は地面にうずくまっています。どの人の顔も見ることはできませんでした。誰も一言も喋りません。
2010-08-01 00:56:21【こわいはなし】何なんだろう、この人たちは。そのとき、すぐそばで誰かのすすり泣きが聞こえて私はびくりとしました。見ると、いつのまにか、渡り廊下に人がいたのです。
2010-08-01 00:57:18【こわいはなし】その人は、50代くらいの女の人で、黒い着物を着ています。そしてしくしく泣いているのです。私は茫然と、泣いている女の人を見つめていましたが、突然、その女の人がわたしのほうへ首を向けました。そして言ったのです。
2010-08-01 00:59:09【こわいはなし】目が覚めた私は、先生を呼びました。そしてどうしても明日、つまり金曜日で退院したいと言いました。絶対にそうしなければいけない。なぜだかそう確信したのです。
2010-08-01 01:01:52【こわいはなし】退院した2日後の日曜日に、もういちど病院へ行きました。そのとき、廊下でふとすれ違った人を見て、私はアッ!と思いました。それはあの女の人だったのです。ひどく沈んだ様子でした。
2010-08-01 01:05:42【こわいはなし】よく知っている看護師さんに問いただしてみると、その女の人には私と同じくらいの娘さんがいらして、娘さんが入院していらしたそうです。
2010-08-01 01:06:38