稲川淳二のつぶやき怪談@Junji_Inagawa

稲川淳二 @Junji_Inagawa

部屋に入るなり女の子が、「あーっ、ここ知ってる！以前、火事があって、人が焼け死んだとこでしょ！過失か、放火か、自殺したのか知らないけど、ずーっと更地のままになってたんだよね」と言った。

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「嘘だぁ」と、誰かが言うと、「嘘じゃないよ、本当よ」と、彼女が言うもんだから、

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「お前、来る早々、何て事、言うんだよ」と、ひとりが諭すように言って、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「なるほど、それで家賃が安いんだ！」という声で、皆が納得して笑ったんですがね。

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当の宇野君は、「まあ、以前、人が焼け死んだ場所だとしても、ここはアパートだし、住んでるのは、自分ひとりだけじゃないからね。気にもならないよ」と、別に問題はないといったふうだった。

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そんな事があってから、しばらくして彼に会うと、何か様子が違うんですよ。

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いつもなら、顔が合うと、笑顔で寄って来るのに、顔色は悪いし、どことなく元気が無いし、身体の具合でも悪いんだろうかと、心配になって、本人に尋ねると、

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「あの、僕のアパートの部屋なんですけどね、何かおかしいんですよ。

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寝てると、近くで声がしたり・・・。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、夜中に突然目が覚ると、曇りガラスの窓に、人の顔が映ってるんですよ。黒い輪郭なんですけど、ベタッと張りついてるんです・・・」

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と、顔を強張らせて訴えるもんですから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「そりゃ、窓が通りに面してるから、外を通る人の影がガラスに映るんじゃないの」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、安心させようと答えると、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ええ、僕も初めは、そう思ってたんですけど、違うんですよ。確かに外灯が少し離れたところにあるんですけどね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その位置からだと、外を通る人の影が窓に映らないんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、三日前なんですけど、夜中にふっと目が開いて、何気なく窓を見たら、曇りガラスにまた、顔が映ってるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが前と同じ輪郭してるんですよね。同じ奴なんですよ。首から上が、ベタッと張りついて、部屋の中を覗いてるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

曇りガラスだから、部屋の中が見えるわけないんですけど、こいつ、変質者かな、と思って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

さすがに気味が悪いし、腹が立って二度と来ないように怒鳴りつけてやろうと、明かりはつけないで、身体を低くして、音を立てずに、そーっと玄関に行って、ドアを一気に開けて、通りに飛び出したら・・・、誰もいないんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

シーンと静まり返っていて、通りには人っ子ひとりいないんです」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、話してくれたんですよね。で、（気にならないって言ったけど、やっぱり、あの火事があって、人が焼け死んだっていう話が、気になってるんだなぁ・・・・）と思ったもんですから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あのね、気にしだすと、あれやこれやと気になりだすもんだよ。気にしない方がいいよ」と言ったんですがね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして、また日が過ぎて、仕事先で、宇野君を見掛けると、げっそりと痩せて、ひどくやつれているんで、驚いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして、また日が過ぎて、仕事先で、宇野君を見掛けると、げっそりと痩せて、ひどくやつれているんで、驚いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

目の下に隈が出来てるところを見ると、どうやら、あまり寝てないようだし、（これは、まずいなぁ・・・）と思っていると、彼がやって来て、