キュヒョン長編 「Truth of Past」 #TOP #SJで妄想

キュヒョン長編 「Truth of Past」 #TOP #SJで妄想
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미* @umechan0110

26.「朝まで仕事してたの?」「そうだよ」「ご飯、食べた?」出しっ放しにしていた昨日の夕飯を、レンジに入れる。「あのさ、作ったから…食べてよ」きっと、こういう事も初めてなんだろうね。「ああ…」「私、家の事は出来るから…お仕事、お疲れ様」私から歩み寄るべきなんだろう。 #TOP

2012-10-29 21:58:56
미* @umechan0110

27.仮にも彼は、会った事も無い私を妹だと言って迎えに来てくれたんだから。そこにどんな背景があったとしても、変わらない事実。「ねえ、一緒に食べよう」「…分かったよ」静かな部屋に、食器がぶつかる音だけが響いた。今まで、どんな風に生きて来たのかな。「あのさ…聞いてもいい?」 #TOP

2012-10-29 21:59:43
미* @umechan0110

28.「私たちってさ…お父さんとお母さん、いるの?」機械的に動かしていた手が、一瞬止まったのが分かった。「…いないよ」その冷淡な答えに、意外と驚かない自分がいた。「そうなんだ…」「2人共、交通事故で死んだよ。20年も前に」何となく、予想はしていたから。 #TOP

2012-10-29 22:01:10
미* @umechan0110

29.「お前と俺は奇跡的に助かった。それから、別々の孤児院に入れられたんだよ」お兄ちゃんはまた、手を動かして食事を続けた。「そうなんだ…それで、何で今更私と…」「ずっと、お前の事探してた」その言葉に少しだけ胸が熱くなるのを感じた。「お兄ちゃん…ありがとね」 #TOP

2012-10-29 22:02:38
미* @umechan0110

30.それからもお兄ちゃんは夜中帰って来ない事が多かった。私は毎日をどう過ごしたらいいか分からなくて、甲斐甲斐しく身の周りの世話をした。孤児院に居た頃より圧倒的に多くなった孤独感。それでも、毎日勝手に作っておいた夕飯をいくら遅くに帰って来ても食べてくれる事が嬉しかった。 #TOP

2012-10-29 22:03:54
미* @umechan0110

31.「お帰り…、どうしたの!?」久々に早く帰って来たお兄ちゃんは、頬や腕に痛々しい傷を負っていた。「何でも無い」「そんな訳ないよ!何これ…何があったの」「心配しなくていいから」私の頭を軽く撫でて、リビングへ向かう。ねえ、弁護士って、そんな風になる仕事なの…? #TOP

2012-10-30 22:57:32
미* @umechan0110

32.「手当てしないと…」「触るな」「嫌!」これ以上、何を聞いてもきっと答えてくれないと思った。「もう、聞かないから…だから、手当てだけはさせて」初めてお兄ちゃんに反抗的な態度をとった。「こんなの、放っておけないよ」どうして怪我してるの?どうして毎日帰りが遅いの? #TOP

2012-10-30 22:58:34
미* @umechan0110

33.そんな事を考えながら、彼の腕や顔を消毒する。私は、いつの間にお兄ちゃんの帰りを静かに待つ事が日課になっていたから。気付けばじわりと涙が出ていた。悟られないように俯いたまま口を開いた。「お願いがあるんだけど…」「何?」「お父さんとお母さんの、お墓参りに行きたいな…」 #TOP

2012-10-30 22:59:01
미* @umechan0110

34.それは私の一つの夢だった。両親の安否すら知らされぬまま、生きて来たから。「場所知ってる?」「ああ…知ってるよ」きっともうこの世には居ないんだろうと思いながらも、それを知る術を持っていなかった。「今度いつお休み?一緒に、行こうよ」綺麗に拭き取った傷が、痛々しかった。 #TOP

2012-10-30 22:59:45
미* @umechan0110

35.「分かった…いいよ。行こう」この日のお兄ちゃんは、初めて見るくらい素直だった。「ほんと!?ありがとう!!」私は幸せだと感じた。お兄ちゃんが居て、そのお兄ちゃんと両親に会いに行ける。その夜久しぶりに一緒に夕飯を食べて、幸せな気持ちでベッドに入った。 #TOP

2012-10-30 23:00:03
미* @umechan0110

36.ベッドの中で、隣の部屋から漏れる声が聞こえる。『はい、ええ…大丈夫です。問題無く…』誰かと電話をしているみたいだ。『え?だからそれは…はい、俺が独りでやりますから…余計な事しないで下さい』いけないと思いながらも、私は耳を澄ませた。『分かってますよ…じゃあ、また』 #TOP

2012-10-30 23:00:25
미* @umechan0110

37.お兄ちゃんがいつも外で何をしているかなんて、知る由も無かった。きっと何か隠してる。当たり前だ。だって私は、お兄ちゃんの事を何も知らない。「…おやすみ」聞こえて来る音を全て遮断するように頭まで布団を被って、私は今日も静かに眠りに就いた。 #TOP

2012-10-30 23:01:02
미* @umechan0110

38.「もうすぐ着くよ」「わあ…なんか緊張する」数日後、お兄ちゃんは何とか都合を付けてくれたようで、約束していたお墓参りに連れて行ってくれた。「こっち。足元気を付けて」車を停めて歩き出せば、綺麗な自然の匂いがする。「ありがとう」お兄ちゃんは、優しさを見せる事が増えた。 #TOP

2012-10-31 23:19:15
미* @umechan0110

39.正しく言えば、不器用な中の優しい部分が分かるようになってきたのかもしれない。「変な所にあるんだね」足場の悪い道で、後ろから着いて行く私を気遣って立ち止まるお兄ちゃんの手を勝手に握った。一瞬戸惑ったように見えたけど、そっと握り返してくれた手は驚く程冷たかった。 #TOP

2012-10-31 23:19:36
미* @umechan0110

40.「…手、冷たいね」そう言った私に返事はしてくれなかったけど、手を握ったまま放さないでいてくれる事が嬉しくて、そんな事は気にならなかった。「ここだよ」お兄ちゃんは小さなお墓の前で立ち止まって、私の背中を押した。「ここに…お父さんとお母さんが眠ってるんだ…」 #TOP

2012-10-31 23:21:26
미* @umechan0110

41.なんとも言えない不思議な感覚がして、一気に涙が込み上げた。「やっと会えた…」着いた途端に子供みたいに泣く私を見て「なんで泣くんだよ」お兄ちゃんが、初めて笑った。「だって…ずっと会いたかった…」初めて見るお兄ちゃんの笑顔に更に涙が止まらない。「嬉しい…」 #TOP

2012-10-31 23:22:14
미* @umechan0110

42.「…お兄ちゃん、笑うんだね」「え?」「笑わない人だと思ってた」涙を拭いながら言えば、いつもの困ったような顔に戻っていた。「笑った方が、かっこいいよ」「…笑うような事が無いんだ」「じゃあ、私が笑わせるよ」忘れられないよ、お兄ちゃんの、笑った顔。凄く綺麗だった。 #TOP

2012-10-31 23:22:33
미* @umechan0110

43.私は静かに目を瞑って、手を合わせた。お父さん、お母さん。私はジョンス先生やたくさんの孤児院のみんなから愛を貰って育ったよ。そして今は、お兄ちゃんと一緒に新しい道を進もうとしてる。きっと、幸せになれるよね?「ほら、お兄ちゃんも」後ろで立ち尽くしている手を引く。 #TOP

2012-10-31 23:24:37
미* @umechan0110

44.「昔は…良く来てたんだ」珍しく自分から口を開く。「最近は?」「…全然。だから久しぶりだよ」なんだかとても悲しそうな顔に見えて、やっぱりお兄ちゃんには抱えている何かがあるんだと思った。「また一緒に来ようよ」「ああ」また笑ってくれるよね?私、一緒に幸せになりたいよ。 #TOP

2012-10-31 23:24:54
미* @umechan0110

45.まだ会ってから少ししか経ってないけど、どんどん心の中に入って来る。今日初めて笑顔を見て、もっと知りたい、もっと見たいって。勝手な思い込みかもしれないけど、私みたいにたくさんの愛を貰って生きて来たわけじゃないんでしょ?ずっと、独りだったんでしょ…。 #TOP

2012-10-31 23:25:54
미* @umechan0110

46.私が笑わせる事が出来るんだったら、何でもするよ。冷たいしあんまり一緒に居てもくれないけど、私を迎えに来てくれたのは、お兄ちゃんだから。「連れて来てくれてありがとう。また来ようね」私はまたお兄ちゃんの手を握った。その手はほんの少しだけ、暖かくなったような気がした。 #TOP

2012-10-31 23:26:08
미* @umechan0110

47.それからもお兄ちゃんは帰りが遅い日ばかりで、中々会う事は難しかった。だけどたまに早く帰れば一緒に夕飯を食べて、並んでテレビを観たりして。自分から話をしてくれる事も多くなって、少しずつでも距離が縮んで行ってると感じた。 #TOP

2012-11-01 22:17:51
미* @umechan0110

48.「行ってらっしゃい」「…ごめん、また起こした?」お兄ちゃんが静かに出掛ける支度をする音にさえも反応するようになった。「ううん、勝手に起きたの」「そっか…じゃあ、行って来ます」優しく見つめられて頭を撫でられれば、どんどんお兄ちゃんに対する気持ちが大きくなっていく。 #TOP

2012-11-01 22:19:00
미* @umechan0110

49.久々に外に出掛けようと支度をしている時に、インターホンが鳴る。「…誰だろ」私がここに来てから、誰かが訪ねて来た事は無かった。「はーい」何も考えずに扉を開けると、そこにはお兄ちゃんよりも小柄な金髪の男性が立っていて。「…キュヒョナは?」「え、あの…」 #TOP

2012-11-01 22:21:01
미* @umechan0110

50.目が合った瞬間、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥った。その人の目は、お兄ちゃんよりも遥かに真っ暗で、更に猟奇的な目をしていたから。「すいません…!」怖くなって、反射的に扉を閉めようとするとその人は足を割り込ませて無理矢理入って来る。嫌だ、怖い。 #TOP

2012-11-01 22:23:46
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