舞城王太郎Twitter連載小説「NECK the seventh」第73話~第84話
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(73)「でも最初の話に戻るけど、あんたの心臓はあんたの葬式の後に火葬場で燃やされちまったんだ。もうこの世にはないんだよ」「いや、しかしそれがある可能性はある」「?どこに」「俺の魂の中に」 #neckthe7th
2010-08-03 12:00:17(76)「俺の中には何もない。命があるだけだ。俺にははっきり判ってる。ここにあるのはエネルギーと化学反応と演算だけだよ。ただの機械だ。人格なんてこの機械の癖にすぎない。俺という跡はあるが、俺はいないんだ。空っぽなんだよ」「・・・」 #neckthe7th
2010-08-03 21:00:07(77)「俺を捜してくれ。俺は《俺》のふりをするのに疲れたし、そろそろ俺は《空っぽの俺》の記憶を溜め込み始めてる。《心のない俺》としての癖がつき始めて、《俺》自体が崩れてきてるんだ。だから俺は焦ってる。俺の魂を探してきてくれよ」 #neckthe7th
2010-08-04 12:00:22(78)「魂なんて、どこ探したらあるんだよ。言っておくけど俺はあの世には行けないぜ?」 するともう形もなくなったオニオンリングから視線を上げて横溝は俺を見る。 #neckthe7th
2010-08-04 15:00:17(79)「同じ日本人、魂については理解が同じだろ。どうにかしろよ。それにあの世だって、いざとなったら俺が送り込んでやってもいいんだぞ?」つまり他のやり方か他の道でどうにか横溝の《心》を取り戻してやらないと駄目なのだ。 #neckthe7th
2010-08-04 18:00:06(80)「・・判ったよ。何とかしてみるよ。ちょっと待っててくれ」 と俺が言うと横溝が立ち上がる。 「うん。まあ、よろしく頼むよ、本当に。俺の無感覚はどんどん大きくなってきてるからな。 #neckthe7th
2010-08-04 21:00:08(81)・・人間らしさってのもどんどん忘れてきてる。急いでくれよ?お互いのためにも。じゃあな。また連絡するよ」 横溝はまたポンプ音もモーター音もさせずに静かに歩き去る。 #neckthe7th
2010-08-05 12:00:32(82)俺はアンカースチームをぐびり。 あの首から下サイボーグ野郎をぶっ殺す方が早いだろう。難しいが、そっちの方がまだ可能性がありそうだ。 #neckthe7th
2010-08-05 15:00:19(83)心と魂ってか、まったく。【同じ日本人、魂については理解が同じだろ。どうにかしろよ】だと? 適当に言いやがって。どうにもなんねえよ馬鹿。 うん。 殺すしかないな。 #neckthe7th
2010-08-05 18:00:08(84)ゴムボートに乗ってやってきた七人の北朝鮮人工作員が何らかの理由で全員死んで漂着した福井県の海岸を俺は知っていて、多摩川からその足でレンタカーを借り、向かう。明け方に着き、俺は周囲を確かめながら崖の途中で岩に隠れた小さな穴に入る。中は広い。 #neckthe7th
2010-08-05 21:00:14