レプリカ・ミッシング・リンク #1

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここは来た覚えがある。幸いな事に人通りも多くなってきた。等間隔で存在する市警の小型掩蔽壕、コーバン・アウトポストに常駐するマッポの目を逃れるには持ってこいだ。「高収入」「実現」「スシモ」ユンコはネオン街を走り、行きつけのサイバーゴスクラブを探す。「名前……なんだっけ……!」 47

2012-11-05 00:47:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シンセ世代」「ヤバイ・オオキイ」「ミネウチ」いくつもの案内カンバンを見ながらユンコは駆けた。そしてついに発見する。やや危険なサイバーゴスクラブ「ウゴノシュ」だ。LANケーブルを繋がれた鴉のカンバンが両目からレーザーを放つ。店の前の階段にはサイバーゴスが大勢たむろしていた。 48

2012-11-05 00:55:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは迷わず階段を駆け上がる。「それは電子手錠ですか?」「私も欲しいです」とろんとした目つきのサイバーゴスたちが、彼女の手錠を反社会的アクセサリか何かと勘違いし声をかける。彼女は答える時間も惜しんで走り、首から下げた電子素子ロケットの鎖を噛み、胸の谷間から引っ張り出した。 49

2012-11-05 01:04:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

入口には異常巨体のLANドレッドヘアが威圧的に立ちはだかる。見覚えのないセキュリティ。新人か。入れ替わりの激しい世界だ。やはり見覚えのない小柄なスタッフが彼女の素子を読み取る。チャージは十分。「ハンドルネームは?」「ミッドウィンター」「称号は?」「……えっと、ツァレーヴナ」 50

2012-11-05 01:14:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

心安らぐサイバーテクノの重低音と光の洪水が彼女の目と耳に飛び込んでくる。だがその直前で足止めだ。「ツァレーヴナ・ミッドウィンター=サン……」入店して日が浅いのか、小柄なスタッフはUNIX検索画面を見ながら首をひねる。ユンコはいらいらした。電子手錠はきっとシグナルを発してる。 51

2012-11-05 01:21:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヘイトディスチャージャー=サンは来てる?私の友達なんだけど!」ユンコは彼の称号を付け直して、スタッフの耳元でがなった。称号はそのクラブの中でだけ通用するものだ。「ダークロード・ヘイトディスチャージャー=サンよ!」「アッハイ、三階のプライベート室です」スタッフが恐れ入った。 52

2012-11-05 01:28:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

プライベート室へと向かうと、そこにはサイバーゴスユニット「電気信号」のヴォーカル兼オコトとして有名なヘイトディスチャージャーが居た。白いモヒカン、口元を覆う拡声器付小型ガスマスク、針のような瞳、空挺部隊風サイバーウェア。少し雰囲気が変わったろうか。前に会ったのはいつだろう。 53

2012-11-05 01:36:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミッドウィンター=サン…?」ヘイトディスチャージャーの細い瞳がさらに細くなった。「久しぶり、だっけ?話は後!ヤバイことになっちゃったの……誰か、これ外せない!?」ミッドウインターの剣幕に押され、ヘイトディスチャージャーは部屋の隅でLAN直結していたハッカー双子の肩を叩く。 54

2012-11-05 01:45:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やってみます」双子の片割れが電子手錠のLAN端子に直結した。「なあ、ミッドウィンター=サン」ヘイトディスチャージャーが怪訝な顔で言う。「ゴメン、ちょっと休ませて。頭を整理しないと。いろんな事がありすぎて」ユンコはソファに体を沈めて、ホールの極彩色閃光をぼんやりと見つめた。 55

2012-11-05 01:54:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

本当に色々な事がありすぎた。まだ夢の中にいるようだ。それも、かなりタチの悪い電子的悪夢の中に。再会したばかりの父親が殺されて、マッポが来て、罪を着せられて、オイランドロイドが銃を撃ち始めて……あんな殺人兵器を持ってるなんて、父さんは何者だったの?私に、何を伝えようとしたの? 56

2012-11-05 01:59:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

数秒後かそれとも数十分後か……小さな音が鳴ってLAN端子から煙が上がり、手錠が外れた。彼女は覚醒するように目を見開く。まだ終わりじゃない。マッポは自分を追ってくるだろう。どうすればいい。「なあ、ミッドウィンター=サン、言いにくいんだが」ヘイトディスチャージャーの顔が見えた。 57

2012-11-05 02:04:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲエエエエップ!」セントラル・コーバンの暗い電算機室でオハギを貪りながら、キングピンは驚きとともに画面を見つめた。ユンコを指名手配しようとして、システムエラーが発生したのだ。「何だこりゃあ!?ネオサイマ市警データの間違いか?ユンコ・スズキは……既に……死んでる……だァ?」 59

2012-11-05 02:09:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キングピン=サン、その情報に間違いはないな?」彼の後ろに立つ暗い人影が言った。「ゲエエエエップ!知らねえよ、データがそう言ってるだけだ。保証しねえ。ハッキングで改竄されてるかどうかは、他の奴らを使わねえと……ちいとばかし手間がかかるぜ」「そうか……。だがどちらにせよ……」 60

2012-11-05 02:17:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その暗い人影……すなわちスズキ邸を襲撃したもう一人のアマクダリ・ニンジャは窓に向かって歩を進めながら言った。「……どちらにせよ、あの娘がカギだ。親父の抹殺には成功したが、死ぬ直前に差し出したデータはとんだ食わせ物だったからな」「……俺のミスじゃねえぞ、ターボアサシン=サン」 61

2012-11-05 02:24:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キングピンは立ち上がり、落ち着かない様子で逆Uの字型の濃いヒゲを掻いた。ターボアサシンは窓の横で立ち止まり、言った。「そうだな、両者のミスだ」次の瞬間、彼は踵の小型ブースターを吹かしてジャンプすると、窓から飛び降りネオサイタマの闇に消えた。キングピンはまたオハギを頬張った。 62

2012-11-05 02:31:09