レプリカ・ミッシング・リンク #1

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「レプリカ・ミッシング・リンク」 #1

2012-11-03 23:09:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

重金属酸性雨が静かに降る夜。ネオサイタマ有数の富裕層居住区、カネモチ・ディストリクト。ここには広大な強化樹脂製の分厚い透明ルーフが地上百メートルの高さに築かれ、無数のビル群や鉄塔によって支えられている。彼らの健康は、高級パックド・スシめいて重金属酸性雨から守られているのだ。 1

2012-11-03 23:17:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ミッドウィンターは広い自室で目覚め、サイバーカンオケ型のベッドから体を起こす。昼に寝て夜に目覚める……極めて反社会的だが、サイバーゴスになった無軌道大学生としては至ってノーマルな生活リズムだ。無論、その名前も本名ではない。彼女の本名はユンコ・スズキ……ありふれた名前である。 2

2012-11-03 23:27:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

酒か薬物が残っているのか……目覚めたばかりの彼女の意識は、まだケミカルな目眩に支配されている。姿見鏡を見た。メイクも落とさずシャワーも浴びずにベッドに入ったのだろうか。蛍光ブルーの液体入りチューブで装飾された下着姿のまま、彼女はスリープウォーカーめいた足取りで洗面台へ向かう。 3

2012-11-03 23:35:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ターコイズ色とクリーム色のLANケーブルが混じったサイバーゴスヘアを黒いヘアバンドで持ち上げ、顔を洗い、洗面台の前でダイナミックな表情をいくつも作る。意外にも肌の調子は良好だ。彼女の肌は雪のように白い。定期的に紫外線サロンに通うといわれるアンダーガイオン人めいた病的な白さだ。 4

2012-11-03 23:45:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「悪くない、悪くない」高級オーガニック・タオルで顔を拭き、毒々しい蛍光ターコイズ色のリップを塗る。髪を下ろして鏡の前に目を近づけ、パチパチと瞬きする。右目は凍るように美しい青。左の瞳は黒い点が三角形に並び、時々回る。最新鋭の網膜ディスプレイ搭載、お気に入りのサイバネ・アイだ。 5

2012-11-03 23:54:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

富裕層居住区の住人にしてはいささかチープな艶艶としたサイバーゴスウェアを着てブーツを履き、胸のテクノ・ジップを上げる頃、強化フスマが恭しくノックされて小綺麗なオイランドロイドが入室してきた。「おはようございますドスエ、ミッドウィンター=サン」「あ、おはよう」両者はオジギする。 6

2012-11-04 00:04:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オイランドロイドは高級パックド・スシを白い高足テーブルの上に置く。「おいしいね」立ったままオーガニック・トロスシを摘むユンコ。実際おいしい。「食事が終わったら御父上様と家族会議の予定が入っておりますドスエ」オイランドロイドは「家庭用」と漢字で書かれた瞳を瞬きさせながら言った。 7

2012-11-04 00:11:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「家族会議……」ユンコは覚醒したばかりのニューロンでぼんやりと考えた。ケミカルの霧で覆われた記憶組織が、辛うじてリンクする。「そういえば、そうだった……」自分を捨てたとばかり思っていたエンジニアの父親が、数日前、突如彼女の前に戻り、この現実味の無いカネモチ生活が始まったのだ。 8

2012-11-04 00:22:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あのさ」「何ドスエ」「父さんの前でハンドルネームは止めてね」「ハイ」オイランドロイドは頷いた。その電子マイコ音声のイントネーションもかなり人間味がある。実際高級なAIを搭載している筈だ。医療用ではないので国からの補助が適用されず、ゆえに所持できるのはごく一部のカチグミだけ。 9

2012-11-04 00:27:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ワーオーワーオーワーオーワーオー!「アイエエエエエエエエエ!?」突如家中に鳴り響くエマージェンシー警報!回転する非常ボンボリ!困惑するミッドウィンター!いったい何が起こったというのか!「犯罪警報ドスエ」オイランドロイドがユンコを廊下へと誘導する。ユンコの胸は標準的であった。 10

2012-11-04 00:39:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!?」「こちらドスエ」逃げるユンコとオイランドロイド!廊下はまるでスペースオペラに登場する爆発寸前の宇宙艦艇コリドーめいて、真っ赤な非常明滅ライトに照らされている!二人が玄関に向かって駆け出した、その時……「アイエーエエエエエエ!」ナムサン!父親の悲鳴が! 11

2012-11-04 00:48:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「危険ドスエ」オイランドロイドがユンコの手を引く。しかし父親の悲鳴が彼女を踏みとどまらせた。「アイエエエエエ!ちょっと待って!どこ、父さんの部屋はどこ!?」「危険ドスエ」「アイエーエエエエエ!ニンジャ!ニンジャー!」ナムアミダブツ!父親が発する謎めいた絶叫音が聞こえてくる! 12

2012-11-04 00:53:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ニンジャ……!?)))ユンコのニューロンに大きな疑問符が浮かぶ。そして得体の知れぬ恐怖が鎌首をもたげた。それは日本人の精神に遺伝子レベルで刻まれた、ニンジャへの恐怖心か!「アイエエエエエエエ!」父親の絶叫!ユンコはオイランドロイドの手を振り払い、声の方向へと駆けた! 13

2012-11-04 01:01:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((どの部屋だ?)))ユンコは廊下を駆ける。まだ家の構造をよく知らない。それに怖い。何が起こっているのかも解らない。こんな時、ネオサイタマ市民が取るべき行動は、速やかに安全圏へ避難すること。だが彼女にはそれができなかった。再会してからまだ、何も伝えてもらっていないからだ。 14

2012-11-04 01:06:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

父親の悲鳴が聞こえなくなった。ユンコは手当り次第にフスマを開ける。UNIX室。ラボめいた部屋。オーガニック・タタミが敷かれたザゼン・ルーム。違う!違う!違う!非常ボンボリが彼女をさらに焦燥させる。そしてユンコが、長い廊下の突き当たりにある、父親の寝室のフスマを開けた時……! 15

2012-11-04 01:14:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……アイエエエエエ!」ユンコは短い沈黙の後、部屋の入口で悲痛な叫びを上げた。だだっ広い部屋に置かれたベッドのシーツが乱れ、そこで父親が仰向けに倒れていた。その額には黒い刃物。サイバネアイが回転してそれを赤外線ロックオン、拡大する。……スリケンだ。ユンコは父親に駆け寄った。 16

2012-11-04 01:22:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「父さん、父さん!?」父親の肩を揺り動かすが、すでにユンコの父、トコロ・スズキは物言わぬ死体へと変わっていた。……おお、ブッダ!再会したばかりの父娘に何たる仕打ちか!割られた強化ショウジ戸からネオサイタマの酷薄な風が吹き込み、カーテンを揺らしているのを、ユンコは睨みつけた。 17

2012-11-04 01:29:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マッポが来ましたドスエ」後を追ってきていた忠実なオイランドロイドが、奥ゆかしい姿勢で控え、開いたフスマを叩く。ユンコは窓の外の日本庭園を見やったが、侵入者の姿は無く、カエル型石灯篭の上で見事なヤナギの枝が冷たい風に揺れているだけだった。まだ自分が夢の中にいるようだった。 18

2012-11-04 01:39:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オジャマシマス!」タングステン・チョウチンを掲げた深夜勤務マッポたちが20人ほど列を成してやってきた。カネモチ・ディストリクトの警備体制は万全だ。「アイエエエエエエエ!殺人事件だ!」レッサー・マッポたちが驚く。ユンコは何をすればいいか解らず、父親の横に立ち尽くしていた。 19

2012-11-04 01:47:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコの脳もどんな物質を分泌すべきか混乱していた。不自然なほど冷静な自分の中に、時間差で怒りが形成され始めた。おかしいな、悲しさはどこにいったんだろう、と、父を見ながら思った。プログラムされた機械めいて夜な夜なサイバーダンスを踊り反抗していた自分が、こんな事を考えるなんて。 20

2012-11-04 01:57:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ご家族の方ですか?」「ハイ」ユンコが答える。過剰勤務でマグロの目をしたレッサー・マッポたちはベッドの周囲に集まり、様々な重点ポイントを指差し確認しながら騒然としていた。カネモチ・ディストリクトで自分たちの勤務時間中に殺人事件が起これば、ケジメどころの騒ぎではないからだ。 21

2012-11-04 02:02:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは何ですか」若いマッポが死体の額に刺さった凶器らしきものを指差す。「スリケン?」「まさか!スリケンはニンジャの武器だぞ」「ニンジャなんて馬鹿馬鹿しい」「カトゥーンだ」「これは自殺かカロウシかもしれませんね」申し訳なさそうに顔を歪めた初老のマッポが、ユンコに告げた。 22

2012-11-04 02:06:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな!自殺だなんて!もっとちゃんと調べてください!」ユンコは予想外の流れに困惑した。自分たちは被害者だ。なのに何故こんな事に。「アイエエエエ……」初老マッポがたじろぐ。彼らはカネモチに弱いのだ。「叫び声を聞いたんですよ!……そう、確か……ニンジャって!」ユンコが叫んだ。 23

2012-11-04 02:12:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲエエエエップ!ニンジャだあ!?ニンジャなんかいるわけねえだろうが!」その時、困惑するレッサーマッポの波を押し分けるようにして、ディストリクトの西を担当するチーフマッポが寝室に入ってきた。くちゃくちゃと何かを咀嚼している。紙袋に隠れているが、それは違法なアンコドーナツだ。 24

2012-11-04 02:17:19
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