逢いたい、でも愛したい【ツイノベ】

はじめてのツイッター小説投稿。はじめてのファンタジー(仮)。 をまとめてみました。 2012.10.05
9
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 1) その日も風は吹いているのに音はせず、上を見上げるとなかなかどうして綺麗な水色の空に立体的な雲が幾つも浮かんでいた。太陽の光も下りて暖かいのにほんの少し肌寒いような、夏と秋の間の独特の季節。穏やかで、あっという間に過ぎていく情景だ。

2012-11-05 16:15:29
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 2) いつもと同じように自ら掃除中のゴミ捨て役を買って出てはいそいそと教室から逃げ出す。ゴミ捨て場まで一歩一歩を踏みしめるようにゆっくりと歩きながら時間稼ぎをしていた。外に出ているのは随分気持ちがいいけど冬になったらゴミ捨て役はちょっと嫌だな。

2012-11-05 16:16:31
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 3) 至極どうでもいい事を考えながら校庭の草むしりをする女子数人の傍を通って校門近くまで来る。ぼけっと視線を走らせていると校門の向こう側、ぽつんと立つ人影が見えた。制服姿ではなく至ってシンプルなその私服姿にこの学校の生徒ではないんだと想定する。

2012-11-05 16:17:19
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 4) 同い年くらいだけど髪の毛の色が明るい。この進学校の生徒なら目立つだろうし、一度は見たことがあるはずだ。彼のような人は見たことがない。…なのに微笑むとできるえくぼや、垂れる目尻はどこかで見たことがあるような、不思議な感覚を呼び起こす。

2012-11-05 16:18:07
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 5) 彼は私が彼に気付くずっと前からこちらを凝視していた。思わず立ち止まって見つめ返すと彼は小さく手を振る。人が良さそうで柔和な雰囲気に何故か私は赤面しつつ、後ろを振り返った。背後に人はおらず彼が私に向けて手を振ったのだと知り、向き直って小さく頭を下げる。

2012-11-05 16:18:50
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 6) この人と知り合いではないし、どこかで会った覚えもないし。まさか彼が私に用があってここに突っ立っていた訳でもないだろう。一人で結論付けると彼の視線をぎこちなく思いながら歩を進め、ゴミ捨て場に向かった。

2012-11-05 16:19:43
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 7) その一週間後には、私は教室のゴミ箱を両手に掃除の時間を抜け出し、外を掃除する生徒の目をかいくぐって校門外に出ることが習慣になっていた。学校の隣にある小さな公園のベンチに大概彼は腰かけていて、私を見るなりパァァっと嬉しそうに顔をほころばせる。

2012-11-05 16:20:54
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 8) 毎日のように掃除の時間校門に立っては何かを待っているような姿の彼に思わず声をかけたのが4日前。彼は近寄って来た私を喜ばしげに見つめ、「はじめまして」と言った。落ち着いた低すぎず高すぎもしないなだらかな声に私の関心は尚募ったのは記憶に新しい。

2012-11-05 16:21:59
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 9) どうやら彼は私を知っているらしかった。「マナさんをずっと待ってました」なんて言われて「どこかでお会いしましたっけ?」と聞き返すも彼は小さく首を横に振るだけ。「なんで私を待ってたの?」「一度会って、お話してみたかったから」

2012-11-05 16:22:57
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 10) 「放課後じゃ駄目なの?」「俺マナさんの家知らないし、学校で待ち伏せようと思って」「私と会ったことないのに分かるの?」「分かります。マナさんを見つけてすぐに分かった」年齢を聞くと彼は私より2つ年上で「さん付けで呼ばなくてもいいよ」って私は言ったのに、

2012-11-05 19:10:58
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 11) 「なんだか呼び捨てとかちゃん付けは変な感じがするから」と彼は曖昧に濁す。変な人だなと思いながらも深く追求せず、ただ「ふぅん」と返した。智景(チカゲ)と名乗ったその人はとにかく私の話を聞きたがった。好きな食べ物、嫌いな曜日、得意な教科、将来の夢。

2012-11-05 19:12:06
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 12) 普通他人なら大して興味もわかないだろうその話題を振っては智景は熱心に私の言葉に耳を傾ける。初めは何か下心があるんじゃないのか、だから私の話を真剣に聞いてくれるんじゃないのかと疑ったけど、

2012-11-05 19:13:19
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 13) 掃除の時間が終わりに近付くと彼は「明日もまた話が聞きたいな」の言葉と共にいつもあっさりと帰って行く。まるで本当に私と話をする為だけに毎日ここへ通い詰めているようだ。 人見知りな自分も大分彼の存在になれて、軽く冗談を交わせるくらいになった。

2012-11-05 19:15:08
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 14) 智景も今やタメ口になったけど、依然私の呼び方は「マナさん」だ。昨日はとても冷えた一日で、ジャケットを着ずに教室から出て来た私を智景とても心配した。「ゴミ捨て行くだけなのにジャケット着てったらクラスの人に変に思われるから」

2012-11-05 21:27:12
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 15) 訳を話しつつ両手を擦り合わせると彼は自分の手で私の手をそっと包んだ。伝わる温もりに一瞬息の仕方を忘れた。「…俺、マナさんのこと好きです」じんわりと広がる心の中の何か。体温が上がり、頬が熱くなって。 素直に嬉しかった。

2012-11-05 21:29:00
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 16) 返事をしようと開いた口は次の瞬間には彼の片手で軽く塞がれて。「…なんてね」と彼は柔らかく目を細めた。 ……そして今日に至る。よく分らない逢瀬を始めて8日目。智景を初めて見かけてから12日目。

2012-11-05 21:30:29
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 17) よく考えると私は彼のことを何一つ知らない。彼は私の好物も、趣味も、数学の過去最低点も、今までで一番恥ずかしい失敗談すら知っているのに。私の苗字や血液型、誕生日に至っては私が教える前から知っていた。「智景は私のストーカーなの?」と聞くと彼は

2012-11-05 21:32:46
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 18) 「ううん、小さい頃からマナさんを知っているから」と苦笑した。今度は私が彼のことを知りたい。その決意を質問に込めて彼にぶつける。「智景は何者なの?」ざっくりした質問だけど、細かな質問ができないくらい私は智景のことを知らないんだからどうしようもない。

2012-11-05 21:34:06
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 19) 智景は考えるように暫く間を置いてゆっくりと、言葉を選ぶように口を開いた。「…俺が何を話しても、信じてくれる?」「うん、信じる」何も知らないよりもきっとずっとましだ。 「……俺が未来から来たって言っても?」試すような智景の目にはた、と思考が停止した。

2012-11-05 21:35:47
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 20) これは冗談?反応の仕方が分らない。だって、智景はどう見たって現代の青年だ。というか普通にどこでもいるような恰好の若者。髪型も、服装も、おかしいところなんて一つもない。「…でも智景フツーだよ?」語彙力のない 私の訴えを彼は理解したのかこくりと頷いた。

2012-11-05 21:38:05
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 21) 「だって27年後から来たから。そんなに遠い未来ではないでしょ?」どうやら私はいつの間にかSFの世界に紛れ込んだらしい。ネコ型ロボットにだってまだ会ってないのに。「そう、なの?じゃあなんで27年前に来たの?」「マナさんに逢いたかったから」

2012-11-05 21:40:08
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 22) 「智景は…27年後の私を知ってるの?」口をつぐんで苦しそうな彼の表情で少しだけ、女の勘が働いた。「…27年後、私は生きてる?」「……」「…貴方は誰なの?」質問に質問を被せないと本当に智景の話を信じてしまいそうになる。話はでたらめっぽいのに、

2012-11-05 21:43:46
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 23) 彼の表情だけは妙にリアルだ。「……貴女の子供だって言ったら…信じる?」顔を歪める智景に私が泣きそうになった。「初めは…過去の貴女に逢いたくなって、自分の生まれるずっと前に行こうと思って。ただそれだけだったのに、

2012-11-05 21:45:29
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 24) …その人に恋をしてしまったら…おかしいかな」消え入りそうな声に居たたまれなくなってその細身の体を抱きしめる。私の背に回された腕は体温を伝えて、それだけでどうしようもなく悲しくなった。「…ここにいられないの?」

2012-11-05 21:47:50
泣宮アンガジュモン永 @sherrysky

#twnovel 25) 「いたら…俺は生まれなくなっちゃうね」「…そうしたらどうなるの」「分かんない。…ある日突然消えちゃうのかなぁ」 生まれたいなぁ、なんて平気そうな声作って彼はぽつりと漏らした。

2012-11-05 21:49:29