魔王譚

これまでに書いた魔王と勇者を巡るtwnovelまとめ。必ずしも一連の話ではないけれども。
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芹沢文書 @DocSeri

「迷宮はどこまでも果てしなく、行けど戻れど外に到達することはなかった。地図を書いてもみたが同じ場所には戻れず、あまり役に立たない。一度壁の破壊を試みもしたが、どこまで掘っても隣の通路に出ることはなかった。ここはそもそも迷宮ですらないのかも知れない」 #twnovel

2009-09-25 13:20:11
芹沢文書 @DocSeri

「少年は旅をする。世界を恐怖で支配する、魔王を打倒するため。無数の敵を切り捨て屍を乗り越え、辿り着いた居城で魔王はとうに石と成り果てた。血塗られた掌を、少年はじっと見る。戦いの他に何も知らぬ彼にできることは、魔王の跡を継ぎ次代の勇者を待つことだけ」 #twnovel

2009-09-28 16:25:25
芹沢文書 @DocSeri

「勇者は手にした剣を玉座の屍に突き立てる。肩口から腰までを貫かれた骸は頭を傾げ、嘲笑うかの如く半開きの口から歯が覗く。これが魔王の墓標、ここが魔王の墓所。俺は俺の墓所を創らねばなるまい。難攻不落の墓所を築こう。次の勇者を鍛えるために、世を導く王を待つために」 #twnovel

2009-09-30 12:46:02
芹沢文書 @DocSeri

「自動迷宮は秘密の法則に従い自在にその構成を変え、また自在に拡張を続けました。どこまでも高く、どこまでも深く、どこまでも広く。今や迷宮はあらゆる箇所に浸透し、どこからどこまでが迷宮なのかすら判別不能。儂の脳がこのように入り組んでおるのもそういう理由によるのです」 #twnovel

2009-12-17 23:02:32
芹沢文書 @DocSeri

「王は迷宮の奥底に百万冊の書物を封じた大図書館を建立した。読み手なき書は互いを読み、喰らい、啜り、最後の一冊には真理が記されておるに違いない。千年の後、今は亡き王国の遺跡より出土したそれは解読不能な文字にて人智の及ばぬ真理を語る災いの書となった」 #twnovel

2010-01-15 17:06:43
芹沢文書 @DocSeri

「今や黄泉路は開かれた。冷気を伴って死者の理が雪崩れ込む。陰は陽に、陽は陰に。美しき妻はおぞましき姿で、優しき娘は残酷なる振る舞いで黄泉帰る。千と五百の産屋はそのまま千の死者に。滅びを知らぬ地下の軍勢は生者に倍する勢いで増え、──世は再び死に蹂躙された。」 #twnovel

2010-01-22 18:48:35
芹沢文書 @DocSeri

「人の命はかくも儚い。産まれた数だけ人は死ぬ。だが黄泉にて死者の反命は絶えることなく、生者の増加が死者のそれを上回る日は訪れぬ。いかな神威を以てしても死者を再びの死に追い遣ることは叶わず、ひとたび開いた黄泉路を閉ざす以外に溢れ出る死を止める術はないのだ……」 #twnovel

2010-01-22 21:55:47
芹沢文書 @DocSeri

「潜るほどに濃くなる瘴気が討伐隊を苦しめる。蝕まれた体では最早長くは生きられぬ、全員が不帰の覚悟である。元より神ならぬ身に不死の王を討つ力などあろう筈もない。彼らは傲岸不遜の王を此岸に引き摺り出すための囮だ。死者の軍門に下ることなきよう、魂消の呪を忍ばせて。」 #twnovel

2010-01-23 00:20:05
芹沢文書 @DocSeri

「地下迷宮そのものが魔王の仕掛けた罠なのだ。無限生成アルゴリズムは勇者の行く手に迷宮を作り続け、侵攻するほどに版図を拡大してゆく。気付いた頃には既に手遅れで、多層の中空構造は各地で崩落を繰り返し、地上は荒廃し勇者は面目にかけて侵攻を続けるしかなかった」 #twnovel

2010-01-25 16:21:33
芹沢文書 @DocSeri

「何故、魔王を倒す為に各地を転々とせねばならなかったのか。そもそも魔王が自身の命脈を絶つための武具を見逃がすだろうか。かくして世界を股にかけた魔法陣は完成した。太古から隠されていたかのような入口はその実、たった今生成されたに過ぎない。長い長い悪夢の幕開けである」 #twnovel

2010-01-25 16:28:29
芹沢文書 @DocSeri

「せかいの はんぶんを おまえに やろう」「世界っつったってお前の支配領域ってこの部屋だけじゃん」「……だからその、つまり、ここに一緒に住まないかってお誘いなのだが……」「泣くな」 #twnovel

2010-05-04 08:28:45
芹沢文書 @DocSeri

「魔王陛下、何故世界征服を?」「知れたこと……いつか勇者に世界の半分を割譲するためだ。所有せざるものを与えることはできぬからな」「……しかし、全世界を征服してしまったら肝心の勇者も魔王陛下の所有物の一部なのであって分けるも何もないのでは」「……ああっ!」 #twnovel

2010-05-04 09:23:09
芹沢文書 @DocSeri

「世界の半分をやる為には世界の全てを所有せねばならぬ。ということは半分をやる相手自身も所有物の中に含まれている算段で、半分の中に相手自身を含めなければ結局のところくれてやった部分も含め全て私の」「いいからとっとと勇者に求婚してきなさい」「……はい」 #twnovel

2010-05-04 09:26:11
芹沢文書 @DocSeri

「せかいを はんぶんこ」 #twnovel

2010-05-04 22:33:31
芹沢文書 @DocSeri

「ひとたび野に放てば、勇者はいずれ確実に魔を滅ぼす。だがその前に魔王が人の世を滅ぼすだろう。勇者の誕生は魔王による人世の終焉よりも確実に早く、魔王の侵攻は勇者による魔国の征服よりも確実に早い。故に双方とも動くことができず、辛うじて世界は平穏を保っている」 #twnovel

2010-06-05 23:46:43
芹沢文書 @DocSeri

「魔王少女は生まれながらの王であるが故に契約など必要とせず、またすべてを所有するが故に叶えるべき望みも持たない。勇者をも凌駕し、神さえ殺し得る力を持ちながら、一度たりとてそれを行使することはなかった。彼女は生まれながらの魔王であるが故に、只の少女であったのだ。」 #twovel

2011-03-09 15:55:56
芹沢文書 @DocSeri

上下左右が繋がった地図から世界がトーラス構造であることが判明、そこで初めて描写される「反り返る大地」からここが古代種族による宇宙コロニーの内部であることが判明して一気にSFへ。世界の管理者にして人口調整機構たる魔王を破棄してしまった人類の運命や如何に。

2011-08-05 20:09:10