江本伸悟さん【神話について等】(20121105~)

20121105~随時更新予定 更新日:20130306
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江本伸悟 @shingoemoto

「舞い」によって神との交流を深めるといえば神楽が思い出される。天岩戸の神話においては、日本最古の踊り子であるアマノウズメが、アマテラスの隠れた岩戸の前で「楽(アソビ)」をする。ここで楽(アソビ)というのは「舞い」であって、神楽という言葉は「神の楽び=神の舞い」を意味している。

2012-11-05 00:05:11
江本伸悟 @shingoemoto

神が舞うことを神楽び(カミアソビ)と呼ぶいっぽうで、神と舞うことを神遊びと呼ぶ地域がある。神が楽び、人が遊ぶ、神が舞い、人が舞う、そうして神と人とが渦巻き、交わる。神と交流すること、それは神と遊ぶことであって、神と舞うことであって、神と渦巻くことであったのだろう。

2012-11-05 00:14:44
江本伸悟 @shingoemoto

研究室の後輩と、神話について話していた。日本神話の特異性の1つとして、國産みの物語において生み出された日本最初の神である蛭子、これが障害児であったことなんかを話す。他国の神話にそんなに詳しいわけではないけど、最初に生まれた神様が障害児であるというのは、なかなか特異な例だろう。

2012-11-05 12:49:04
江本伸悟 @shingoemoto

ちなみにこの蛭子は障害児として海に流されてしまうんだけど、その流れ着いた先で、蛭子はエビス様としてまつられることになる。こうして不具の運命に生まれつきながらも、やがて幸福の神へと転じる蛭子は、土地的には地震や台風がおおくて恵まれない日本が、それでも幸福に向けて歩む姿を思わせる。

2012-11-05 12:51:56
江本伸悟 @shingoemoto

ちなみにイザナミとイザナギは國産みのさいに、柱の周りをそれぞれ逆向きに回って、柱の反対側で出会いをとげる。そこで女のイザナミがイザナギをナンパして蛭子が生まれるんだけど、女側から声を掛けたのがまずかったらしく、蛭子は障害児として生まれる。

2012-11-05 12:56:11
江本伸悟 @shingoemoto

そこでイザナミとイザナギは、新たな子供を生む前に、柱をもう一巡りする。今度はイザナギから声をかける。巡ることによって過去の過ちを祓って、そこから新たな生をスタートさせる。巡りという行為には祓いと新生のイメージが込められているんだなぁと思う。

2012-11-05 13:00:06
安田登 @eutonie

@shingoemoto 実はこの巡り方がちょっと面白いのです。まず原文では「行廻逢是天之御柱」とあり「逢」の位置が変です。「天の御柱を行き廻って逢う」だったら「行廻是天之御柱逢」と「逢」は最後に来るはずなんですね。その他いろいろ問題のある箇所です(「行」という語なんかも)。

2012-11-05 13:20:35
江本伸悟 @shingoemoto

@eutonie おお、確かに。これだと行き廻って柱に逢うことになるんでしょうか。行きというのも確かに分からないですね。廻るとそこに中心が立って、それを柱の出現だと思うと廻って柱に逢う感じはしますけど、それだと文脈と「是」にあわないですね。

2012-11-05 20:10:03
江本伸悟 @shingoemoto

@switch_000 世界と日本の見方って本の四章は、その辺りの時代について、神話と仏教との関わりの視点から書いていて、なかなか面白いよ。死と隣り合わせだった当時は、死の恐怖とどう向かい合うかということで、仏教の存在は国政を左右する一大事だったんだなぁって実感した!

2012-11-06 20:46:22
江本伸悟 @shingoemoto

イタリア人の後輩と、西洋神話と日本神話の共通点や相違点について話す。アダムより先にイブが林檎をたべて、西洋では女が積極的なんだという話をきいて、そういえば日本でも始めにイザナミがイザナギに求愛のメッセージを告げて、ここでも女が積極的だよねとか。

2012-11-08 14:53:17
江本伸悟 @shingoemoto

あとは神様の出産事情について。イザナギは眼と鼻から、アマテラスやツクヨミやスサノオを生んだけど、こういう身体の一部が他の神様になることは西洋でもあるのかと効いたら、それはイブの肋骨がアダムになったのと似ているねと。アダムとイブ、イザナギとイザナミは色々似てますね。

2012-11-08 14:55:43
江本伸悟 @shingoemoto

でもイザナミは土地とか精霊みたいなのも生んだんだとか、更には火の神様を産み落としたときに死んじゃったんだと言うと、神様が死ぬなんて斬新ですねって。しかも死んで黄泉の国ではウジ虫にたかられてるんだというと、そんな生々しく死んでるんだ、それは西洋では珍しいとのこと。

2012-11-08 14:57:44
江本伸悟 @shingoemoto

@hhayakawa まさか早川先生からコメントを頂けるとは夢にも思っていませんでした。そうだったんですね、オルフェウスの神話は初めて知りました、どうもありがとうございます。寺田寅彦の化け物の進化:http://t.co/7OmZL89Uなど思いながら、最近神話を楽しんでいます。

2012-11-08 17:45:57
江本伸悟 @shingoemoto

神様へ踊りを捧げることを神楽というけれど、@CoYamadaUn のみんなの踊りは、本当に神様への捧げもので、神楽だなっておもう。先週の春の祭典にしても、そこに込められた余りにも豊かな豊かさは、とても僕ら人間の観客だけじゃ受け止められなくて、だからこそそれは神様へと贈られる。

2013-03-05 00:02:03
江本伸悟 @shingoemoto

先週は「春の祭典」を観にいきましたが、来週は「ディクテ」を観にいきます。ディクテは3月16日と17日、世田谷パブリックシアターにて。ぜひみんな観にいきましょ〜。詳細はこちら。http://t.co/s5RIWk1A9R

2013-03-05 00:07:24
江本伸悟 @shingoemoto

そういえば能楽の前身である申楽、この申は神から示偏を取り除いたもので、神楽→申楽→能楽と、能楽も神楽の直系の子孫だったんですね。申楽はもの真似芸として発展してきた芸能だと思っていますが、神話の時代を思えば、もの真似というのも自然や神との交流するための欠かせないキーワードですよね。

2013-03-05 00:19:00
江本伸悟 @shingoemoto

神話の時代というのは、未だ人々と動物と神々とが未分化の世界であったように思います。動物は巣へと帰ると、その毛皮を脱いで人間になると思われていたし、逆に人が毛皮を被って動物となり、こうした互いが互いを真似る世界において、人々と動物との心が深く通い合っていた時代です。

2013-03-05 00:23:11
江本伸悟 @shingoemoto

現代の人は、こうしたことをあるいは馬鹿にしてしまうかもしれません。だけど心の理論(コーエン)を読みかえてみれば「実際に他者に心があるかという事実関係そのものよりも、他者に心があると見なして行動する、そのことが新たなコミュニケーションの形を生みだす、それが肝要だ」とも解釈できます。

2013-03-05 00:27:51
江本伸悟 @shingoemoto

「動物にも心があって僕ら人間と分かりあっているんだ」というある種の誤解、ディスコミュニケーションが、転じてそこに動物と人間のより良い関係を生みだしていたわけですね。両者の間では意味が共有されていない、にもかかわらずその上にメタ的な意味が立上がる、こうしたパラレルワールドがあった。

2013-03-05 00:32:14
江本伸悟 @shingoemoto

でも始めからディスコミュニケーションを決め込んでいたのではダメで、コミュニケーションを取ろうという積極的な働きかけが必要。身体と心の繋がりを指摘する身体性認知科学の文脈から考えていくと、物真似ることによって身体の動きを揃えて、そこに共通の心を立上がらせるという手があるでしょう。

2013-03-05 00:36:01
江本伸悟 @shingoemoto

そうした意味で、物を真似ることは、心を真似ることと表裏一体なわけです。こうした物真似芸から発展した能楽というのは、観客がすぐさま寝てしまうことで有名ですが、でもこれは退屈だから寝るんじゃないんですね。能楽も安くはありませんから、お金を払ってまで退屈を求めるひとはいないんです。

2013-03-05 00:42:57
江本伸悟 @shingoemoto

退屈でないにも関わらず寝てしまうのは、能においては演者と観客とが非分離であることが原因なんですね。舞台の上から発される緩やかな声の調子と所作とに、僕らの身体が引き込まれてしまう。僕らの身体が、能のあの緩やかなタイムスケールに巻き込まれてしまう。だから眠くなるんだと聞きました。

2013-03-05 00:46:38
江本伸悟 @shingoemoto

さも能楽に精通したかのような話し振りですが、実はまだ一度も観たことがなくて、今週末の土曜日に初めて観にいってきます。安田登さんと内田樹さんの対談もあって、今からすごく楽しみです。残念ながらもう満席なんですが。http://t.co/xdurjBXMaT

2013-03-05 00:50:15
江本伸悟 @shingoemoto

ところで神話の世界で、人間と動物が互いを真似るのに、毛皮を着たり脱いだりしているのが面白いですよね。互いの動きを真似るためには、まず服を似せて見た目を似せないとだめなんです。自然の中で人間と動物が交流するにあたってのファッションの重要性が見て取れますね。

2013-03-05 00:56:04
江本伸悟 @shingoemoto

ファッションってなんとなく「服」って日本語訳しちゃいそうですが、服はclothなんですよね。ファッションは「服装」であって、ここには「装い」という言葉が込められています。ファッションというのはただ服をつくることではなくて、服を通じて装いをつくることなんです。

2013-03-05 00:57:50