【novel】刹那の恋

ツイノベ第二弾。
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雪乃 兎 @usagi_AS

TN110901)ぽっかりと空いた心の穴に戸惑いを感じて。ただ、あたしはあいつが笑う写真の前で立ち尽くしていた。「今日は来てくれてありがとうね。」そう言ったのはあいつのお母さん。 その姿は、いつ倒れてもおかしくないぐらいに弱々しかった。

2012-11-09 19:41:37
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110902)「これどうぞ。」「あ、ありがとうございます。」渡されたお茶から温もりが指に伝わる。だけど、どうしても心は冷え切ったままだった。あいつのお母さんと喋るべきなんだろうか。でも、話す話題も見つからない。温もりにすがるように湯のみを持つと、遠くから電話の音が聞こえた。

2012-11-09 19:42:25
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110903)「あ。ごめんなさいね。」スッとあいつのお母さんは立ち上がった。ゆっくりしていってね、と一言言って和室から出ていった。電話の音が途切れ、ボソボソとした声が聞こえる。和室には静寂が広がった。ほとんど飲まれていないお茶を近くの机におき、再びあいつの写真を見た。

2012-11-09 19:43:20
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110904)「ーー仲川…」自然とこぼれたあいつの名前にポタリと涙が落ちた。だけど、脳裏に浮かんだのは、あいつとのどうでもいい会話たち。休み時間、授業中、放課後。あいつは、いつでもあたしの隣の席で笑っていた。

2012-11-09 19:57:49
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110905)『なー。数学の宿題写させてー』『え!絶対ヤダ。』 『あの先生絶対ズラだよな。』『ちょっと!笑わせないでよ!』 どーでもいい会話。どーでもいい内容。だけど、それはいつも胸を温かくさせて。今ではすごく眩しく感じた。

2012-11-09 19:59:22
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110906)あいつにもう会えない。そう思うと、ストンと何かが心に落ちた。(あぁ、そうか。そうだったんだ。)ストンと落ちたものに憎しみを感じた。どうして今更。なんで今。気付くならもう少し前に。だけど、気付いてしまったことに見ぬフリも出来なければ。時間を戻すことも出来ないのだ。

2012-11-09 20:00:48
雪乃 兎 @usagi_AS

TN110907)「どう、して……。死んじゃったの?」嗚咽とともにもれた言葉に、すべての想いが胸に刺さった。 あたしは、あいつが好きなんだ。 もう届かない想いに、涙があふれた。

2012-11-09 20:02:00