Affair Story 『風』まとめ

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#twnovel 覗きこむ俺を出迎えたのは湯気だ。もわっとしたそれは俺の顔を襲い、顔を背けた俺の鼻先に『匂い』が来る。そこから鼻をつくのは、「くさ……っ」言いかけた言葉を無理やり押し込み睨むのは湯気の向こう。俺に湯気を送る『風』だ。「もう帰るぞ」火口の硫黄臭さは好きになれない。

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#twnovel 雨宿りしていると『雨』がやってきた。『雨』は俺の脇にある自転車を見て、眉尻を下げる。あ、これは自責の顔だ。俺は少し考え、自転車の荷台を叩く。「良かったら乗らないか？」「え？」「『風』とはよく乗ってるけど、お前とは乗ったことないなって思って。どう？」「……乗る」

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#twnovel 身体を押し返すほどの強い風を身に受け、俺はたたらを踏むように二歩下がる。眉をひそめて五歩前に戻り、再び三歩を戻り、「強すぎだろうお前」こぼす声は腹部を押してくる『風』に向けて。『風』はえへへと笑い、「だって身軽なんですもん！」その背中には珍しく『湿気』がいない。

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#twnovel 「近寄るな！」駆け寄ってきた『風』に俺は叫ぶ。なぜ、と。拒絶に顔を歪める『風』に、俺も眉を寄せる。「俺だって、お前を抱きたい。でも出来ないんだ」「どうして、です……？」「それは……」指さすのは『風』の背。「『湿気』が一緒だと暑いんだよ」問答無用でタックルされた。

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#twnovel 溜め息をつくと、『風』がきた。「どうかしました？」「ん、今夜は満月らしいんだけどさ」一緒に見上げる空には雲がかかっていて、月は見えない。「ちょっと失礼」え、と問う間もなく『風』が空へ昇って行き、「……強引だなぁ」穴を開けた雲のむこう、月を横に『風』が笑っていた。

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#twnovel 暑いね、と『君』が漏らしたので俺は外に出て『夏』と『湿気』を張り倒し、『風』の首根っこを掴んで『君』の元へ連れて行く。俺から受け取った『風』を抱いた『君』は涼しそうな笑顔を浮かべ、「ありがとね」「いやいや」頭を掻いて照れる俺は、『風』のジト目を意図的に無視する。

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#twnovel 暑い。そして、その原因は、「風がないからだよな」思い、腕を振るがその手にいつもの感触はない。あれ、と思って視線を下げれば、そこに確かに『風』は現れていたが、「……大丈夫か？」「そう見えますか？」ジト目を向けてくる『風』の背中に『湿気』が張り付いて邪魔をしていた。

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#twnovel 知らない場所だ。俺は見慣れぬ建物の群を口を開けて見上げ、息を漏らす。これから、どんな出会いが待っているのだろう。思い、視線を下ろせばそこでは『夏』がランニングしていて、『風』がその後を追いかけて、『湿気』が人に纏わりついている。……あれ？　普段と変わらなくね？

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#twnovel 起きて窓を開ければ、『風』と『匂い』が入り込んできた。何事だ、と眉をひそめれば『風』が『匂い』を差し出してくる。俺はその髪を梳いて嗅ぎ、「これは……」窓の外、隣家からは小さな音がする。朝食の準備だろう。ああ、と思い改めて二人を見れば期待の視線。「……作れってか」

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#twnovel 「喧嘩した？　誰と？」「『匂い』と……」「何で？」「それは……」「何だよ、言ってみろよ」「……私悪くないもん」「お前仲直りしたいんじゃないのかよ」「うぅ……」俺は溜息をつき、カップ麺にお湯を注ぐ。出てきた『匂い』を捕まえて座らせ、「ほら、気が済むまで話し合え」

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#twnovel 目を覚まして何か違和感があるなと思えば汗をかいていなかった。おお、と驚きをもって上体を起こそうとしたが、右腕に重みがある。何だろうと見れば、そこで寝ているのは『風』だった。『風』が寝息をたてる度に、涼しい風が当たる。道理で汗をかいていないわけだ。

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#twnovel パンツ一枚で寝転がっていると、『風』がやってきた。反応する気力もなく『風』を薄目で見ていると、『風』は人差し指を伸ばして俺をつつき始めた。鬱陶しい。しかし涼しくはあるので放っていると、「ダレてますね」「ん？　一緒に寝るか？」「寝ません！」どこかに行ってしまった。

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#twnovel 家の扉を開けると、むわっとした熱気が襲ってきた。あつ、と嫌気を覚えながら足を踏み入れれば、『湿気』が背中におぶさってくる。俺は引きずり、窓をあけ、外を漂う『風』を手招き。背中の『湿気』の首を掴んで引き離し、「これ、よろしく頼む」少しは居心地が良くなったかな。

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#twnovel 暑いな、と思い窓を開ければ、すぐさま飛んで入ってきたのは『風』と『匂い』だ。「な、何だよお前ら？」問いに、『風』が『匂い』の背中を押す。首を傾げながら髪を梳いて嗅げば、「ソース……？」耳を澄ませば太鼓の音。祭りだろう。視線を下ろすと、期待した目が四つ並んでいた。

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#twnovel 祭りに来てみれば、既に色んな奴がいた。『音』は太鼓の前で踊り、『風』は鉄板の前を走り回り、『夏』は神輿の上で筋トレしている。いや何やってんだあいつ。降ろすか、と思い足をあげるが、「あら」『君』がいた。その身は浴衣に包まれていて、俺は踊り出す『影』を踏んで抑える。

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#twnovel 外に出るとちょうど『風』がいた。にんまりと笑った俺の顔を見て逃げ出そうとする『風』を捕まえ抱え乗せるのは、自転車の荷台。「あの、何なんです？」「ん？　何ってお前、風があると自転車って楽しいじゃん？」「はぁ？」疑問の声を上げた『風』に笑いかけ、俺は脚に力を込めた。

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#twnovel 「最近の行動ですか？」首を傾げる『風』に、俺は頷く。『風』は数秒考え、「朝ラジオ体操行って、そのまま走りまわって、夜は貴方の所で寝るって感じですけど？　何か？」「いや、焼けたなと思って」『風』は一度自身の体を見て、「日中ずっと外ですもん」健康的な笑顔眩しかった。

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#twnovel 「ああもう！埒が明かない！『風』！一気にやっつけるわよ！」「は、はい！やりましょう！」せーの、と。掛け声と共に、激しい雨が風に乗り『台風』を襲う。『台風』は全身にそれを浴び、「わはは心地いいなぁ！　もっと！　もっとおくれ！」「「いやああ！！」」……家に入ろう。

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#twnovel その顔を見た途端、『風』と『雨』が全力で逃げ出した。しかし遅かった。二人は腕を掴まれ、引かれ、グルグルと。二人を掴んで回る『台風』は笑顔で、「わはは久しぶりだなぁ！」「い、いや！　離しなさい！」「うわああああん！」あー、このロリコンは早めにどうかせんといかんな。

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#twnovel 空の一点を見るのは『風』と『雨』だ。「何してんだ？」「備えてるのです」「何に」「あいつに決まってるでしょ」分からない。俺が首を傾げたとき、後ろで何かが降り立つような音がした。振り返ればひげ面のおっさん。おっさんは笑い、「会いたかったぞー！」『台風』が暴れ出した。

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#twnovel 「近寄るな」俺の言葉に、え、という表情が返ってくる。何故、と問うその顔に、俺は首を振って視線をそらす。「最近さ、急に気温が下がったと思わないか？　だからさ、その……」ふ、と自嘲するように笑い、俺は視線を真っ向から受け、「寒いんだ、お前」『風』の拳が腹に入った。

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#twnovel 外を歩いていると、横を『風』が駆け抜けて行く。その後を追うようにてくてくと歩いているのは『匂い』だ。俺は何だろうかと『匂い』の髪を梳き、嗅ぐ。「ああ、こりゃアレだな。夏の匂いだ」頭を撫でてやっていると、何処からか『夏』が現れ、「呼んだかい！？」汗臭さが混じった。

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#twnovel 俺は涼しさを得ながらも眉を寄せる。原因は膝の上にいる存在。俺は苦笑でなあ、と。「そろそろ機嫌直さない？」問うと、む、とした顔が振り返る。「そんなにクーラーお好きですか？」上目遣いの『風』に、俺はうーんと唸り、「ぶっちゃけ好きだな」『風』の頭が俺の顎を打ち上げた。

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#twnovel 「なあ」声をかけると、膝に座っている『風』が首だけで振り返る。「何です？」「非常に言いにくい事なんだけどさ」「何ですか。言ってくださいよ」「あー、何かさ、さっきから温い風しか来なくてむしろ暑いから、離れてくれない？」「膝に乗せたのは貴方でしょう！？」殴られた。

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#twnovel 部屋の中が暑い。俺は明けた窓の前まで歩いて行き、「クーラー付けるかなぁ」閉めようとすると、『風』が入ってきた。『風』は犬のように床にすわり、こちらを睨み上げてくる。「えっと、あー……」俺は窓から手を放し溜息を一つ。「今日は扇風機にするか」『風』が笑顔に変わる。