14 【近未来竹取伝説 KAGU-YA】

文豪はっしーの作品その2
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はしし @hashishi_

書くます RT @Melissa_1207: @hashishi_ 「近未来竹取伝説 KAGU-YA」

2012-11-10 22:00:42
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】僕は呆然と立ち尽くしていた。何が起こってるんだろう、ただそう思って目の前の光景を見ていた。光に包まれた竹の中から...女の子...だなんて...ーーー西暦2076年。荒廃した世界に、僕達は生きていた。

2012-11-10 22:01:11
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】世界資源戦争が終結して50年の月日が経ったこの土地では、死んだ土と廃墟の中で人々が暮らしていた。戦火で茶灰色に崩れた土地の所々に「神土」と呼ばれる巨大なドームの中で森林が美しく守られていて、生活の糧となっていた。僕は神土警備隊として雇われていた。

2012-11-10 22:04:21
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】月が照らす静かな夜。神土には身体の何倍も太い木々がひしめいている。巨大樹木は資源戦争の引き金となった天才・南郷茂博士の研究に原因があるらしいけど、詳細な記録は残されていなかった。ある日僕は神土の中で不思議な光景に出くわした。竹が…淡く光ってる…!

2012-11-10 22:12:48
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】突然痛い程の閃光を放って、激しい冷気と衝撃が辺りを襲った。やがて光がやみ静けさを取り戻したとき薄目を開けると…中から見たことのない服装の女の子が出てきた。僕らの民族が着ているような装束じゃない、白いワンピースに緑のブレスレット。寒さに震えていた。

2012-11-10 22:15:54
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】センサーが異常を察知し、警報が鳴り響いた。ヤバイ!「何だか分かんないけど行こう!」僕は女の子の手を引き走り出した。ここにいたら捕まる!後先考えている暇はなかった。ひたすら神土の出口へ向かって走った。とにかく隠れ家へ行こう、この格好は目立ちすぎる。

2012-11-10 22:19:47
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】隠れ家で装束に着替えた女の子が言った。「助けてくれてありがとう。私はかぐや。この世界は一体…」「僕からも聞きたい事が沢山あるんだ」「その話、我々も混ぜて貰おうか」追っ手だ!バレていたのか…!「ずっとその娘をを探していた…まさか生きていたとはな」

2012-11-10 22:26:15
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「その姿のまま…この星にずっと隠れていたんだな!ブレスレットを渡せ!南郷かぐや!」南郷!?その姿?この星にって!?それにあのブレスレットが何だっていうんだ!「これは父の形見…渡す訳にはいきません!」50年前の戦争で亡くなった南郷博士の…娘!?

2012-11-10 22:32:11
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「ならばこうしよう。その少年はこれから神土破壊の罪で投獄される。しかしブレスレットを渡せば見なかった事にしようじゃないか」「私の整脈とブレスレットが一緒でなければ、KAGU-YAシステムは起動しません」「フン…ならば連行するまでだ」「待て!」

2012-11-10 22:36:03
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「KAGU-YAシステムだか何だか知らないけど…なら僕も連れて行け!」「計画に関わりのない者が首を突っ込むな」「もぅ彼は無関係ではありません」「ちっ…好きにしろ!」ーーー神土基地へ連行される途中のかぐやの話で、徐々に事の全貌が明らかになってきた。

2012-11-10 22:45:39
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】50年前…世界は枯渇する資源への対策として月の開発に乗り出した。月面にドームを築き森林を定着させる事に成功した。KAGU-YA計画とは月と地球の自然供給量を調整する為、月から神土をコントロールする技術。その総指揮を執っていたのがかぐやの父だった。

2012-11-10 22:51:51
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】しかし豊かな月面の資源で領土問題に発展し、戦争が始まった。南郷博士はKAGU-YA計画を司るシステムの制御コードを組み込んだブレスレットと共にかぐやの身体を安全な神土の中に隠したんだ。仮死状態で生命を維持する装置を、巨木の竹に組み込んで…!

2012-11-10 22:55:54
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「父は自分の命の終わりを悟って、私の存在を世界から欺くと同時に未来を託したんです。」「…」「私はもともと月で生まれたルナリアン。50年経ってどんな風になってるか分からないけど、私、月に帰ります。私が地球にいたら、また争いが起こってしまう。」

2012-11-10 23:00:38
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】神土基地に着いて、僕達は軍部上層へ通された。かぐやはブレスレットと共に月へ帰る交渉を飲んだ。「少年一人の命の為に未来を売るか…賢い選択だ、南郷かぐや」「後悔はありません」このままでいい訳がない…「せめて見届けさせてくれ、僕も一緒に月へ行く!」

2012-11-10 23:13:04
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】あのかぐやとの出会いから、どれくらいの日々を宇宙船の中で過ごしただろうか。僕らは世界の命運を握ったまま、巨木の生い茂る神土で埋め尽くされた月へ、ついに到達した。「降りろ。シェルターの中枢へ向かう。ブレスレットは持っているな」「ええ」

2012-11-10 23:30:08
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】僕らは巨大な黒いホールの中心にいた。「KAGU-YA Project」と書かれた光る銀盤が床から出てきた。「これからお前の父が残した偉大な計画の最後の行程が行われる。地上の人類は我らの神土に対する意識を変える。さぁ、ブレスレットを接続するんだ」

2012-11-10 23:44:59
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】かぐやはブレスレットを手首に付けたまま、銀盤に接続した。床一面に埋め込まれた起動線が、銀盤を中心に光って広がっていく。「よし!いいぞ…動いたぞ!ついに!」「ひとつ、聞いておきたい事があります」「ハハハ、なんだ!金ならいくらでもくれてやる!」

2012-11-10 23:53:57
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「私の父が、何も考えずにブレスレットだけ託すとでも思ったの?」「何?何だと?」「かぐや…どういうこと?」「これから何が起こっても、冷静でいて。あなただけは生きてね」かぐやが銀盤に何かを打ち込んだ瞬間、床一面の銀の光が赤に変わり、轟音が響いた。

2012-11-11 00:01:06
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「何だ!何をした!」「KAGU-YAシステムの自己破壊プログラムを起動したの!あなた達の野望もここで終わりよ!」「なんて事しやがる!地球がどうなってもいいのか!」「地球は強い星なの!このシステムがなくなっても、再び繁栄を築くだけの素質がある!」

2012-11-11 00:03:53
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】激しい地鳴りと共にあちこちで爆音が轟いた。「待て!やめろ!落ち…落ちる!ああああああ」「かぐや!逃げよう!ここは危ない!」「言ったでしょ!貴方だけは生きて!」「そんな!」「私がここを離れたら、KAGU-YAシステムは制御を失って暴走してしまう!」

2012-11-11 00:10:55
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】「D72ポートに一つだけ緊急脱出用の宇宙船がある!地球に戻る最後の船よ!」「でも!それが出航したら地球と月はもぅ二度と…」「そのつもりで来たの!助けてくれてありがとう、さよなら!」「かぐや!どこへ行くんだ!かぐや!」くそっ!僕は泣きながら走った。

2012-11-11 00:14:30
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】情けなさにうちひしがれながら、僕は衛星圏を脱出した。遠くから眺める月は緑色で、所々で煙を上げていた。数奇な運命から人類の選択を背負って宇宙に取り残された少女は、最後まで泣かなかった。僕はまた、元の生活に戻っていった。

2012-11-11 00:18:50
はしし @hashishi_

【近未来竹取伝説 KAGU-YA】ー永く月日が過ぎた頃、地上はすっかり繁栄を取り戻していた。航空庁へ配属となった僕は、時々月面で緑が活動しているのを発見した。宇宙へ出る技術は失われてしまったけど、諦めない。月が、いつでも僕らを守ってくれているから。近未来竹取伝説KAGU-YA 終

2012-11-11 00:23:27