ニンジャスレイヤー×キングゲイナー 第一話 #2
(前回のあらすじ:シベリアにそびえ立つ灰色の都市ウルグスク・ドームポリス。ここではマッポーの香りを残しつつも、人々が奥ゆかしい反省の日々を送っていた。しかし、「長いと実際ダレる」というミヤモト・マサシのコトワザどおり、僻地に押し込められた人々の心は数万年の後、再び荒み始める。)
2012-11-14 20:49:28(世界規模の暗黒メガコーポ、シベリア横断バッファロー殺戮鉄道によって逮捕されたゲイナー・サンガ少年も、その荒みに巻き込まれた一人である。彼はゲームチャンプであり、ゲームチャンプでしか無かった。だが、そんな彼も身に覚えのない実際死刑な罪で投獄されたのだ。)
2012-11-14 20:51:20(マッポーの世は終わったはず、人類がその手で終わらせたのだ。だのにブッダは何故目覚めない?やはりブッダはゲイのサディストなのか?だが、ブッダはゲイナーのあずかり知らぬ近くて遠い場所で目覚めていた。エクソダス。……備えよう。)
2012-11-14 20:53:35(お知らせ:ハッシュタグについては #kingslyr を推奨しています。なお、今回以降についてもtogetterに纏めるので、本作に興味が無い人にも実際安心だ。)
2012-11-14 20:59:14「アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」ブリザードを受ければ即死しかねないほど露出度の高いオイラン衣装を着て安酒で顔を赤らめた少女が教室で叫ぶ。シベ鉄に生徒が連行される事自体はチャメシ・インシデントであるので、ゲイナーが連れ去られた後も授業はそのまま続行された。 1
2012-11-14 21:05:50「学校から祭りの支度していくことないよなぁ?」その様子を遠目で見ていたベローが言う。「賑やかさ重点なんでしょ。」サラが通信機の調整をしながら答える。「デスカネー。」彼らは「スクールカースト」で言えばジョックやクイーン・ビーに相当する立ち位置にいる生徒である。 2
2012-11-14 21:10:27「スクールカースト」は大変動以前の文化であるが、現在でもその制度は無視できない規模で存在している。例えば最上位層であるサラに、ナードやギークでしかないゲイナーが話しかけようものなら、ゲイナーは後でジョック達に囲んで棒で叩かれ、状況によってはムラハチ、及び退学までありうる。 3
2012-11-14 21:14:05だがジョックとは言うものの彼らはスポーツやチアマイコを主としてやっているわけではない。彼らがやっているのは実際シベ鉄への嫌がらせである。彼らはシベ鉄へテロリズムめいた非合法行為を行い、生徒や教師達のシベ鉄への日頃の鬱憤を晴らすことで尊敬を集めているのだ。 4
2012-11-14 21:18:09「ユニットのエンジンは、みんないいの?」作業を終えたサラがベローに聞く。「あ、禁断の地下のショウジ戸を開けたら、シルエットエンジンだった!なんてね。」ユニットはウルグスクの人々が居住用に使っている巨大な構造物のことである。それを動かそうとしているのだ、なんたるテロリズム! 5
2012-11-14 21:21:41彼らが白昼堂々物騒な話をしていても告げ口する者は誰もいない。学校にはシベ鉄関係者を親類縁者に持つ者もいるが彼らですらしないだろう。それほどまでにシベリア横断バッファロー殺戮鉄道は嫌われているのだ。「それは言わないの。」お喋りで口を滑らせかねないベローの口にサラが釘を差した。 6
2012-11-14 21:25:28ゲイナーの牢へ牢番が新たな囚人と共にスシを運んできた。「均等重点だぞ。」スシの数は囚人の数では割り切れない、分配担当の囚人はどう分割しようか難儀している。「私も食べます。」「アイエ!?」驚くのも無理はない。先程まで死体めいて全く動かなかった新入りが話しかけてきたのだ。 9
2012-11-14 21:34:06だが、驚いてばかりもいられない、人数が増えたせいで今までの計算はゴハサンになった。既に千切ったスシを含めて計算し直さなければならない。囚人は頭を抱えた。「ブッダ…」ゲイナーが呟く。「僕はいつ出られるんですか?」「知らねぇなぁ。」 10
2012-11-14 21:38:21当然である。彼はメダイユ公爵家の牢番であって、シベ鉄の人間ではない。しかも本来彼は今日非番であったのにシベ鉄がザシキ・ダンジョンを借りたせいで緊急出勤と相成ったのだ。彼の目は囚人達と同じく暗い。知っていても教えないだろう。「アイエエエ…」ゲイナーは悲鳴を呟いた。 11
2012-11-14 21:42:54ゲイナーはスシをゆっくり食べながら今の状況を整理していた。エクソダス容疑については全く身に覚えがない。それどころか両親が「エクソダス反対」のビラを握らされて殺されたあの日以来、ゲイナーはエクソダスが嫌いなのだ。(たぶんベロー辺りのジョックと間違えられたんだろうな…) 13
2012-11-14 21:46:48(もし今日サラ=サンとフェスティバルに行く約束をしていたら…)ゲイナーの思考が妄想へとシフトする。(こんな牢屋ぶち破ってサラ=サンとの約束を守りに行ってただろうな…)ゲイナーは何となく虚しくなった。ふと、足元に転がる新しく入った囚人を見やる。かなり強そうな男だ。 14
2012-11-14 21:51:18「アノ…、あなたのスシ預かってます。食べますか?」「アッハイ。」男は地に伏せたまま返事をした。ちょうどその時、別の囚人が牢に入れられようとしていた。「アイエ!?」 15
2012-11-14 21:55:32「アイエ!?」「アイエエエ!?」囚人達が騒ぐ。「カラテ!?」ゲイナーは男の見事な格闘術に驚いていた。先程とは打って変わって牢番が地に倒れ伏している。「俺は出て行くが…、来るかい?」「アイエエエ…」囚人たちはまだ事態を上手く飲み込めていない。 17
2012-11-14 22:00:04男はそれに構わず言葉を続ける。「シベリア鉄道に、警察権は実際無い。冬至の祭りも始まり、ミイヤの踊りだって始まる頃だ。」「!?」ゲイナーは心の中で怒りが湧き上がるのを感じた。ただえさえ理不尽であると思っていたことが、さらに理不尽であることを知ってしまったからだ。 18
2012-11-14 22:05:31「不平不満はあっても、自分からは何もしない、ナンデ?……ン?いいのかい?」ゲイナーは立ち上がった。「僕、ここにいる人間じゃないですから。」だが、特に考えなど無い、ヤバレカバレだ。「ドーモ、ゲインです。」「ドーモ、ゲイン=サン。ゲイナー・サンガです。」互いにオジギを決める。 19
2012-11-14 22:09:01