酒精ホモ

池の主の水蛇×酒の精霊
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空間 @nyannyannyanno

酒精が夜空を飛んでいると、大きな酒樽が湖のほとりに置かれているのを見つけました。酒樽がどうしてこんなところに。不思議に中を窺うと、少女の泣き声が聞こえます。しくしく。ざばり。大きな水蛇が姿を現しました。ぬし、それはわれの馳走ぞ。とく去れ。そう、少女は湖の主へのお供え物なのです。

2012-11-13 19:44:29
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酒精はなんだかむかむかしてきました。お酒は神さまが召し上がるもので、酒樽もまた神聖な器です。それなのに人間の少女を酒に見立てて奉納するだなんて。そして水蛇は神さまとしてはまだ若輩のようでしたが、仮にも神の末席に座するものでありながらなんて品のない振る舞いでしょう。

2012-11-13 19:50:26
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酒精は水蛇に申し出ました。この少女は村にお返しなさい。代わりにわたしがこの酒樽いっぱいの神酒をあなたに奉じましょう。水蛇は答えます。この酒樽いっぱいの神酒というたな。わかった。ただし並みの酒ではゆるさん。われにふさわしい酒を奉じよ。酒精はうなずいて答えます。あいわかった。

2012-11-13 19:56:03
空間 @nyannyannyanno

月の光よ、夜の空よ、瞬く星よ、御力を賜りたく。数多の神よ、無数の夜露よ、流浪の風よ、御力を賜りたく。酒精が祈ります。するとどうでしょう、酒樽から光り輝くような美酒が湧き出しました。樽の外に出された少女はその美しさに見とれます。水蛇も樽から溢れ出る神酒に、我を忘れて口付けました。

2012-11-13 20:18:14
空間 @nyannyannyanno

水蛇が喉をならして神酒を飲むと、なんと体が崩れはじめました。うろこがばらばらと振り落ちて、こうべを支えられない体が土の上に崩れ落ちました。酒精が全ての力を持って作り上げた御酒はあまりにも神々しく、邪なところのある水蛇はその清廉さにたえられなかったのです。

2012-11-13 20:23:16
空間 @nyannyannyanno

地の端から朝陽が漏れ出てきています。その光に透けるように、酒精の体も空に溶けていきます。酒精はほんとうにすべての力を使い果たしてしまったのです。でも悔いはありません。酒精は酒精の誇りのために務めを果たしたのですから。なんとも満ち満ちた気持ちとともに酒精は消えていきました。

2012-11-13 20:29:51
空間 @nyannyannyanno

あとに残されたのは生け贄だった少女ひとり。はっとまだ酒樽になみなみと満ちる神酒に気づきます。酒精も水蛇も、だれもここにはいません。少女は盗みのもうか迷います。しかしふらりと立ち上がり歩き去っていきました。無知な少女でもこれだけはわかります。あのお酒は神さまが召し上がるものだと。

2012-11-13 20:39:00
空間 @nyannyannyanno

酒精が空を飛んでいると池の畔に大きな酒樽が目に入った。畔に下り立ち見るとどうやら人間の娘が入っているようだ。さめざめ泣く声を聴いていると、ざばりと池の主が現れた。人間たちが貢物として置いて行ったが、自分は食人はせず、もらっても困る。そうぼやくと酒樽の蓋を開け娘を逃がしてやった。

2012-11-21 15:03:39
空間 @nyannyannyanno

ならば私が酒をこしらえてやろうか。ここで出会ったのも何かの縁だ。空になった酒樽の前に突っ立っている池の主の水蛇に訊くと少し驚いた様子で頷いた。重ねて問いかける。酒はいける口かと。すると水蛇はくしゃりと笑い答える。蟒蛇に対して何て問いだ。是が非とも酒精殿にお願いしたく。

2012-11-21 22:37:42
空間 @nyannyannyanno

水蛇の高慢な申し出に酒精は答える。自分が酒をこしらえるためには澄んだ水がいる。水蛇はこれに鼻を鳴らして、俺を何者だと思っているのだ。見ろ、この池の水の澄んだことを。これ程清浄で力ある水はこの辺りではあるまい。これに酒精は眉を上げて笑う。馬鹿を申せ。

2012-11-24 17:37:44
空間 @nyannyannyanno

水神討伐の依頼があった。冗談じゃない。散々拒否したが、お茶出しに来た火の精が承ると言ってしまった。黄赤の目をらんらんと輝かせながら。(中略)水神の傍にいた精霊を瓢箪の中に閉じ込めた。花のような香気が漂う。水蛇と酒精なんて変わった組み合わせだ。水蛇が目を見開いてこちらを見た。

2012-11-26 14:16:06