小説における顔の造形と表情の描写

その必要性と方法について作家@toriyamazine氏が解説する <関連まとめ> 「娯楽小説の書き方」 http://togetter.com/li/457782 「文章が上手くなるためにすべきこと」 http://togetter.com/li/159754 続きを読む
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鳥山仁 @toriyamazine

【小説と顔&表情】(1)知人にアドバイスを求められたので軽く概要を。まず、小説における顔の造形、及びに表情の描写だが、前者は情景描写に、後者は行動描写に分類できる。ただし、前者を描写しない作家は後者も描写しない傾向が顕著にある。日本の小説家の場合……

2012-11-24 08:37:51
鳥山仁 @toriyamazine

(2)……人称省略と顔や表情の描写省略にも比例の関係が見られ、人称を省略した文章を書く作家の中には、最後まで登場人物の顔のイメージがはっきりしない作品が結構ある。しかし、描写をしないのが下手とか悪いかという決してそうではなく、ライトノベルやノベルゲームなどの……

2012-11-24 08:38:16
鳥山仁 @toriyamazine

(3)……イラスト・映像、場合によってはサウンドが重要な表現的役割を担う場合は、顔の造形描写は省略した方が全体の文章量が減るので読みやすくなる、イラストと文章の祖語が発生しづらいというメリットがある。特に前者のメリットは、一般的な小説にも当てはまる。

2012-11-24 08:38:44
鳥山仁 @toriyamazine

(4)続いて顔の造形描写に関してだが、A.特徴的な部分をデフォルメして表現する B.比喩表現を用いてイメージを伝える C.文字で正確に描写の3種類があるが、最後のC.を実行している小説家はほとんどいないし、そもそも読者が読むのを面倒くさがるので文章の無駄になる可能性が高い。

2012-11-24 08:39:03
鳥山仁 @toriyamazine

(5)従って、顔の造形を描写すると言っても、実質的にA.とB.の2種類に、前述した「書かない」をD.として合計3パターンがあると認識しておけば十分である。まず、A.特徴的な部分をデフォルメして表現するだが、「目が大きい」「鼻が大きい」「耳が大きい」「首が太い」「髪が長い」など……

2012-11-24 08:39:35
鳥山仁 @toriyamazine

(6)……目立つ部分のみを書いて、他のキャラクターとの差別化を図る方法が最も楽でなおかつ確実である。ただし、ライトノベルなどのいわゆる漫画系のイラストが付く場合は、そもそもの絵に「鼻が記号として省略されている」場合があるため、絵と祖語を起こすケースがある。

2012-11-24 08:39:53
鳥山仁 @toriyamazine

(7)こうなると、むしろ顔の特徴を書かない方が良いので、「毛髪の色、長さ、形状」が記述されているだけなどに、作家側が制限を設ける場合もある(特に女性の顔の描写)。次にB.比喩表現だが、「猫のような目」「イタチのような鼻」「蛙のような面」のように……

2012-11-24 08:40:14
鳥山仁 @toriyamazine

(8)……動物を想起させる直喩が最も楽でなおかつ確実性がある。ただし、これも前述したイラストとの祖語を引き起こすケースがあるので、「比喩表現は男性のキャラクターに限定する」などの制限を作家側が設ける場合もある。

2012-11-24 08:40:39
鳥山仁 @toriyamazine

(9)次に表情の描写だが、前述したように顔の造形描写を省略する作家は、表情変化の描写も省略するケースがある。例外も存在するが極少数に留まる。例えば、Aという登場人物が苦痛を感じた時に、1.〝Aは苦痛を感じた〟と書くか、2.〝Aは痛がった〟と書くか……

2012-11-24 08:42:18
鳥山仁 @toriyamazine

(10)……3.〝Aは「痛い!」と叫んでうずくまった〟と書くか、4.〝臑をしたたかに打ったAは、思い切り顔をしかめて手を振った〟と書くかという違いに現れる。一般的に省略形で書く作家は1.か2.を選択するケースが多く、3.が書ければ上等、4.を書くことはほとんど無い。

2012-11-24 08:42:43
鳥山仁 @toriyamazine

(11)では、表情描写をせずにどうやって感情を表現するかというと、主に内心描写か喜怒哀楽を表現する抽象表現や動詞で代用する。たとえば、1.〝Aは泣いていた〟や、2.〝Aは怒っているように見えた〟と書いておけば顔の表情を含めた細部を描写する必要性はない。

2012-11-24 08:43:30
鳥山仁 @toriyamazine

(12)以上のように、表情の描写は必ずしも小説を書く上で必須の技術ではない。また、文章表現はスポーツのテクニックと同様に、反復練習によって身につくものなので、ある日を境に劇的に描写力が上昇するケースもほとんど無い。無理をして文章が書けなくなるよりも……

2012-11-24 08:43:51
鳥山仁 @toriyamazine

(13)……自分ができる範囲で書いた方が良い結果が出る=小説を最後まで書ききる可能性が高い。より重要なのは「自分が使えるテクニックの範囲内」で話を書くことである。ただし、高いテクニックがあれば容易に差別化を図れるのも事実だ。表情との絡みでは〝視線〟描写が典型的で……

2012-11-24 08:44:12
鳥山仁 @toriyamazine

(14)……たとえば、1.〝ベッドに寝転んだAは、ぼんやりとした面持ちで天井を見た。→古くなった蛍光灯が、耳障りな音を立てながら瞬いていた。〟と書けば、登場人物Aの表情描写から、室内の情景描写に移行できるので、主語が登場人物Aの文書を連続して書く必要がなくなり……

2012-11-24 08:44:46
鳥山仁 @toriyamazine

(15)……結果として主語省略の文章を書く必要も減少する。主語省略は、〝Aは××をした〟という行動描写を続けて書くと幼稚な文章になるために、それを避ける目的で用いられるケースが圧倒的に多く……

2012-11-24 08:45:24
鳥山仁 @toriyamazine

(16)……これを主語省略以外の手法で回避するには、登場人物Aを主語としない文章を挟めば良いと言うことになる。その際に、Aが見た方向の情景を描写すれば、Aが主語の文章を連続して書くという幼稚な文章構成から脱却できる。

2012-11-24 08:46:01
鳥山仁 @toriyamazine

(17)……また、これとは違う方法に、表情描写から内心描写へと繋ぐ技法も使用できる。たとえば、2.〝ベッドに寝転んだAは、ぼんやりとした面持ちで天井を見た。→彼の脳裏にBがこちらに向かって指さしながら嘲笑っている様子が浮かんでは消えた〟と書けば……

2012-11-24 08:46:39
鳥山仁 @toriyamazine

(18)……表情から内心への〝繋ぎ〟がスムースになる。表情描写が書けないと、こうした繋ぎのテクニックが1つ減るので、それだけ全体の文章が単調になり易い。以上が顔の造形&表情描写と文章の関連性の概要である。他にも技術はあるが、説明が面倒臭いので省略する。

2012-11-24 08:46:59
CDEF665 @CDEF665

ライトノベルの新人賞で、キャラクターのイラストまでつけてくる猛者とか、逆に堂々と既存のキャラクターのイラストを無断転載してくる猛者とかいたりして。 http://t.co/tQ0fWLv2

2012-11-24 09:03:13
今野 @imano_I02

@toriyamazine 鳥山さんのアドバイス、細かくて感心しました。自分は外野の者ですが、それら考え方を取り込むことにします。

2012-11-24 09:00:17
鳥山仁 @toriyamazine

@imano_I02 いえいえ。お好きに取捨選択してご利用下さい。喫緊の課題になっている知人がいたので、とりあえず使えそうなテクニックを並べてみました。もっとも、慣れていない人は「使わない」という選択するのが一番無難ですが。

2012-11-24 09:13:41
電気屋 @thedenkiya

@toriyamazine ご存知のよーにやつがれは格段に具体的に書くタチ。単に好きだからってのと、読者によってイメージにブレないコトを望んでるからなんスけど、それって特段イイことでもないのよねェ。あいまいな部分は読者が「イイ」方向に補填するから。あいまいなほーが適応範囲増える。

2012-11-24 12:55:06
鳥山仁 @toriyamazine

@thedenkiya 詩的な文章が好きなタイプや、読み飛ばすタイプの読者さんは、むしろ細密描写を嫌がる傾向がありますね。読んでる最中に引っかかるのが原因の一つですが、逆に細密描写が好きな読者さんは詩的表現を「ポエマー(笑)」呼ばわりするのでトレードオフの関係だと思います。

2012-11-24 12:57:29
電気屋 @thedenkiya

@toriyamazine 濫読なんでスイッチできますが、やっぱ雰囲気だけよりキチっとしてるほーがいいっスね。ふんわり書く方だとときどき「あー、◯◯がワカらんじゃないか」って思っちゃうコト多いっスよ。むろん、好みの問題ですが。

2012-11-24 13:06:04
鳥山仁 @toriyamazine

@thedenkiya その辺は、読み手が普段「どこを見ているか?」にも関係するので、癖とか習慣によっても描写の比重が変わってきますよね。

2012-11-24 13:38:07