山本七平botまとめ/消費税には反対できても、産油国から科される石油消費税には逆らえない日本/~日本人が空気の如く当然としている「国際環境」を崩壊させかねないエネルギー問題~

山本七平著『「常識」の研究/「空気」のようなもの/207頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【「空気」のようなもの】おそらく、戦後の30余年、人びとが当然自明の如く、またある意味では空気の如く、存在するにきまっていると思っていたものの存在が、急にあやしげになってきた。<『「常識」の研究』

2012-12-05 02:57:39
山本七平bot @yamamoto7hei

②いわば核の傘を自覚せずに、その下で平和論をぶっていたところ、その傘がなくなって、何となく今までの威勢が消えたような現象が、社会のあらゆる面に表われてきた

2012-12-05 03:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

④いわばメジャーによる安定供給という傘の下での様々の論議は、それが消えれば、核の傘が消えたと同じような結果になって不思議ではない。 簡単にいえば全てが、酸欠になると急に空気が意識されるようなものであろう。この空気のような傘は以上の面だけではない。

2012-12-05 04:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

安保の傘、公海自由の原則という傘、自由航行の傘、外交官特権相互承認の傘、すべて空気の如く存在して当然のように思われているが、これまた決して空気ではない

2012-12-05 04:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥その意味でイランにおける事件、一国がある国の大使館そのものをジャックしてしまうといった象徴的事件は、将来のある種の状態の予兆と言えるであろう。

2012-12-05 05:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦また自由主義・資本主義の国では…独占禁止法的なものがあり、また独占・寡占に対する民衆と政府の監視は厳しいのが当然であった。 世界はしばしばメジャーを非難してきたが、この石油流通の傘がなくなった後は、今まで世界の歴史に現われた事がないようなエネルギーの超独占的状態が現出した。

2012-12-05 05:57:38
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そしてこの価格に関する限り、今までの経済理論も経済原則ももはや通用せず、政治的独占価格といえるものが平然と全世界に通用するようになってしまった。 しかし現在の日本では、それに対する非難の声をあげる勇気さえあるまい

2012-12-05 06:27:48
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨だがこの状態が次々と、他のあらゆる資源から国際秩序へと波及していかないという保証はどこにもない。 だが声をあげる勇気さえないのも無理はないと言うべきかも知れぬ。 国民は一般消費税に反対することはできるそれは相手が自分の政府だからにほかならない

2012-12-05 06:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

しかし石油消費税に等しいものをどれだけ高率に課されても、これに対しては何もできない。 そして少なくとも現在の日本においては、石油消費税は、換言すれば一般消費税である。 それも日本国政府が徴収した税なら何らかの形で国民に還元され、福祉も教育もこれで支えられる。

2012-12-05 07:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪しかし産油国から課された石油消費税は、一方的に収奪されるだけである。 そしてその収奪が日本に投資される。 そうなると企業の利潤も収奪され、それもまた日本の社会に還元されることはない。 そしてそれをコントロールする手段を、少なくとも現在は、我々は持っていないのが現実である。

2012-12-05 07:57:38
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫さらに、大使館ジャックに見られる従来の国際秩序の崩壊である。 だがこれは、中立を認めないという形ですでに過去のハイジャックに現われていた。

2012-12-05 08:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬ということは、過去の予兆が現実になったにすぎないということであり、それを基にして現代の事件も未来の予兆と考えれば、英米的な伝統的国際秩序ともいうべき公海自由の原則や自由航行の原則もどこまで保持できるかも疑問である。

2012-12-05 08:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭だが、この秩序の維持は日本にとってはまさに存亡にかかわる問題である。 現時点では人びとはこれをも空気のように意識していないが、これまた空気のように存在するのが当然の前提ではない

2012-12-05 09:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そしてこれらの国際環境の崩壊はその根元にエネルギー問題があり、これの解決がなければ解決は不可能だといえる。こういう状態の80年代はどうなるであろうか。勿論日本は冷静に対処すればエネルギー転換も省エネルギー技術革新も可能であり、この方に全力をあげ得れば問題は好転しうるであろう。

2012-12-05 09:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯だがこの技術は、テレビや車がはじめて出現したときのようなインパクトを社会に与えることはない。 というのはたとえばその電気の電源が石油火力であろうと原子力であろうと、電気を使うものには変化がないからである。

2012-12-05 10:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰したがってこれからの技術革新は少しも派手でなく、むしろ既存のものを維持していくための技術が主になるであろう。 と同時にそれは、現在の国際環境を維持するための技術にも通ずる。

2012-12-05 10:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑱いわば、技術革新が社会の革新とはならず、逆に出来あがった社会機構と国際環境を維持するという保守的方向に影響する。 だがしかし、それがまた、意図しなくても社会を変革させていくであろう。 80年代に現われるのは恐らくそのような現象であり、それにどう対処するかが政治の課題であろう。

2012-12-05 11:28:01