工房径ついのべ集 2011年11月

工房径（koubou-kei） @pleaseinuplease

#twnovel 目印をつけたの。駅前の雑踏でもあなたがわかるように。手編みのマフラーなんて、と馬鹿にしてた若いころ。この歳になって自分が作るとは思わなかった。私を見つけてそのマフラーに手をやり、微笑むあなた。今日の気温はきっと上昇する見込み。 #マフラーを愛したくなるコピー

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#twnovel 「血液型なんて知ってどうする。輸血でもしてくれんのか！　さっさと働け！」冷たい物言いでばっさり斬るのは私の同期。ご愁傷様。慌てて机に戻る後輩の娘に同情すれば、彼と目が合う。「ちなみにお前は何型だ！」「Aだけど？」「あ、そ」なぜそこで含み笑い？ #twnvday

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#twnovel 「痛っ」キスの後、彼女が小さく呻く。その唇にうっすら滲む、赤い血の筋。久しぶりの逢瀬に、つい夢中になって。「ごめん」そう言いながらもまた追いかける唇、今度は舐め取るように優しく。ああ、君の血潮ごと飲み込んで、僕も同じ血液型になるといい。 #twnvday

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#twnovel 「『実は自分は養子かも』って、母子手帳で血液型調べたりしなかった？」僕の彼女はそんな想像力に長けた女の子。なのに僕が愛してるって、ちっともわかってくれないんだ。ならば証明するまでさ。「だからって人前でキスは！」さあて、わかってくれたかな？　#twnvday

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#twnovel 私を好きと言って憚らない後輩君。何かにつけてアピールに必死。会社に献血車が来た日、彼は私の献血手帳を見て誇らしげに叫んだ。「やった、同じ！」「？」「先輩が怪我して『この中に同じ血液型の方いませんか！』ってとき、僕輸血できます！」うっ、やられた。 #twnvday

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#twnovel 学園祭。悪友の男に「ただでみてやる」と言われ訪ねた占いの館。「血液型と誕生日は」怪しいので全部嘘で返した。「近々彼氏ができるぞ」「ええっ、だけどそのプロフ全部嘘だよ？」「いい度胸だな」彼はにやりと余裕の笑み。「絶対できるさ。相手はこの俺だもん」 #twnvday

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#twnovel 劇的な婚約指輪の渡し方を考える。土に埋める？　苺タルトの中？　そうだ、石鹸の中に隠す小説があった。後日ヒントと共に捜索を始めたミステリ好きの彼女。石鹸を見つけたが滑って掴めない。床を走る石鹸。「あなたとの結婚は退屈しないわ」笑う彼女の指に光る、泡まみれの指輪。

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#twnovel その眩しい笑顔と名前しか知らない、隣の部署の君。合同の飲み会の帰り、偶然帰り道が一緒になって。何を訊けばいい？　誕生日？　血液型？　仄かな香水の香りにときめきながら、僕は極めて紳士を装う。美しい月夜、ドラキュラよろしく欲望の牙は伸びるけれど。 #twnvday

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#twnovel 家に帰ると届いていたAmazonの小包。あのころ君と聴いたレコードをまた買ってしまったんだ。Baby,君は僕の血液型まで変えてしまったの？　君の血がなければ生きられないように。Open sesami.レコードに針を落とし、君へ続く扉を開けよう。 #twnvday

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#twnovel 街角でふと流れてきたAlbert AylerのBye Bye Blackbird。無意味に傷つけあっていたあのころ。星座も血液型も、相性は最悪。だけどあなたといると本当の自分でいられた。On and on,あなたへの想いは延々と続いてく。 #twnvday

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#twnovel 君と再会したのは Astrud Gilbertoが流れるBEAMSの前。何も言えなくてただきれいになった君を見ていた。「もしよかったら、もう一度俺と」ふいについて出た本音に、彼女が指で示したOKのサイン。やっぱ、血液型なんてあてにならない。　#twnvday

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#twnovel 流星群が来るという凍てつくような冬の夜。パジャマに毛布を被り、温かいミルク片手にふたりで空を仰いだ。夢中になるあまり、マグカップも君の身体も冷え切って。温め合うなら、唇から。僕らは、夜のベッドで、ふたりだけの流星に乗る。 #夜更かししたくなるコピー

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#twnovel 私の部屋に来ない？　とっときのワインをあけるから。いつもきりきりしているあなたも螺子を緩めて、私と一緒に金平糖みたいな星を数えるの。もし今宵の月が満月でも、構わないわ。どうぞ心置きなく、狼男に変身なさって？　 #夜更かししたくなるコピー

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#twnovel 「タダ券もらった」と嘘ついて君を連れてきた遊園地。夕暮れの観覧車に誘っても、林檎飴を片手に君は「ええ？」といかにも気のない返事。眼下のイルミネーションがレースのように広がると、君は急に黙り込む。このゴンドラが上りきったら、奪ってもいい？　君の林檎味の唇を。

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#twnovel 外回りの帰り。奮発したホテルのランチビュッフェで、うっかりやの君が上司である僕のシャツにこぼしたラタトゥユ。慌てる君をそそのかし、真昼のホテルに部屋をとった。犬のようにうなだれる君に、お仕置きする気は、さらさらないさ。ただ、わかってよ、僕もいろいろ限界なんだ。

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#twnovel 冬が近づき、アイコンをクリスマスツリーにしたあなた。「イブの夜は君の家に行くからね」なんてツイッターで呟かれ、今からそわそわ、気もそぞろ。愛しい私のサンタクロース。OKという返事の代わりに、アイコンに靴下の絵をぶら下げた。 #アイコンを変えたくなるコピー

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#twnovel 深夜の浴室。シャワーを止めたら微かに響くラジオのジングル。さっき確かに消したはず。温まった身体が急激に冷める。バスローブの紐をしっかり結びドライヤーを掲げて扉を開けたら「ご挨拶だな、ってか熱烈歓迎？」１か月会えなかった彼がにやり。「もう！」悔し紛れに抱きついた。

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#twnovel 気になる上司に誘われたジャズ・バー。扉を開けた途端、喉を鳴らすようなウッドベースとドラムブラシの星の囁きのような音楽が。いつも鋭い鷹の目のようなあなたが、穏やかに目尻を緩ませ「座れよ」なんて笑うから。甘いカクテルの１口で、あなたのブラックホールに堕ちる予感。

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#twnovel 新婚旅行先は彼女の好きなウイーンに決めた。「フランツ・ヨーゼフ駅の近くのホテルにしよ」「フランツ・ヨーゼフ？」僕はカタカナに弱い。「知らないの？　皇后はかの有名なエリザベート」「は？」間抜け顔の僕に彼女のひと言。「新婚旅行やめる？」 #世界史を学びたくなるコピー

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#twnovel 気がつけば夕方の床の上。昨夜彼に想い人がいると聞き、溺れるほどワインを飲んだ。酔うと電話魔になる私、履歴を確認すれば最後の通話記録は彼。真っ青になっているとドアホンが。「誰？」「月よりの使者」ドアの陰から彼がにやり。「俺たち両思いなんだろ？　入れてくれねえの？」

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#twnovel 外出中にポケットベルが鳴ると公衆電話を探した。テレフォンカードを忘れて、10円玉の落ちるのが早いこと。今思えばよく遠距離恋愛が続いたな。今夫になったあなたの寝顔を、スマホで撮って待ち受けにする。 #使ったことあったら公式RT

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#twnovel あのころもあなたの瞳が怖かった。同窓会で私に向ける眼差しは強すぎて。帰り道忍び込んだ深夜のプール。「どうしたら俺を見る？　月をとれと言えばいつでもとると誓うのに」柵を越え身を躍らせて水面の月に飛び込むあなた。「馬鹿ね」びしょ濡れのままフェンス越しのキスをした。

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#twnovel 初霜の降りた朝。凛と咲く小菊に君の面影を見る。初めて会ったとき君は、川にゴミを投げた僕に激怒して、制服を翻し追いかけてきた。淀みない瞳は冴え冴えときれいで。真っ直ぐな君。タイムマシンであの時に乗り付けられたら、「君はそのろくでなしと恋をするよ」と教えてあげたい。