工房径ついのべ集 2011年11月

今になって2011年11月のついのべのまとめがないと気がつき、まとめました。(結局2012年11月分まででついのべ総数は620を超えておりますが、1000までの道は遠し。) ついのべの日は「血液型」という難しいお題でした。計68作。 #I_Miss_Youの意訳#月曜日を好きになるコピー の連作もやらかしておりますが、そのシリーズは連作ついのべ集1http://togetter.com/li/233952 にあります。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夕方の路地裏。気がつけば同僚の彼とバーの壁の間に挟まれて。「さっきの奴、誰」嫉妬でぎらつく瞳にめまいがする。こんな彼知らない。いつも仕事にひたむきで、私が熱い想いを寄せても届きっこないと思ってた。「あれは友達。疑うなら」「疑うなら?」言葉より先に落ちてきた唇。

2011-11-22 03:19:39
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#twnovel 真昼のホテル。レストランの客は皆優雅で、気後れしながら来るはずの夫を探した。「悪い」息を切らして席につく彼。「どうしたの、こんなところに呼び出して」仕事途中の背広姿、すらすら注文をする姿はなんだか別人。つい見とれるとにっこり笑って「今日はいい夫婦の日だろ?」

2011-11-22 18:21:38
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夕方の高架下。「飲むには早くない?」「いいだろ、明日休みだし」気のおけない同期の男と、馴染みの飲み屋に陣取った。彼とはいつもこんなスタンス、のはずだった。「俺さ、転勤決まったの」いつになく真剣な眼差しが痛い。「なあ、淋しい?」答えるよ、答えるからその手を離して。

2011-11-22 17:50:48
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#twnovel どれだけ繰り返せばいいのさ、君が好きだって。勝負をかけて無理矢理連れてきた夜景のきれいに見えるバー。何十回めの告白に、ついに彼女が切れた。「何の権利があって、私をこんな目に会わせるの! あなたのことで頭がいっぱい!」 #法律を学びたくなるコピー

2011-11-22 05:32:17
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#twnovel 霜の降りた朝、庭に出ていた彼女を見つけた。「おはよ、早いね」微笑んで振り返る君。紅葉は今が盛り。梅や銀杏は黄色、花水木や桜は紅。明け始めた空は薄紅から青へ移る。君を後ろから抱きしめて、体温ごとこの色をずっと留めたい、そのままで。 #絵を描きたくなるコピー

2011-11-23 06:38:40
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#twnovel 「クリスマスの予定は?」なんて、あなたに恋する私にきかないで。他の同僚には優しいのに、私には喧嘩腰。爪の先ほどの愛情もないくせに。デスクに向かうと肩をつつかれ、差し出された彼愛用の万年筆で書いたメモ。「24日空けとけよ?」そこにはレストランの名前と予約時間が。

2011-11-24 07:59:03
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#twnovel 今日は色々ついてなかった。発注ミス、上下関係の読み違い、ランチの売り切れ。だかだかとキーボードを叩く17時。ことんと音がして、机に置かれたチョコレート。「いらいらにはポリフェノールですよ?」君の笑顔のおまけもついて、俺、俄然上向き。 #チョコを愛したくなるコピー

2011-11-24 17:07:47
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#twnovel ブーツを買った。新しいダウンのコートも。うれしくなって、まだ早いかな、と思いつつその格好でデートへ出かけた。今日は快晴。案の定ちょっと暑くて「喉渇いた」と泣き言を言う私に彼が笑った。「俺の実家は雪国だから丁度いい。年末その格好で帰ろ」 #雪が待ち遠しくなるコピー

2011-11-25 05:59:26
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#twnovel 気がつけばあなたに捕らわれていた。妹のように慕って、いつも後をくっついて。いずれ溶けて行く、ジェラートのような憧憬。皆そう思っていたんだろう。でも今日で私は16。初めての香水をつけ思いの丈を打ち明ける。目を細めて微笑むあなた。「待ってたよ、君が大人になるのを」

2011-11-25 18:14:07
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#twnovel 夜通し彼と口論になり家を飛び出した。行く宛もなく、飛び込んだ早朝の映画館。上映していたのは、よりによって昔彼と見たコメディ。しばらくするとがら空きの館内で隣に男が座り始める。まさか。「おまえな、こんな映画見て泣いてんじゃねえよ」肩を抱く彼に猫のように擦り寄った。

2011-11-25 21:25:18
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#twnovel 「今夜の寒さは骨身に沁みるね」そんなの飲むための言い訳だと知りながらご相伴。琥珀色のアイリッシュウイスキーは森の香り。シェパーズパイを食べながら聴くヴァン・モリソン。ハネムーンで訪ねたアイルランドを懐かしむ夜。「あのころみたいに愛してる?」酔った振りして囁いた。

2011-11-26 14:23:47
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#twnovel 残業帰りのイブ。夜の廊下に立っていたのは同僚の彼。「遅かったね」なぜここに? 怪訝そうな私に「送るよ」と車のキーを差し出して。「今夜の予定は」「テレビ見るだけ」淋しい私の返事に安堵する彼。「食事行こ」「イブなのに?」 手を繋ぐと彼は答える。「イブだから」

2011-11-26 19:06:44
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#twnovel 営業の初仕事で致命的なミス。同行の上司は平謝り。ひとり佇む、夕方の橋の上。川面に映る夕日が涙で滲む。「よう、新米」泣きじゃくる肩を叩かれ、振り返れば件の上司。「気にすんな。お前のミスは俺のミス。済んだことだ。それよりメシ付き合えよ」これって惚れちゃうフラグでは。

2011-11-27 10:32:06
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#twnovel 初めて来た彼の部屋。珈琲カップがかたかた震えた。「落ち着けよ」手をとられれば彼がくれた指輪は少し緩くて、するりと彼の手に落ちる。「ほら、探せ」無情にも指輪はベッドに投げられて。私は犬か。慌てて追えばそのまま身体は倒される。指輪も吐息も、すべては夜のベッドの中に。

2011-11-28 18:35:10
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「もうお会いしないほうがいいわ」彼の腕(かいな)に抱かれながら身を捩る。「君を嫌いになれるわけがない」。所詮私はあなたの掌(たなごころ)の中。「情けをかけてくださらなくてもいいの」頑ななふたりは、愛してるとは言えなくて。 #日本語を愛したくなるコピー

2011-11-28 21:13:54
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel いつかこの目で鯨が泳ぐ姿を見たい、とあなたは言った。博物館の骨格標本なぞ朽ち果てたあばら屋で魂はないんだと。あなたの目に映るのはラピスラズリ色の青い海。ひとり旅立つのなら、私は私であなたを追おう。私の天球儀、その中心はあなた。 #片思いも悪くないと思えるコピー

2011-11-29 13:23:20
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 会社帰り駅まで歩く道すがら、気になる彼と一緒になった。「寒くなったよね」私はあなたといるから寒くないけど。「あったかいもの、食べたいなあ」まさか食事のお誘い? そんな思いを巡らせた瞬間、彼はにっこり笑って言った。「君、自炊する人?」 #料理したくなるコピー

2011-11-30 05:17:02
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「口開けて」素直に従う君の口に風邪薬のカプセルを放り込む。飲ませた水がこぼれ、鎖骨の窪みへと落ちた。君のそこに、赤紫の花を咲かせたい僕の欲望。「ゆっくりお休み」それはまるで自分をなだめる言葉。君の風邪が治ったときにすることを、今から数える不埒な僕を許して。

2011-11-30 19:00:39