茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第７９８回「自分でやろうとすると、心細いね」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第７９８回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ふりかえり系ツイート。

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じこ（１）昨日、東京芸術大学で、植田工（@onototo）が、授業をした。母校で教えるというのは感慨があったろう。聴きに行ったが、がんばっていた。その授業の前、ゆうなちゃんが展覧会をみにきてくださいというので、大浦食堂から絵画棟に行った。エレベーターが細くて、不思議だねあそこ。

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じこ（２）そしたら、それは、ゆうなちゃんが助教として見ている学生たちが、３年生から４年生に進級するときにある「進展」というものらしかった。ゆうなちゃんは、教え子の作品を見せたかったのだろう。回っていると、作者の学生たちがいて、真剣なまなざし。ぼくも、真剣に見た。

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じこ（３）そのうちのいくつかの作品は、昨日、写真とともにツイートしました。絵画棟の中で、彼らとその作品を見たときに私が感じていたのは、ある種の心細さだった。「芸術をやるために東京芸大に行く」「それはいいね、がんばって」と親戚にも励まされて入学した彼ら。夢は無限である。

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じこ（４）空想しているうちは無限大なのだが、現実に作品をつくり始めると、それは一つの物体に絡め取られてしまうのであり、見つかれば逃げ場もない。これが私の作品ですと、壁において、さらし者にされて、お前はこの程度かと、心ない批評者に言われても、どこにも隠れることができない。

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じこ（５）だから、ぼくは、いくつかのコンペで審査員をしているけど、なんとなく居心地が悪いんだろうと思う。本当は、自分がつくる側で、見つかれば逃げ場もない、そっちの方が命が輝いていると思う。実際、自分の描く絵なんて、サインする時にちょこちょことやるけど、線も構図もへなちょこだ。

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じこ（６）自分で立って、自分でつくって、見つかれば逃げ場もない、そんな感覚を持っている人がある一定の割合いるのは、いい社会だと思う。ツイッターを見ていると、見つかれば逃げ場もないという感覚がなく、ただ他人を批判して悦に入っているひとがたくさんいるが、なにかの気のせいだろう。

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じこ（７）日本の社会というものは、それぞれの現場で、見つかれば逃げ場もない、その心細さを実感しているサイレント・マジョリティで構成されていると信じたい。もちろん、公のことについて、冷静に分析し、未来の道を探るための議論は必要である。その際にも、自分が担うことの緊張感は必要である。

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じこ（８）昨日、東京芸大の絵画棟で、できるだけ多くの作品を見せて、学生たちを励ましたいというゆうなちゃんのやさしい心遣いを感じながら、かといって一つひとつの作品を足早に通り過ぎては申し訳なく、時間が迫ってきて、ぼく自身が見つかれば逃げ場もなくなって、いろいろなことを感じていた。

茂木健一郎 @kenichiromogi

じこ（９）ぼくは５０歳になってしまったけれども、孔子の『論語』によれば「天命を知る」年のようだ。天命がなんなのか、目がかすんで全く見えないけれども、少なくとも、自分自身が現場を引き受けて、見つかれば逃げ場もないそんな時間を、増やしていきたいと思う。絵画棟の青春よ、永遠なれ！

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第７９８回「自分でやろうとすると、心細いね」でした。