EARLのインフルエンザ講演ダイジェスト版

2012年11月~12月に数箇所でインフルエンザ講演を行いました.1時間講演のダイジェスト版です.
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⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】2009年のインフルエンザ死亡率は,国ごとの医療事情の背景などが極めて異なることを考慮すると,ノイラミニダーゼ阻害薬早期投与により死亡率が最も低かったと結論づけることはできないと考えられ,ノイラミニダーゼ阻害薬がどれだけ寄与したかは現時点では明確ではない

2012-12-08 20:25:22
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】ノイラミニダーゼ阻害薬の考える上で,①インフルエンザはほとんどの場合自然治癒する疾患であること,②ノイラミニダーゼ阻害薬の濫用による耐性ウイルス発生の懸念,③ハイリスク群では重症化する可能性がありノイラミニダーゼ阻害薬で死亡率や重症化率を減らす可能性があること

2012-12-08 20:29:09
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【講演会Rev】④ノイラミニダーゼ阻害薬を使用するとインフルエンザに対する抗体ができない(Respirology 2009;14:1173-9/Microbes Infect 2010;12:778-83),⑤発症から48時間以降の投与効果は乏しい,といった点を考慮する必要がある

2012-12-08 20:33:19
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】これらを考慮すると,ノイラミニダーゼ阻害薬の適応として,発症から48時間以内の小児・高齢者・ハイリスク群・妊婦を適応対象とし,健常成人では投与は基本的に不要,ただし希望時は患者と相談して決定,というやり方が考えられる

2012-12-08 20:36:19
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【講演会Rev】タミフル異常行動については2005年11月から報告があり,日本小児科学会がタミフルと異常行動の因果関係を否定する見解を発表したが,その後も異常行動による転落死などが相次いだため,2007年に厚生労働省がタミフルの10代への使用制限を発表している.

2012-12-08 20:51:06
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【講演会Rev】しかしながら,インフルエンザそのもので異常行動が起こることも分かっており,タミフルが原因で異常行動が生じたのかについては現時点では分かっていないというのが実情であり,重症化率・死亡率低下に寄与してきた可能性も考慮すると葬り去られる薬剤では決してない

2012-12-08 20:55:10
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【講演会Rev】近年,熱不安定性CPTⅡ遺伝子多型が発見され,特定の遺伝子変異を有する患者で高熱時にCPTⅡが失活し,血管内皮細胞傷害が生じ,脳神経系が傷害されることが分かっている(FEBS Lett 2005;579:2040-4/Hum Mut 2008;29:718-27)

2012-12-08 20:57:57
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【講演会Rev】2007年に厚生労働省研究班は後ろ向き解析を行った.タミフル服用群で異常行動を示したのは10%,非服用群で異常行動を示したのは22%であり,非服用群で異常行動発生率が多かった.後顧的解析という問題点もあり,タミフルと異常行動の因果関係は不明と結論付けられた

2012-12-08 21:01:14
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【講演会Rev】「タミフル服用後は異常行動が生じる可能性があるので注意を」という患者への説明は適切ではない.インフルエンザそのものでも異常行動が起こることは分かっており,服用有無関係なしに異常行動リスクを説明すべきであり,タミフル処方時のみ説明するという姿勢は改められるべきである

2012-12-08 21:04:46
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【講演会Rev】感染症において発熱と予後,解熱薬使用と予後の関連はいまだ不明確であり,インフルエンザにおいては報告はなされていない.感染症と発熱と予後を論じた報告はほとんどが集中治療領域からのものである.

2012-12-08 21:07:46
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【講演会Rev】「解熱すべきではない」の意見:解熱剤による副作用がある.また,発熱は免疫による自己防衛反応であり,解熱を行うことで自己防衛反応が阻害されてしまう.

2012-12-08 21:11:44
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【講演会Rev】「解熱すべき」の意見:一般的に発熱は死亡リスク増大の報告がある.発熱は患者の不快感増大,食欲低下,呼吸需要増大,心負荷,脱水をきたしうる.

2012-12-08 21:10:01
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【講演会Rev】発熱による免疫学的防御効果がどれだけ寄与しているかについてはエビデンスが皆無である.加えて,発熱によるベネフィット,熱不安定性CPTⅡ遺伝子多型の可能性など,リスクを総合的に考慮すると,解熱を行うことがbetterかもしれない

2012-12-08 21:14:04
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【講演会Rev】インフルエンザワクチンの効果についてはいまだに議論が続いているが,一定の結論が出つつある.極端なワクチン否定論者の意見は一部の論文の結論のみを見て全体に反映させているバイアスがかかっている可能性が高く,出版物を読む際は引用文献等に注意する必要がある

2012-12-08 21:17:14
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【講演会Rev】ワクチンは効果がないのか?2005年にSimonsenらはハイリスク群(主に高齢者)に対するインフルエンザワクチン接種は死亡率を低下せず効果がないとしている(AnIM 2005;165:265-72)

2012-12-08 21:19:23
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【講演会Rev】「インフルエンザワクチンは発症予防はできないが重症化予防はできる」ともよく言われるが,この表現は誤解のもとである.確かに100%の発症予防は達成できないが,それなりの発症予防効果はみられる.

2012-12-08 21:21:43
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【講演会Rev】体内でIgG抗体が誘導されれば重症化予防,気道粘膜防御におけるIgA抗体が誘導されれば発症予防となる.インフルエンザ不活化ワクチンはIgG抗体は誘導するがIgA抗体は誘導できないため発症予防ができない,とされていた.

2012-12-08 21:24:34
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【講演会Rev】しかし,インフルエンザ不活化ワクチン接種者は経鼻弱毒生ワクチン接種者よりも多くのIgAが産生されていたことが報告された(PLoS One 2008;3:e2975)インフルエンザ不活化ワクチンは発症予防効果をそれなりに有している

2012-12-08 21:27:11
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【講演会Rev】一方,9シーズンにおける65歳以上12621809名でバイアスを調整した解析を行ったところ全死亡リスクの低下は認められなかった.肺炎,インフルエンザによる死亡リスクはわずかながら低下した(ArIM 2012;172:484-91)高齢者のワクチン効果は不明確である

2012-12-08 21:29:55
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【講演会Rev】本邦では小児へは1960年代から学童集団接種が行われてきたが,1994年に中止となった.その結果,学級閉鎖日数,欠席率が有意に上昇し(CID 2011;53:130-6),集団接種が幼児の死亡率を低下させていたことも分かった(CID 2005;41:939-47)

2012-12-08 21:33:04
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【講演会Rev】学童集団接種中止後に高齢者の死亡率が増加したことが分かり(NEJM 2001;344:889-96),日米合同調査では高齢者のワクチン接種は死亡率を下げないが学童集団接種により高齢者の肺炎と死亡率は36%減少していた(PLoS One 2011;6:e26282)

2012-12-08 21:36:18
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【講演会Rev】このような,高齢者に対する直接的でない,他者がワクチンを接種することで高齢者のインフルエンザ感染・死亡を予防する間接的効果をindirect protectionと呼ぶ.これらの結果をもってインフルエンザワクチンの積極的接種に世界が舵を切るに至った.

2012-12-08 21:39:21
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【講演会Rev】タミフルを接触後48時間以内に予防内服した際の家族内発症防止効果は70-90%(MMWR 2008;57:1-60)小児病棟でインフルエンザ院内発症があった際,24時間以内に未発症者にタミフル予防内服を行うと100%予防(感染症学誌 2004;78:262-9)

2012-12-10 13:10:48
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【講演会Rev】2003-2011年の大学病院小児病棟において,予期せぬインフルエンザ院内発症において,接触後の予防投与で発症率を89%減じることができる(Shinjoh M, et al. Pediatr Infect Dis J 2012 May 25)

2012-12-10 13:13:26
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【講演会Rev】水,ヨード液(イソジンガーグル),対照群の3群で比較検討したうがい効果を見たRCT(Am J Prev Med 2005;29:302)では,水のうがいは上気道炎を有意に予防.ヨード液は予防効果なし(ヨードによる粘膜傷害と口腔内常在菌破壊のため無効になった)

2012-12-10 13:25:05