角を曲がる時に遠隔操作で爆発するのだろう。あの教会、遠目には十字架があるかどうかはっきりしないが、十中八九キリスト教系の教会だ。彼らは俺に自爆テロをさせようとしている。俺は逃げ出すしかない。しかし、教会を無視してもスイッチは押されるかもしれない。どうする……。
2012-10-25 21:01:44幸運にも道は緩やかな下り坂だった。運転手がいなくなっても、そのまま車は走っていくだろう。俺は時速30kmの車から飛び降りると、一目散に走り出した。教会の角を曲がった辺りで振り返ると、道を愚直に下っていく車が発火し、次の瞬間爆発炎上した。
2012-10-25 21:16:517日目―台湾編
港まで走った後、奴らが追ってきたらまずいので、何でもいいから船に乗ったら、フィリピン最大のルソン島に着きました。その後、夜も更けたせいか船が無くなったので、今は台湾まで泳いでいます。
2012-10-26 02:41:45台湾に向かって真っ直ぐに泳げている自信は無いのですが、たまに背泳ぎしては北極星の位置を確かめているので、少しずつ近づいてはいると思います。平時は平泳ぎです。
2012-10-26 03:04:17おはようございます。陸地が見えてきました。台湾本土だといいなあ。ここまでは体力消耗の少ない平泳ぎで来ましたが、クロールでラストスパートをかけます。
2012-10-26 09:43:38夜もすがら冷たい波に晒されて、ようやく気づいたことがある。カシミール地方で人民解放軍に拘束された時のことだ。俺は何故かチベットで釈放され、寺院に招かれた。今まではその訳を、中国政府が日中関係を配慮したからだと思っていた。
2012-10-26 10:14:08その翌朝に遂げられた、老師の焼身自殺。今までどうして気づかなかったのか。あれは政府に抗議するためではなく、俺の命と引き換えに差し出されたものだったのだ。チベット僧は殺生を禁じられており、自殺といえども例外ではない。しかし、誰かの命を救うためともなれば、その限りではないのだろう。
2012-10-26 10:20:08基隆港で日本行きの船を探してたんだけど、台湾から日本への旅客船って今ないのな。それでも日本の海域まで行くという漁船の噂を聞きつけたので、同船させてもらうことになりました。現在かなりの速さで北西に針路をとっています。
2012-10-26 14:57:13話は変わりますが、現在、船の切っ先は三日月状に波を割き、快調に本土を目指しています。左手には九州の街の灯が見え、そろそろ豊予海峡を抜けて瀬戸内海に入る模様です。
2012-10-26 22:27:208日目―旅の終わり
アフガニスタンから始まって、パキスタン、インド、チベット、ネパール、バングラデシュ、ベトナム、フィリピン、台湾と続いた旅も、とうとう終わりの時が近づいてきました。思い返せば、この一週間、本当に色んなことがありました。
2012-10-27 11:27:14アフガニスタンでゲリラに襲われた時、盾となってくれた通訳。身ぐるみを剥がされたものの、国境近くまで送ってくれたイスラマバードの親子。警戒線の抜け道を教えてくれたカシミールの少年。人民解放軍から解放し、自ら荼毘に付されたチベットの老師。
2012-10-27 11:31:22ヒマラヤで生死の境目をさ迷った時に命を救ってくれた町医者とその娘。バングラデシュからの船旅の途中、よき友人となってくれたベトナム人船長。流れ着いたフィリピンで、一時的にせよ庇ってくれた日系人青年。台湾漁船の尖閣上陸を阻止し、大阪まで送ってくれた海保。それから――
2012-10-27 11:36:06旅先で会ったすべての人々。Twitterで励ましてくれた友人たち。そして何より、この旅をともに支え、どんなに困難な状況にあっても、己の進むべき道と、道を切り開く知恵とを授けてくれた、Google MapとWikipediaに、心からの感謝を贈りたいと思います。本当にありがとう!
2012-10-27 11:42:06