5日目―インド洋編
ネパールからインドを挟んでバングラデシュに入りました。首都ダッカは人口1000万人を超える世界有数のメガシティらしいんですが、とにかく交通量が半端ないです。時間が押しているので、ここからは船で河を下ろうと思います。
2012-10-24 13:47:42ベンガル湾に出ました。ミャンマーは現在、民族衝突で危なっかしいので、そのまま航路でマレー半島を迂回、ベトナムはホーチミンを目指します。
2012-10-24 16:16:34バングラデシュで興味深かったものの一つにヒジュラーと呼ばれる人々の存在があった。彼ら(彼女ら)は一言で表すなら女装した男性(去勢していることも)なのだが、聖職についている場合もあれば、性職についている場合もあるという、性以外にも両面性を持った不思議な人々だ。
2012-10-24 19:14:58インドシナ半島に沿ってタイ湾を北上中に、大陸の遥か東、日本の知己から連絡が入り、27日に旧友たちと飲み交わす約束をしました。間に合わせるためにも旅路を急ぎます。
2012-10-25 01:36:09月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人なり。人生という流れの中で道を求め続ける者は、たとえ一カ所に留まっていようとも、これみな旅人なのだ。逆に求道心を持ち合わせず、ただ漫然と旅を続けるばかりでは、淀んでいるのと同じこと。と、パナマ船籍貨物船のベトナム人船長に言われました。
2012-10-25 02:06:01この船長、日本文化に傾倒していて、侘び寂びや禅問答が好きなそうです。何か一句詠んでよと頼まれたので「許銘傑(しゅう・みんちぇ)、郭泰源(かく・たいげん)に張誌家(ちゃん・ずーじゃ)」と以前西武に所属した台湾人投手の名前を並べ、「異国の地でも頑張ってる」という意味だよと教えました。
2012-10-25 02:30:036日目―南シナ海編
おはようございます。ベトナムはホーチミンに到着しました。森鴎外「舞姫」冒頭において、主人公・太田豊太郎が手記を書いている「セイゴンの港」とは、ここのことです。俺にとってのエリスを強いて挙げるとするならば、その場に留まろうとしたという意味で、チベットの……老師になるのだろうな……
2012-10-25 06:24:49辛いことを思い出したのが顔に出ていたらしく、ベトナム人船長に「シュウミンチェ、カクタイゲンにチャンズージャ」と声をかけられました。一瞬何のことやらと思ったけど、昨夜俺が教えた「異国の地でも頑張ってる」という意味の一句ですね。本気で信じるどころか暗記してしまうとは……。
2012-10-25 06:30:08彼の気持ちは嬉しいけど、本当の意味は教えないでおきます。その方が面白いから。船を降りる際には、お互いに日本語でありがとう、さようならと交わしました。これから日本行きの船を探します。
2012-10-25 06:34:08ホーチミンにたどり着いたのも束の間、新しい船に乗って出港しました。ここで言う「新しい」とはあくまでも「今までとは別の」という意味であり、船自体はかなり老朽化している模様。涙の煽りを受ける度に船体がギシギシと軋み、大きな岩にぶつかれば簡単に沈みそうです。
2012-10-25 07:46:08ちなみに華僑だと思っていた船長に「許銘傑、郭泰源に張誌家」と言ってみたら、「あんた日本人かい?ホークスってどんなチームだ?郭泰源が今度コーチとして行くんだろ?」とめちゃくちゃ食いついてきたので、彼は間違いなく台湾人ですね。
2012-10-25 08:17:07今けっこう派手に軋みました。本当に大丈夫なんだろうか? 船長は「オーライオーライ」言ってるけど、やっぱり不安なので、台湾に着いたら、また船を乗り換えようと思います。
2012-10-25 08:41:07―フィリピン編
南シナ海で難破して海に投げ出された後、目を覚ましたらどこかの砂浜に打ち上げられていました。とりあえず助かったことを喜びたいんですが、そうもいかない事情があって、端的に言うと武装集団に取り囲まれています。
2012-10-25 14:47:47なんとかコミュニケーションを図ってみると、日本人だとわかった途端に、取り囲んでいる内の一人が「俺は日系人だ。父さんのじいちゃんが日本兵だった」と言って、他の人間にも武装を解くように促してくれた。どうやら一時的には助かったみたいだ。
2012-10-25 14:54:14話を聞くところによると、ここはフィリピンのミンダナオ島で、彼らはモロ・イスラム解放戦線というらしいです。イスラム過激派といえばアフガニスタンで武装トラックに襲撃された苦い記憶が蘇るのですが、今回は日系人青年の厚志によって助けられる形となりました。
2012-10-25 15:04:03組織の何人かでミンダナオ島の中心都市ダバオまで連れて行ってくれるそうです。ただし、車の準備ができ次第、出発するのかと思いきや、夜になるまで待つとか。タイムリミットが迫ってるから急ぎたいんだけど、立場上逆らうことはできないな。
2012-10-25 15:25:21解放戦線の人らと車でダバオに向かっています。運転できるか?と聞かれたので免許は持ってないと答えると俺たちは途中までしか行けないから最後は少しだけ自分で運転しろと言われました。政府やアメリカ軍を敵に回してるといろいろ大変なんだろうな。
2012-10-25 19:38:45都市の中心部に近づいてきたところで、運転手も含めて男たちが降りた。この先の通りを真っ直ぐに進み、教会の角を曲がると、道なりに港が見えてくるという。俺は礼を言うと、車を発進させた。ゆっくりと、怪しまれない程度にスピードを抑えながら、荷台に積まれているものを想像する。おそらく爆弾だ。
2012-10-25 20:52:41