工房径ついのべ集 2012年12月、2013年1月、2月
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#twnovel 冬なら冬らしく。アラスカの氷山が織りなす青と白を、グラスに閉じ込めウイスキーを煽りたい。僕の与太話に君は笑って「私はココアの湯気をオーロラにして、マグカップで飲み干したい」立ち昇る白い吐息は、ふたりを包む空想の翼。つきあいのいい君と、僕は凍てつく冬空に遊ぶ。
2012-12-12 18:17:5912月14日はツイノベの日 【お題】「白紙」
#twnvday 苦しんで藻掻いて八つ当たりして。自分がつくづく嫌になり、恋人に別れを告げ家に帰った。ヘッドホンで音量を上げて聴くストーンズ。塗りつぶせ、真っ黒に。泣き疲れて窓を見れば、外は雪。白一色に染め上げられた世界に、初めの足跡をつけて、私の部屋に歩いてくる彼の姿が見えた。
2012-12-14 18:13:02☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
#twnovel 木枯らしの吹く頃、母の田舎から届く七味唐辛子。庭の小さな蜜柑を祖母がもぎ、粉にした皮を混ぜる手作りだ。その香りの清々しいこと。『この七味を入れた蕎麦を食べないと年は越せない』。差し出した七味に君は鼻を近づけて『ほんと、いい香り』。君の中に息づく僕の小さな故郷。
2012-12-14 19:16:30#twnovel 浪人時代、予備校帰りのクリスマス。問題集を詰め込んだ鞄が道端に積み上げたケーキ箱に当たって。ホールのケーキふたつ、弁償した上押しつけられた。潰れたケーキを胸が焼けるまで食べたホーリー・ナイト。「手伝ってあげたかった」そう言ってくれた君に、神よ、聖なる祝福を。
2012-12-25 18:11:36大晦日ツイノベ企画●参加方法「一人称は『ボク』指定。本文中に必ず一度は使う」+「テーマ『煩悩』(”煩悩”という文字は入ってなくてOK)」
#twnovel ああ、今年も終わってしまう。ずっと君を追いかけていたボクの1年。除夜の鐘と共にこの恋も消えてしまうのか。「いいかげんにして」ボクの愚痴を隣で聞いていた君は、怒り心頭。「人をその気にさせといて、あなたの気持ちは単なる煩悩?」ごーん。これはボクの胸の鐘の音。
2012-12-31 21:58:35☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1月14日 ツイノベの日 【お題】「大人」
#twnvday 画家の彼が私の肌色でカンバスを塗り込める間、何度も「あなたが好き」と繰り返した。「降り積もる雪と同じだ。美しい言葉も俺には重い」裸の私を前に子供扱いする彼が憎い。「こんな絵!」カンバスにナイフを振り上げると、そこには燃えさかる火花のような大人の女が私を見ていた。
2013-01-13 14:43:46#twnvday 「もう帰れないよ」なんてベタな台詞を吐いて、僕は大きくカーテンを開けた。窓の外は雪。幼なじみのあなたを手に入れたくて何とか家に呼んだ夜、天気も僕に味方して。「もう弟なんて言わせない」後ろから強く抱きしめると、僕の手に落ちる甘いため息。「悪い大人になったわね」
2013-01-15 08:42:54☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
#twnovel 待ち合わせのカフェに着いた君が、座るまでを見るのが好きだ。コートを脱いで、丁寧に椅子の背に掛けて。乱れた長い髪に手を差し入れ、衿口から引き出す仕草も艶めいて。ちらりと見える項に、ついついにやける口元。「何にする?」メニューを差し出す僕が注文したいのは、君だけど。
2013-01-31 16:12:47工房径さんには [ 片眼鏡 / 家具 / まつげ ] なんていかがでしょう。 shindanmaker.com/68407
#twnovel 「もう逃げられませんよ」なんて悪党の台詞を吐いて。あなたは片眼鏡を嵌めた慇懃な貴族のよう。アンティークな家具や食器に飽きて、私をコレクションにするつもり? 「子供みたいなことを言う」「大人ぶる人は嫌い」お願い、傷ついたふりで睫毛を伏せている間に、そっとキスして。
2013-02-11 21:28:24#twnovel 「友達なんて無理」何ガロンのガソリンを入れても動かなかった恋のエンジンは、君のひと言でスパークした。僕はなんて迂闊だったんだろう。君はずっと目印の小石を落としながら、先を歩いていたのに。今度は見失わないよ。君の頬を伝っていく涙の粒は、すべてこの唇で拾うから。
2013-02-12 11:08:24#twnovel 目の前を通り過ぎる学生みたいな黒いローファー。思い出すのはよくこんな靴を履いてたお堅い女。別れて何年にもなるのにどうして覚えているんだろ。手帳の色、好きだった映画、手首のほくろ。ローファーが戻ってきて俺の前に立つ。見れば女が、ほくろのある手首をひらひらさせて。
2013-02-13 20:49:501月14日 ツイノベの日【お題】「夫婦」
#twnvday 「おはよ。今日は何の日でしょう?」「さあな」。夫婦になって5年。最近はこんな会話で結婚記念日を思い出す始末。「ただいま。ほら」俺が渡した花束に顔を埋めて「覚えててくれたの!」にっこり笑う妻は確信犯。ああ、俺はいつだってお前の手のひらの上で踊らされているんだよ。
2013-02-14 12:49:08#twnvday 「なあ、お前からのチョコはねえの?」ネクタイを緩めながら、顔を覗き込むあなた。「会社の女の子からたくさんもらったでしょ」紙袋いっぱいのリボンの包みを指差すと、彼は露骨に顔を綻ばせて。「奥さんに妬かれるってのは悪い気分じゃないな。ところで、顔にチョコついてるぜ?」
2013-02-14 22:12:21☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
工房径さんには [ 空 / 水晶 / ティータイム ] なんていかがでしょう。 http://bit.ly/f5h6QP
#twnovel 水晶みたいに澄む君の瞳に溺れそうになって、空を仰ぐふりをした。ティータイムのテラス席、君が目の前に座っただけで、僕の心は散歩中の子犬よろしく落ち着かなくて。こっちが呼び出したのに、ごめん。お茶の飲みごろを伝える砂時計が落ち切ったとき、君への思いの丈を話すから。
2013-02-17 12:16:58工房径さんには [ ソーダ水 / 翡翠 / 鶴 ] なんていかがでしょう。 bit.ly/f5h6QP