(これから始まるのは「ニンジャスレイヤー」のテキストカラテ……いわゆる二次創作です。大体1時間ほど続く予定です。ニンジャスレイヤーがわからない、二次創作には興味が無い、という方は生暖かくスルーをお願いいたします)
2013-01-07 00:35:04ネオサイタマの夜に今日も重金属酸性雨が降り注ぐ。この重金属酸性雨と有害物質に汚染された大気から身を守る手段がなければ、大抵の人間は実際死ぬ。そのため、ネオサイタマの人々は編笠やトレンチコート、バイオ水牛皮ブーツなどで身を包み込んで外出しなければならない。1
2013-01-07 00:39:19エンガワ・ストリートを進む彼女もまた、その例に漏れない格好をしていた。夜中でも目立つ赤い薄汚れたコートに、光沢を失った赤いベレー帽。そして、口には白いマスク。その服装は有害物質から身を守る機動要塞めいていた。2
2013-01-07 00:41:53だがここはマッポーの地・ネオサイタマ。その中でも実際危険なエンガワ・ストリート。脅威は重金属酸性雨だけではない。おお、見よ! 彼女の後ろから、重低音のリズムとエンジン音に乗って、改造バイクのヘッドランプが近づいてくるではないか!3
2013-01-07 00:44:57ズズンズンズン、ブゥーンブゥーン。「ヘイヘイヘイ、ヘヘイヘーイ!」黄色いモヒカンの男が叫ぶ。「ヘイヘイヘイ、ヘヘイヘーイ!」青いモヒカンの男が叫ぶ。「ヘヘイヘ……グワーッ!」リズムを間違えた黒いモヒカンの男が、リーダーの赤いモヒカンの男に殴られる。4
2013-01-07 00:48:57この時TL上には閃乱カグラでニンジャがどうのズンビーだどうのジョックがどうのと、不穏な空気が流れていた
「リーダー、リーダー! 前に誰がいるよ!」蛇行しながらノロノロと先頭を走る、白いモヒカンの男が言った。「男か?」「ノゥ!」「オイランか?」「ノゥ!」「よし、ならファック&サヨナラだ!」ナムサン! なんとも短絡的かつ邪悪な思考! しかしこれがネオサイタマのヨタモノの日常なのだ!5
2013-01-07 00:53:15ドルルルル!違法改造バイクが喧しい排気音を上げ、赤いコートの女性を囲む。一瞬にして彼女はネズミ袋となった。行く手を遮られた彼女は足を止める。「アー……」6
2013-01-07 00:57:06「ヘイ、ヘイ、ネエチャン!」「こんな夜中に一人じゃ危ないよ?」「俺たちと遊ばない?」「前後しない?」「バカ!」「グワーッ!」モヒカンたちが、彼女に次々と奥ゆかしくない言葉を投げかける。余計なことを口走った黒いモヒカンの男が、リーダーに殴られていた。7
2013-01-07 01:01:35「アー……」彼女は取り囲むモヒカン達をひと通り見渡してから、言った。「私、キレイ?」「え?」黄色いモヒカンの男が言われて彼女の顔を見る。マスクで口元は隠れているが、彼らヨタモノの価値観から見れば、前後欲をそそられるだけの美人ではあった。8
2013-01-07 01:04:22「アア、きれいきれい。ダヨネ?」他のモヒカンたちも頷く。すると彼女は、おもむろにそのマスクを……剥ぎとった!「コ レ デ モ ォ ?」「「「「「アイエエエエエ!? アイエエエエエエ!?」」」」」9
2013-01-07 01:07:13おお……なんたることか!マスクの下から現れたのは、耳元まで裂けた口だった!ゴアめいた彼女の口の端から、ドロリと腐った涎がこぼれ落ちる。「アバー……ドーモ、トートマウス、デス」裂けた口から聞こえるのは……奥ゆかしくも禍々しいアイサツ!10
2013-01-07 01:09:38「アイエエエ! オバケ!」ヨタモノたちにアイサツを返す余裕など無い。バイクのハンドルを握りその場から逃げようとする。だが!「アバーッ!」リーダーの赤いモヒカンの男が喉から血を吹き出してソクシ!トートマウスと名乗った女性が懐から鎌を取り出し、リーダーの喉を切り裂いたのだ!11
2013-01-07 01:12:03無我夢中で逃げようとするヨタモノたちに、トートマウスは追いすがる!「アバーッ!」首を切り裂かれ黄色いモヒカンの男がソクシ!「アバーッ!」額を切り裂かれ白いモヒカンの男がソクシ!「アバーッ!」胸を切り裂かれ青いモヒカンの男がソクシ!ナムサン!全滅か!?12
2013-01-07 01:14:40……いや、違う!「アイエエエ!」悲鳴を上げながらも、バイクをフルスロットルまで加速させた黒いモヒカンの男が路地を飛び出した!行き交うタクシーやトラックの間を全速力で走り抜ける!「ナンデ!? オバケナンデ!?」絶叫を置き去りにしながら、黒いモヒカンの男のバイクは通りを駆ける。13
2013-01-07 01:16:46振り切ったか、そう思い振り返る。「アイエエエエエエ!?」彼の口から、本日二度目の絶叫が飛び出した。時速80kmはあろうかというバイクの後ろを、トートマウスは走って追いかけているのだ!その手には血塗れの鎌!コワイ!14
2013-01-07 01:19:10「アイエエエ! アーイエエエエ!」喉が枯れるような絶叫とともに男はハンドルを握りしめ、更にバイクを加速させる。だがトートマウスを引き離せない。それどころが更に差を詰めてくる。その距離、タタミ10枚分から9枚分。このまま追いつかれてしまうのかと諦めかける。だが、その時!15
2013-01-07 01:22:08「スッゾコラー!」合成ヤクザクラクションと共に横からトラックが突っ込んできた!追跡者に気を取られていた男はそれに気付けず、ブレーキをかけることもできない。だがそれが結果的にサイオー・ホースとなった。男の乗ったバイクは、爆走するトラックのすぐ前を横切る。そして、それはすなわち。16
2013-01-07 01:26:10「アバーッ!」バイクまでタタミ3枚分の距離まで迫っていたトートマウスが、トラックに轢き飛ばされた。手にしていた血塗れの鎌が、宙を舞う。振り返った男は、叫び声も出せずにあんぐりと口を開けて地面を転がるオバケを見つめていた。17
2013-01-07 01:29:13「ザッケンナコラー!」そこに新たな合成ヤクザクラクション!男のバイクに別のトラックが迫る!「アイエエエ!」叫び声が戻った男は、慌ててハンドルを切るとフラフラしながら渋滞の列に紛れ込み、そのまま毒々しいネオンの光の中に消えていった。18
2013-01-07 01:32:23「オイオイオイ」その頃、トラックの運転手は自分が轢いた人間の様子を見るために車を降りていた。死んでいるならそのまま逃げ、息があるなら救急車だけ呼んで逃げる算段である。非情のようだが、マッポーの世ではこれでも一抹の情けをかけているほうだった。19
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