「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #4

0
Astal_jukebox @astral_jukebox

「空中から狙うのは大変なんだ」「お前一昨日誤射しないって言ったばかりだろが!」「誤射したとは言ってない。全てフェイントだ」制作担当だが自分の機体にリソースを割き過ぎる興基と、その割を食っているが、マイペースで誤射もある延生。互いに負い目がある故に論争は平行線だった。 25

2013-01-07 19:28:29
Astal_jukebox @astral_jukebox

同じ組の氷堂蘭花はそれを静観。アルミに包まれたままの菓子を両手で持ったまま、それを剥こうともせずに、じっと見ている。そんな中、裕岐は「ユウ!…良かった…うっ…うう」「ちょ抱きつくなオイ」友の無事を喜び泣きついていた。「もう止めてくれよ…」「いいから離せて」 26

2013-01-07 19:33:28
Astal_jukebox @astral_jukebox

勇矢は肩に縋る彼の腕を引き剥がそうとする。「イヤー良カッタ…ウッウッ」同時に子安星護も抱きつき腰の辺りを撫で回す「お前はマジ止めろ」裕岐に対する以上の力で剥がそうとする。「抱き心地良いから嫌」星護は首を振る。「そういうのやめろ」「これで女の子だったらなぁ…」星護が惜しむ。 27

2013-01-07 19:36:37
Astal_jukebox @astral_jukebox

「それはこっちの台詞だ、この女顔め」子安星護は低身長かつ彼の言う通り、やや女…中性的な顔立ちである。何度か女装を強要された際の、その姿は完全に美少女だったのだが、本人はこれを嫌がる。小中学生男子としては当然の反応なのだが、その一方で勇矢には本気で性転換を要求するのだ。 28

2013-01-07 19:42:15
Astal_jukebox @astral_jukebox

「酷いなぁ…傷つくわ…」勇矢の腹を撫でながら、悲しそうな顔で溜息を吐く。「え、僕が悪いのコレ?」星護は同性の勇矢を愛していながらも同性愛者ではない。彼にしてみれば実に扱いに困る面倒な性癖だった。「イヤーッ」勇矢は二人をまとめて引き剥がした。それはさておき、時刻は17:00。 29

2013-01-07 19:45:09
Astal_jukebox @astral_jukebox

「皆さん、このまま続けてもらってもいいんですが、10分ほど休憩しておきませんか?」湊が提案する。本来の予定よりされにずれ込んでいるが、それだけ試合の白熱が覚めなかった結果と考えれば、悪くは無いとも言える。元より1時間の会議時間も、彼女が大目に見積もったものなので問題は無い。 30

2013-01-07 19:48:47
Astal_jukebox @astral_jukebox

だがそこで「じゃあ時間だから先帰るね」と、いつの間にか自機と破片の片付けを終えた勇矢が言った。「え!?」「いやちょっと!」湊と智明が驚くが、逆に勇矢は不思議そうな表情だ。「いや、今日は急用があるって言ったでしょ?『急ぐのか』って君らも言ってたじゃない…あれ、君らだっけ?」 31

2013-01-07 19:52:22
Astal_jukebox @astral_jukebox

「言ったけどさ!…試合の当事者なんだから少しはいてくれよ!」「分かるけど急用なんだって…六時半位から雨だし、その前に…えー、目的地に着きたいというか…じゃ!」勇矢は窓を開ける。そこから出るつもりか!?「ちぃっ!」湊が勇矢の右足に抱きつき拘束! 32

2013-01-07 19:56:43
Astal_jukebox @astral_jukebox

「うおっっお、おっ!??」湊の胸が当たっている!その胸は平坦である。だが平坦であっても…固くは無い!「待て待て待て待て!離せ離せ!!」「……浅空君」智明だ。「おい、み…?…えー…部長!ここコレどうにかし」「外出ていいよ」「ハァ……え何急に方針転換?」「飛び降りて死ね」 33

2013-01-07 20:00:40
Astal_jukebox @astral_jukebox

智明の声は冷淡だった。「引き分けただろ!?」「ほら浅空さん、死にたくなかったら戻りましょう」湊はやや笑顔だ。邪悪!その笑顔の訳は無論、『道具』に抱きついているからでは無く、智明の嫉妬が嬉しいからだ。彼女にとって浅空勇矢は道具。嫉妬心を引き出してくれるとは便利な『道具』だ。 34

2013-01-07 20:05:53
Astal_jukebox @astral_jukebox

ただ便利でもこのように扱いにコツがいるのが難点だが…その上でなお使える道具だった。実際、その実力で先程は見事な試合を見せてくれた。そう、見事な無気力試合だった。始まる前の茶番から最後の引き分けという結果まで、事前に打ち合わせていたとはまず思われまい。 35

2013-01-07 20:12:36
Astal_jukebox @astral_jukebox

ただし、打ち合わせていたのは、時間ギリギリに満身創痍で引き分けるという結果、ただそれだけ。それ以外の途中経過は両者の完全なアドリブだ。攻撃内容などは互いに予備知識なしで行った。言葉にするのは簡単だがこれは楽ではない。 36

2013-01-07 20:20:21
Astal_jukebox @astral_jukebox

人間同士の格闘戦で、かつ途中経過を打ち合わせていてもなお、見抜かれない八百長というのは難しいのだ。それもラウンド制なしの20分だ。それがロボット同士となると更に難易度は数十倍となる。これは彼等の機体のレベルの高さを意味する。 37

2013-01-07 20:25:39
Astal_jukebox @astral_jukebox

自分の体を動かすのとロボットを操縦することの差は言うに及ばず、熱暴走の危険や故障の危険もある。企業チーム同士の戦いでも10分前後でこれらのトラブルが起こることが珍しくないのだ。AB以外のロボット競技ではなお良く見られる光景だ。 38

2013-01-07 20:30:56
Astal_jukebox @astral_jukebox

このリスクを軽減する為、彼等4人は部員に事前通知した開始時間をずらすことにした。18時解散と言うリミットや会議予定を詳細に告げた上でトラブルが起これば、部内練習である以上試合時間を削るのも自然。元より一次ルールの15分を延ばした20分であるため、反対も出なかった。 39

2013-01-07 20:35:21
Astal_jukebox @astral_jukebox

時間が削れたことで芝居の上演時間を短くし、ヘマをやらかしにくくなる。加えて冷却剤が4本のみのビートが熱暴走により活動停止するという危険も減る。このことと、隆光と智明の手腕により熱暴走は回避出来たが、あと30秒長く戦えば危なかった。 40

2013-01-07 20:40:26
Astal_jukebox @astral_jukebox

それでもなお、一次ルールより長い時間個人試合を出来たという結果は残る。試合内容に加えてのダメ押しの印象操作。強いリーダー機として、人型のデメリットを蹴散らす性能と操縦者の技量を見せ付けることで、ブレイビートを出場機体の中心に留めるための手段だ。 41

2013-01-07 20:45:10
Astal_jukebox @astral_jukebox

この練習試合は限られた出場枠の奪い合いの為の『プレゼン』でもある。部員13名のうち大半は自分の機体を出場して戦わせたいと思っている。制作者なら当然のことだ。出場可能機体は20体、これだけを見れば全員が1体は出せそうに思われる。だが、先程延生も述べた重量・サイズ制限がある。 42

2013-01-07 20:50:49
Astal_jukebox @astral_jukebox

このため大型機を何機も出すことは事実上出来ない。一応、『一度に出場出来る』制限の150%の重量と機体数までは登録可能なので、例えば一試合目で故障した機の代わりに二試合目以降で控えを出すことは出来る。だが、大型機の頑丈さを考えると、出られずに終わらないとも限らないのだ。 43

2013-01-07 20:55:27
Astal_jukebox @astral_jukebox

そして武器や修理・交換パーツも制限内に含まれるため、やはりリソースの奪い合いは起きてしまう。智明本来の計画の為にもビートをチームの中核に置いておくのは重要であり、全てはその為の演出だ。勝利で終わらせなかったのは、部員の敵愾心を自分だけに集中させない為だ。 44

2013-01-07 21:00:59
Astal_jukebox @astral_jukebox

勇矢はそれを承知で全て行動していたが…今のこの勝手な行動はそれには含まれていない。「いや本当、急ぐんだって!」「死ね空君の用は何時からだい?」「6時半に駅前に用があるの付き合えないわ!」「今日は休んで死ね」「そんなぁ!?」必死のやり取り。 45

2013-01-07 21:05:52
Astal_jukebox @astral_jukebox

智明にとっての彼は前日の朝、隆光と語ったように重要な存在である。彼の『計画』のきっかけにして、重要なパーツ。それ以上に尊敬や賞賛、感謝の対象でもある。……ただそれ以上に…彼の伊都谷湊、の主にふとももを性的な目で見る限りは殺意の対象である。 46

2013-01-07 21:11:40
Astal_jukebox @astral_jukebox

「浅空さん、駅なら10分で着くじゃないですか?」湊の当然の疑問。5分前に着くようにしても1時間以上の余裕だ。「いや1時間は前に着いておきたいんだよ!雨が降る前に済ませたいし…」「どうせあっち着くころには雨だぞ?」裕岐も問う。「いやそうじゃなくて…」言い淀む勇矢。 47

2013-01-07 21:15:10
Astal_jukebox @astral_jukebox

足を抑える湊の手が徐々に上昇する。「それでもまだ20分は時間があるでしょう?」「早ければ早いほどいいんだよ!」上昇。「そんな早く行って何の用意があるんです?」「一口では言えん」上昇。「50分に出ても30分前に着けるでしょう?それで良いじゃないですか?」湊が先制で譲歩! 48

2013-01-07 21:18:32
Astal_jukebox @astral_jukebox

そして更に手が数ミリ上昇!既に腿上15cm!このままでは!「おい待て!その手は何だ!正気か!?」「このまま行くと……智明さんがどう出てくれますかね~」脅迫しつつ、智明の嫉妬に期待する。その殺人犯予備軍は二人から離れ、自分の工具箱の前にいる。「なんかアレ得物物色してね!?」 49

2013-01-07 21:22:01