佐々木敦、レオスカラックス『ホーリー・モーターズ』×岡田利規=チェルフィッシュについて語る

ユーロスペースでの特別上映時に行なったトークについての経緯説明から。
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佐々木敦 @sasakiatsushi

昨日のユーロでのイベントについて、幾つかのツイートを僕にリプライしてくださった見知らぬ方がいた。僕に更に「ダメージ」を与える目的であることは明白だけど苦笑、色々考えた。あまりこういうことはしない方針だが、今後のことにもかかわると思うので、以下に経緯と私見を述べておきたいと思う。

2013-01-28 11:43:54
佐々木敦 @sasakiatsushi

たぶんちょっと長くなります。申し訳ない。

2013-01-28 11:44:26
佐々木敦 @sasakiatsushi

ユーロスペースから「カイエ週間で『ホーリー・モーターズ』を特別上映するので、レオスカラックス監督とゲストの対談の司会を頼みたい」という依頼があったのは、12月半ばのことだった。その時点では日にちと場所だけ決まっていて、相手役は決まっていなかった。まず司会だけ押さえたということ。

2013-01-28 11:47:44
佐々木敦 @sasakiatsushi

僕も予定の調整が必要だったが、とりあえずなんとかしますということと、でもゲストが誰かによるんじゃないでしょうか、とお答えしたと思う。ちなみにユーロの担当者とはそれ以前に仕事をしたことはない。自分で言うのも変だが、要するに相手が誰になっても対応できるということで選ばれたのだと思う。

2013-01-28 11:50:10
佐々木敦 @sasakiatsushi

というよりも、ゲストの人選は難航していた。ユーロから、どんな人がいいと思うか何人か挙げて欲しいといわれ、僕は幾つかの名前を伝えた。まだ映画を観ていなかったので、アバウトなものではあったが。その中にすでに岡田利規の名前もあった。他は音楽家とか哲学者とか、映画監督も挙げたと思う。

2013-01-28 11:54:34
佐々木敦 @sasakiatsushi

重要なことは、カラックスの相手役を映画以外のクリエイター/アーティストで、ということは、僕に振られる前に、あらかじめ決まっていた、ということだ。ユーロからはファッションや音楽で誰か居ないだろうか、という返答があった。そのあと僕も忙しくなって、そのまま年を越してしまったのだった。

2013-01-28 11:58:03
佐々木敦 @sasakiatsushi

新年になってもまだカラックスの相手は決まっていなかった。前回の『ポーラX』来日時には荒木経惟と対談したのだという。アラーキー位の知名度があるひとということだとなかなか難しいだろうな、とは思った。その後、まったく異なる分野の或るクリエイターの方へ打診することになったと伝えられた。

2013-01-28 12:01:12
佐々木敦 @sasakiatsushi

だが、それは交渉の末NGになってしまった(僕はこちらの件にはかかわっていない)。その時点で今月半ばで、ユーロからは「カラックス一人になった場合も聞き手を務めて欲しい」と言われ、僕は承諾した。だがその後一転して、岡田利規さんに依頼したい、と連絡があり、やっと決まったというわけだ。

2013-01-28 12:04:53
佐々木敦 @sasakiatsushi

本来、こういう経緯については表沙汰にはしないものだ。最終的に決まった方にも失礼に当たるから(誰だって自分が何人目かの候補だったと知ったら良い気持ちはしないだろう)。でも岡田さんは別に気にしない筈だから書いている。彼はチェルフィッチュのリハーサルで忙しい中、時間を割いてくださった。

2013-01-28 12:08:28
佐々木敦 @sasakiatsushi

まずここではっきりと述べておきたいことは、今回の場合、1)カラックスの対談相手は映画以外のジャンルの方。2)岡田利規への依頼。この二件とも、あくまでも映画の配給元であるユーロスペースと、「カイエ週間」の運営であるアンスティチュ・フランセによって決められたものだということである。

2013-01-28 12:11:35
佐々木敦 @sasakiatsushi

確かに岡田さんの名前を最初に挙げたのは僕だし、そして今でもこの組み合わせは良かった筈だと思っているが、それと事の経緯は別である。NGになったクリエイターは、確かに一般的知名度は相当な方だったが、カラックス(映画)とのマッチングという意味では僕としてはかなり謎な感じもあった。

2013-01-28 12:15:49
佐々木敦 @sasakiatsushi

感想ツイートの中には、まるで僕が「映画以外」と「岡田利規」を無理矢理入れ込んだみたいな受け取り方をしている人も居るようだが、僕はいつも通り、ただ先方からのオファーとオーダーに自分なりに真面目に対応しただけである。別にどう思われてもいいけれど、慣れているから。

2013-01-28 12:20:00
佐々木敦 @sasakiatsushi

だが岡田利規の名誉のためには一言しておかねばならない。確かにユーロとは古い付き合いだし、日仏のABIこと坂本安美は彼女が大学生の頃から知っている。だがそういうこととは別に、この顔合わせはあくまでも関係者のコンセンサスによるものだということだ。そこには僕も岡田さんも入っていない。

2013-01-28 12:27:05
佐々木敦 @sasakiatsushi

誤解されがちなことなので、この際付言しておく。僕に限らず、我々は多くの場合、要するに呼ばれたから出て行っているのだ。自分から売り込んだわけでも出たがったわけでもない。依頼してくれる方がいて、依頼内容があって、それを適切かつ誠実にこなす、というのが仕事である。今回もまったく同じだ。

2013-01-28 12:30:18
佐々木敦 @sasakiatsushi

それは岡田さんにとっても同じだったろう。なぜ誰々なのか、どうしてこんな仕事なのか、という理由や狙いについて、推測することは出来ても、それを考えたのも決めたのも向こう側に居る人たちである。そして依頼する側とされる側の理解と了解の上に、あらゆることが成り立っている。当たり前のことだ。

2013-01-28 12:33:09
佐々木敦 @sasakiatsushi

その結果への不満や反感を抱くのは仕方ないし構わないと思う。だが、本質的に自分たちに課されるものではない咎まで負わそうとするのは勘弁していただきたい。ABIさんが聞き手だったらよかったのに、と呟いていた方、坂本さんだって無論了解の上でやったことなんですよ。

2013-01-28 12:40:05
佐々木敦 @sasakiatsushi

さて、以上が経緯の説明である。ここからは本番にかんする話だ。いくらプロセスに責任がなくても、現場の成否にはある。だが僕はこれにかんしても、我々は出来るかぎりのことはやった、と認識している。これは弁解でも強弁でもない。そのことについてこれから書く。

2013-01-28 12:44:12
佐々木敦 @sasakiatsushi

まず、僕も昨日まで知らなかったのだが、カラックスと岡田利規には過去にちょっとしたすれ違いがあった。数年前、東京でパスカル・ランベールが芸術監督を務めるジュヌヴィリエ国立演劇センターの活動を紹介する連続レクチャーが催された際、岡田さんは舞台芸術にかんするスピーカーとして参加した。

2013-01-28 12:49:07
佐々木敦 @sasakiatsushi

映画側のスピーカーとして青山真治が参加していた。そしてその日の打ち上げの席に、ちょうど『TOKYO!(メルド)』のロケハンのため来日していたカラックスが青山君に会いにやってきたのだという。そこで挨拶ぐらいはあったのだろう。岡田さんは絶対覚えてないと思いますけど、と言っていたが。

2013-01-28 12:51:33
佐々木敦 @sasakiatsushi

このエピソードはもちろん、対話のはじまりのちょっとした掴みのようなものだ。僕も岡田さんも上映を観ていて、その前にも打ち合わせを省いたので(これは僕の意向だが、いずれにせよカラックスはまだ到着していなかった)、上映が終わるとカラックスとは挨拶もしないまま、いきなり壇上に出された。

2013-01-28 12:55:02
佐々木敦 @sasakiatsushi

実は僕ら前に会ったことあるんですよ、ということが重要なわけではない。そんなことは別にどうでもいい。カラックスとランベールの関係も僕は知らない。しかし岡田利規率いるチェルフィッチュはジュヌビリエをはじめフランスでも度々公演を行なっている。少なくともこれはひとつの話の端緒だった筈だ。

2013-01-28 12:59:56
佐々木敦 @sasakiatsushi

だが、これに対するカラックスの反応はノーリアクションだった。実際のところ、僕は今でもカラックスがチェルフィッチュのことをどれだけ知っていたのか、僅かでも知っていたのか、知らされていたのか、全然わからない。それに別に知っておかなくてはならないわけではない。知らなくたって話は出来る。

2013-01-28 13:03:25
佐々木敦 @sasakiatsushi

ちなみにパスカルランベールのジュヌヴィリエ芸術劇場は、青山真治が『赤ずきん』を創ったところだ。チェルフィッチュもここから招聘を受けて公演を行なっている。

2013-01-28 13:05:38
佐々木敦 @sasakiatsushi

さて、僕も実はあまり認識出来ていなかったのだが、ユーロスペースは150席足らずのミニシアターである。当日券のみ、朝10時からチケット販売だったが、前にも書いたように早朝7時台から並んでいる方がいたという。8時には決着がついていたそうだ。円山町には長い行列が出来ていたという。

2013-01-28 13:08:48
佐々木敦 @sasakiatsushi

映画上映の30分くらい前に会場に着いてみると、すでに混雑しており、ひょっとして入れるかもと駆けつけた人もおそらく大勢居た。ユーロの社長に「スゴいですね」と話し掛けると「ポンヌフの時は二晩徹夜がいた」とのこと。もっと大きい劇場でやったらよかったのにとも思うが、事情があったのだろう。

2013-01-28 13:12:04