楯野恒雪氏によるゲームマスター入門

ゲームデザイナーであり、D&Dを始めとする海外TRPGの翻訳家でもある楯野恒雪氏の語る、TRPGのGMを始めるにあたってのステップです。
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楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ゲームマスター入門について、ちょっと思うところをつらつらと書いてみます。若干まわりくどい話になりますが、御容赦を。

2013-02-04 05:27:14
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

TRPGというのはゲームと玩具(おもちゃ)の中間的存在、あるいは“玩具的要素の強いゲーム”だと私は考えています。

2013-02-04 05:27:35
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ゲームとはルールに則って意志決定や操作を行なうことによって、ルールに定められた目的達成を目指す遊具。玩具とは遊び方が定められていない遊具です。異論のある方もいらっしゃるとは思いますが、ここではそういう定義ということにしておいて下さい。

2013-02-04 05:27:54
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

前者の例は、あえて挙げる必要もないと思いますが、チェス、将棋、囲碁、ボードゲームやカードゲーム。後者の例は、人形や超合金、プラモデル、ミニカー、仮面ライダーの変身ベルトなどが挙げられます。

2013-02-04 05:28:16
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

普通のゲームは、ルールに定められた手順を実行すればゲームとして成立します。例えば『人生ゲーム』だったら、ルーレットを回して出た数字の数だけコマを動かして、止まったマスの指示に従うという手順を、ゴールに辿り着くまで続ければ、ゲームとして成立するわけです。

2013-02-04 05:29:25
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ルールを逸脱したコマの動かし方はできません。有利なマスに止まれるからといって、盤上の順路を逆走することはできないのです(「できる」とルールに書いていない限り)。

2013-02-04 05:30:03
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

玩具にはそもそも遊び方、ルールが定められていません。合体ロボのおもちゃを何秒で変型させられるかタイムアタックしてみても、飾っておくだけでも、おままごとでパパの役をやらせてみてもいい。持ち主の想像力の及ぶ限り(そして公序良俗に反しない限り)どんな遊び方をしてもいいのです。

2013-02-04 05:30:50
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

先の定義で考えると、TRPGはゲームとしては不完全――ある意味、欠陥品と言って良い代物です。なにしろ、ルールに定められた手順に従うだけではゲームとして成立しないのですから。

2013-02-04 05:31:15
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

TRPGの黎明期には、ボードゲームのつもりで買ってしまった人から、遊び方がさっぱりわからないという声が良く聞かれました。TRPG愛好者が何と言ってフォローしようとも、その方にとっては、TRPGは欠陥品であったでしょう。

2013-02-04 05:31:34
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

しかしながら、すでにTRPGをプレイしている皆さんは御存知の通り、この“欠陥”の部分こそが、TRPGをTRPGたらしめている一番面白い部分であります。

2013-02-04 05:31:53
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ルールを使って自由に遊ぶというか、ルールを“玩具”として遊ぶというか……私がTRPGをゲームと玩具の中間的存在と考える理由はこのあたりにあります。

2013-02-04 05:32:11
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

話を戻しますと、その欠陥ゆえに、TRPGをゲームとして成立させるには、他のゲームではありえない欠陥の化身、恣意的ルールの権化、プレイヤーにとってのオモチャであるところのゲームマスター(GM)が必要になります。

2013-02-04 05:32:38
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ここでようやく本題になるわけですが、ゲームマスターをやるコツは何か? 一言で言えば「慣れ」です。慣れるためには、とにかくやってみなければ始まりません。

2013-02-04 05:33:21
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

しかし、そこで「でも難しい」「やってみたけどうまく行かない」という堂々巡りが発生するわけです。何故難しくてうまく行かないのかといえば、最初から熟練を必要されることをやろうとするからです。

2013-02-04 05:33:51
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ロールプレイだのストーリーテリングだのというのは、慣れた結果としてGMが面白いと思う方向、得意だと思う方向に特化して熟練して行った結果として身につくものであって、いきなりそれをやろうとしても、うまく行かないのは当然です。

2013-02-04 05:34:11
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ならばどうすればいいか? 私がおすすめする方法は、「TRPGを“普通のゲーム”に戻してみる」こと。単純に、書いてある通りにルールを運用すれば成立するゲームにしてしまうことです。

2013-02-04 05:35:50
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ある程度プレイヤーとして遊んだ経験があるのでしたら、戦闘ルールは理解していることでしょう。まずはモンスターを操ってPCと戦うだけの、戦闘ゲームとしてTRPGを遊んでみて下さい。

2013-02-04 05:36:06
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ストーリーなんて、なくたって構いません。とにかくGMの立場で戦闘をやってみることが重要です。「戦闘だけなら問題ない」「それだけじゃ味気ない」と思うかも知れませんが、それこそあなたにGMとして最低限の“慣れ”が身についていることの証です。安心して次のステップに進みましょう。

2013-02-04 05:36:22
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

次のステップは、戦闘に設定やストーリーという味付けをすること。最初の戦闘と次の戦闘をつなぐ理由を考えて、戦闘開始の前後にプレイヤーたちに説明することです。

2013-02-04 05:36:48
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

こうやって“戦闘ゲーム”として遊ぶつもりでGMしつつ、少しずつ、「自分にもできる」と思う範囲で、ストーリーテリングやロールプレイといったTRPG的要素を付け加えていくわけです。

2013-02-04 05:37:01
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

考えてみれば、これってTRPGの発達の歴史と同じなんですよね。単なる戦闘ゲームからD&Dが生まれて、色々なジャンルのTRPGが登場し、特定のプレイスタイルを支援するシステムが発展していくという。

2013-02-04 05:37:22
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

慣れるまでにどれくらいかかるか? システムにもよりますが、2~3回もやれば、「今後もGMをやっていける」と思う程度の慣れとスキルは身につくはずです。

2013-02-04 05:37:43
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

最初は無理せず、模擬戦とか練習とか理由をつけて、戦闘遭遇だけをGMの立場でやってみましょう。余裕があれば、ついでにモンスターをロールプレイする練習をしてみて下さい。

2013-02-04 05:37:56
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

戦闘が問題なくこなせるなら、次は戦闘遭遇1つに簡単なストーリーや設定を付けただけのものを作ってやってみる。それがうまくできると思ったら、戦闘遭遇2~3回をつなぎ合わせたミニシナリオを作ってみましょう。

2013-02-04 05:38:19
楯野恒雪 @TatenoKousetsu

ミニシナリオがうまくこなせるようになったら、大抵の市販シナリオは問題なくGMできるだけの力量が身についているはずです。あとは回数をこなして、慣れを積み重ねながら新しい要素を取り入れていくだけ。立派なゲームマスターの誕生です!

2013-02-04 05:38:30