高橋ショウ
@zrx78
麻衣は目の前にいるサングラスの男の顔をよく見てみた。なんとなくだが、どこかで見たことがある……そう感じた。実際にどこかで会った、というわけではない。何かを通して見た顔だと、そう思った。しかし思い出せない。麻衣がそんなことを思っている間に、男は言葉を続ける。
2013-02-09 21:30:48
高橋ショウ
@zrx78
今度は驚いた声を上げる麻衣。アルバイトなのに月給制……おかしな話だ。驚くのは当然のことであろう。麻衣の驚きをよそに、男は「ああ、そうだよ」と頷く。
2013-02-09 21:33:47
高橋ショウ
@zrx78
働かない方が良い……働かないに越したことはない……どんな仕事なのかと、さらに麻衣は疑問を抱く。特殊な仕事だと男は言うが、そんなに働かなくても7万円という月給をもらえる仕事とは何なのか? 麻衣には想像もつかない。
2013-02-09 21:36:22
高橋ショウ
@zrx78
男の顔を見ていた麻衣は、ふと思い出す。麻衣が9歳の時に逝去した父親……死因は事故死だ。信号無視したトラックにひかれた……麻衣はそう聞いている。その父の葬儀の場に、いま目の前にいる男がいたような気がした。だが、もう8年も前の話だ。記憶は曖昧になっている。
2013-02-09 21:37:21
高橋ショウ
@zrx78
疑問ではなく、麻衣は混乱を抱く。男が何を言っているのか分からない。アルバイトの面接をしていたはず……だが、会話の内容が明らかに変化している。男が口にした、彼女、とは誰なのか? 男の言葉から、麻衣の親しい人物だということは分かった。ふと思い浮かんだのは、母親の顔だ。
2013-02-09 21:39:19
高橋ショウ
@zrx78
誰なんですか……そう聞こうと思った時、いきなり世界が暗くなった。男の姿も見えなくなる。突然のことに「な、なに!?」と慌てる麻衣の耳に、クラクションの音と大型車のエンジン音が届いた。それが聞こえる方に顔を向けた麻衣は、目を見開いた。
2013-02-09 21:41:16