ソイ・ディヴィジョン #6
サワタリは無邪気に喜ぶバイオニンジャたちを見て、ぼろぼろの顔で笑みを作った。部隊の損耗無し。その直後、彼は一瞬だけ真の意味で正気に返り、自らの無慈悲さを恐れた。(((損耗は出せん。俺はいずれお前たちを、真のジゴクへ連れて行くのだ…)))そして彼らは重金属酸性雨の闇に消えた。 22
2013-02-10 02:01:17「シュコー、バイオニンジャども、逃げ切りましたな」ドクター・コーマが屋上へ向かう大型ショーユ樽リフトの上で言った。「ムハハハハ、かまわぬ!僕の最初のプラン通りだ。あとはヨロシサンに任せろ」チバが冷たく言った。隣にはネヴァーモア、そしてクローンヤクザに守られたダイギシがいる。 23
2013-02-10 02:12:11キュゴンキュゴンキュゴン……未だ乱戦の続くショーユプラントを威圧的に睥睨しながら、大型リフトは錆び付いた音を立てて上昇してゆく。「勝てそうにも見えるが、こういった時は欲目をかいた奴から負ける」チバは隣のクローンヤクザに指示した「ジョウゾウ社の株を全部売れ」「ヨロコンデー」 24
2013-02-10 02:22:07一方その頃、地下の違法ショーユ工場では、奇妙な光景が繰り広げられていた。アラヤ長老に率いられた奴隷職人とクローンヤクザたちが協力して、ショーユ工場火災の消火作業に当たっていたのだ。ジョウゾウ社の副部長が下した命令放送を聞き、彼らは黙々とそれに従ったのである。 26
2013-02-11 17:17:17「ゲホッ!ゲホーッ!」「ザッケンナコラー!」「頑張りましょう!」「ユウジョウ!」「自分だけ逃げるわけには行きませんね!」彼らは一糸乱れぬ統率力で消火バケツをリレーする。もはや自分たちが作っているのは高級ショーユなどではなくケモ兵器と麻薬だったが、そんな事はどうでもよかった。 27
2013-02-11 17:25:07最新鋭の消火設備と一体感のある手作業により、火の手は収まりつつあったが、依然として予断を許さない状況だ。「アイエエエエ!何だか不安です!」「アイエエエ!やっぱりオハギや幻覚剤なんか作っていてはいけないのでは!」何人かが不安を訴え地上に逃げようとしたが、囲んで警棒で叩かれた。 28
2013-02-11 17:41:02「マッポーの地上では生きられん!わしらはこの施設に最適化されたマシーンなのだ!わしらはこれだけ過酷な責め苦に合っているのだから、ブッダは許してくれるだろう!」アラヤ長老が終末論者めいた表情で叫ぶ。「アイエエエエ!」後方で絶叫!この場にまだゼンめいた調和を乱す者がいるのか!? 29
2013-02-11 17:50:56「アイエエエエエ!アイエエエエエエエエ!」否!それは地下下水道から這い出してきたズンビーニンジャ「ガーデナー」に捕まり、生きたままネギトロにされるクローンヤクザの断末魔の絶叫であった!その体長9フィートの無思考屍肉ニンジャの腹には、錆び付いた巨大芝刈り機が備わっているのだ! 30
2013-02-11 17:56:54「アイエエエエエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」次なる犠牲者として、奴隷職人が掴まれた!「アバー」ガーデナーはそれを自らの腹に頭から押し込む!キュイイイイイイ!特殊芝刈り機が回転し、背中側から左右にネギトロめいた死体が排出される!ナムアミダブツ!何たる悪魔的機構か! 31
2013-02-11 18:06:15「脱走しようとせん限り、ニンジャはわしらを襲わんはずだったのに!殺戮の後にさらなる殺戮とは!何たる理不尽!」アラヤ長老はクローンヤクザが持っていたドスダガーを拾い上げ、狂気じみた目で突撃命令を叫んだ!「武器を取れーッ!この違法労働施設を横暴なニンジャの手から守るのだーッ!」 32
2013-02-11 18:18:03「アババババババーッ!」だが次の瞬間、アラヤ長老はズンビーニンジャに呆気なく捕まり、生きたままネギトロにされたのだ!「アイエエエエ!」「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」「アバー」「アイエエエエエエエエ!」「アババババババーッ!」ソイ・ディヴィジョンが混乱と血に染まる! 33
2013-02-11 18:25:47「サツバツ!」ニンジャスレイヤーは己の背からドスダガーを引き抜き、投げ捨てると、周囲を取り囲むアマクダリ勢に対し挑戦的なジュー・ジツを構え直した。すでに彼のニンジャ装束は襤褸布のように変わっていたが、依然として憎悪に満ちた殺人的カラテがみなぎり、それは一向に翳りを見せない! 35
2013-02-11 18:48:07「特に品質」「キャシュバック」「上級」と書かれた大型ショドーを背に、リフト上のチバは残酷に笑う。「ムハハハハ!あの夜、僕を殺さなかった事を後悔させてやる!慰霊碑も無くなって、見晴らしも良くなっただろう!?お前の協力者も、精神的拠り所も、フートン一枚残らず引き剥がしてやる!」 36
2013-02-11 18:57:02ショーユリフトは既に絶対安全圏に到達していた。ニンジャスレイヤーが投げ放ったスリケンも、前方に威圧的に立ち塞がるクルセイダーの頭上を抜けはしたが、側近ネヴァーモアが抜かり無くガードした。ラオモト・チバは暴君としてのオーラを実際示せたことにゾクゾクと震え、快感を味わっていた。 37
2013-02-11 19:09:41「諦めろ!ニンジャスレイヤー=サン!アマクダリの力の前に平伏し、セプクするがいい!」ガゴーン!耳障りな音を立て、リフトは武装ヘリが待機する屋上へと消えた!「流石はラオモト=サンだ!」「冷静なだけのアガメムノン=サンとはワケが違う!」クルセイダーとベアナックルは戦意昂揚する! 38
2013-02-11 19:15:33「死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」クルセイダーがランスを構え、意気揚々と突撃。サイバー馬とのLAN直結が、人馬一体の境地という概念を軽々と踏み越える!古代ヨーロッパで結成されたナイトニンジャ・クランのニンジャソウルの力が、最新鋭サイバネによってブーストされているのだ!39
2013-02-11 22:22:38ニンジャスレイヤーはベアナックルと打ち合い、側面を晒している。アブナイ!(((…アマクダリとは決着を付けねばなるまい…)))雄々しい蹄音とともに、ランスの一撃が彼の頭部を狙う!(((…これまでのいかなる敵よりも手強く狡猾だ…)))「イヤーッ!」紙一重のブリッジでこれを回避! 40
2013-02-11 22:31:11(((…奴らはネオサイタマと臓器癒着を起こし…)))「サツバツ!」砕けんばかりに歯を食いしばり、禍々しく重いカラテをベアナックルに叩き込む。「グワーッ!」ガードの上から敵の骨が軋む。(((…物言わぬジグラットに戦いを挑むようなものだ…)))思考は微塵も悟らせない。殺戮の獣。 41
2013-02-11 22:37:42(((…耐え忍べ…)))「イヤーッ!」「グワーッ!」ベアナックルの腕に黒い痣が刻まれ始める。(((…怪物と思わせろ…)))「イヤーッ!」「グワーッ!」シズケサが背後から再度のドスダガー!受ける。致命傷は貰わない。(((…ダガー程度では狩れぬのだと…)))背後へ大振りの裏拳。 42
2013-02-11 22:46:17