推敲は遂行中。～第３回twitter小説大賞応募候補作一覧～

あまたす @amatasu

足が痛い。パンプスのせいだ。「もう大人なんだし、背伸びしてみたら？」ってお姉ちゃんに言われて履いてみたけど、大失敗。痛いし、それにヒールで背が高くなっても、背伸びしても、結局届かなかった。「ごめん。君とは付き合えない」私の大人、まさかの失恋スタート。ああ痛い。 #twnovel

あまたす @amatasu

３月になったっていうのに、冷たい雨が降っている。マフラーに手を伸ばそうとして、やめた。コートだけを羽織って家を出る。「そのマフラーいいね。その色、すごく似合うよ」そう言ってくれる人はもう、いない。だってもう、３月だから。マフラーなんかもう、いらない。 #twnovel

あまたす @amatasu

昨日からなにも食べていない。そんなところに彼女が来た。抱きしめると、チョコレートの香りが。耳に口付ける。甘い。ミルクチョコだ。そのまま噛み切る。唇は？苦い。ビターチョコ。甘いだけがオンナノコじゃないのよ。傷口からとろとろとチョコレートを流しながら、彼女が言った。 #twnovel

あまたす @amatasu

朝、鏡を見ると俺ではない俺が映っていた。そいつは残業明けのクマや宵越しの疲れなんかない顔で「なあ、たまには俺と代わらないか」という。休みが欲しかったので、その提案に乗ることにした。以来、たまに鏡の中の俺が会社に行く。そして、俺の姿は鏡に映らなくなった。 #twnovel

あまたす @amatasu

私には、絶対音感のようなものがある。「のような」というのは、どんな音も音名ではなく、言葉に聞こえるからだ。例えば。ばんっ、ごん、かんっ、どん、がん！「いきなり机蹴ったりして、どうしたの？」やっぱり、カレには伝わらないか。ア、イ、シ、テ、ル、って、鳴らしたのにな。 #twnovel

あまたす @amatasu

もらったばかりのお年玉を手に、楽器店へ行った。狙っていたギターを買うためだ。すぐに電車に乗って、隣町の老人ホームにいる祖父に会いに行き、ギターを見せた。「爺ちゃん、誕生日おめでとう！」ひと月後、祖父から写真が届いた。皆の前でギターを弾くその姿は、昔のままだった。 #twnovel

あまたす @amatasu

入院中の祖母を見舞った帰り、駅で電車を待っていた。すると、時刻表にない時間に電車が来た。乗ろうとすると、横から突き飛ばされ、乗れなかった。閉まっていくドアからは、若い女性が俺を見ていた。翌週、祖母は亡くなった。祖母の若い頃だという遺影には、あの女性が写っていた。 #twnovel