ついのべとか、短いのまとめ

自分用メモ。とりあえずさかのぼれるまで。
0
志水了 @rssyubinbou

夜闇の中で灯りが零れている部屋があった。部屋を覗いてみると、銀細工師が細かな銀の鎖を組み合わせて首飾りを作っている。難しい注文をできると言い張って引き受けたのだろう。青い宝玉を埋め込んだ首飾りに鋭い視線を向けている彼の頭上で、しゃらりと簪が揺れていた。 #空想話 #銀細工師

2012-09-27 13:00:30
志水了 @rssyubinbou

地図屋が開いた巻物には、薄墨でどこかの大陸が描かれているようだった。「雨の世界ということは、ずっと雨が降っているの?」「そうらしい。空には薄灰色の雲が垂れ込めていて、いつも霧が白い幕を作っている世界だそうだ」世界を語る時の彼の話だけは、とても興味深いと思う。 #空想話 #地図屋

2012-09-19 21:42:29
志水了 @rssyubinbou

ぽつり、と降り出した雨がいつの間にか束になって屋根を叩いていた。「おや、これでは帰れないね」地図屋がひょうひょうとした顔でそんなことを言う。調律師がむっとしたような表情を浮かべたからか、彼は荷物から巻物を取り出した。「雨の世界を知っているかい?」 #空想話 #地図屋 #水晶調律師

2012-09-19 11:52:13
志水了 @rssyubinbou

押しかけきた地図屋はまっさらな巻物を開く。「で、新しい世界とはどれだい?」「さあ、たくさんありすぎて忘れてしまったわ」あるかないか曖昧だから面白いのに、地図屋はそれを確固たるものにしてしまう。それが少女には、面白くないのだ。 #空想話 #地図屋 #水晶調律師

2012-09-16 10:12:31
志水了 @rssyubinbou

滅多にこない館に、占い師以外の男がやってきた。本当に何も知らないらしく、冗談混じりに説明するのがゆかいである。だが、せっかくのゆかいなところに、真っ白な巻物を抱えた地図屋がやってきた。「また新しい世界ができたんだって?」ああ、まったく不愉快だ。 #空想話 #地図屋 #水晶調律師

2012-09-15 20:33:07
志水了 @rssyubinbou

少女は壁一面に並んでいる水晶玉のひとつを手に取った。透き通る水晶の中には、橙の着物の少女と、見覚えのある青年の姿。これは自分達なのか。「これはこの世界なの?」「この世界かもしれないし、違う世界かもしれない」つるりとした水晶の表面に、少女の小さな手が触れた。 #水晶調律師 #空想話

2012-09-14 17:55:15
志水了 @rssyubinbou

目覚めると、深い色の木目が目に入った。どうやら縁側で本を読んでいるうちにうとうととしてしまったらしい。では、誰かに頬を撫でられるようなあの優しい感触は寝ている間の出来事だったのだろうか。顔を上げた先にいたのは、こちらをじいと見つめてくる白猫の姿だった。 #twnvday

2012-09-14 12:06:08
志水了 @rssyubinbou

水晶玉の中はどれも違う世界で、見たことのないところばかりだ。この世界は本当にあるものなのか、と問いかけるとそうよとあっさり答える。「水晶玉が視ている誰かの未来は、違う世界の未来なのかもしれないわ。所詮、占いは水晶玉の気まぐれなのよ」調律師は艶やかに笑う。 #空想話 #水晶調律師

2012-09-13 13:06:02
志水了 @rssyubinbou

調律師が持つ水晶は、人々の未来を視る為に使われているものだ。幾つもの人々を視続けて、少しずつ歪んだそれを少女が「調律」し、あるべき姿へと戻すのだ。少女の下で、束の間の自由を得た水晶はそれぞれ違う世界を映し出す。 #空想話 #水晶調律師

2012-09-12 19:40:32
志水了 @rssyubinbou

水晶玉にはひとつひとつ違う景色が映っていて、どれもがゆらゆらと動いている。その美しさに思わず手を伸ばすと、死にたいの、と冷たい声音で遮られた。「これは」「世界よ」少女は水晶玉を手に取った。水晶玉には別の世界があるという。 #空想話 #水晶調律師

2012-09-12 12:12:28
志水了 @rssyubinbou

黒塗りに朱の飾りをあしらった扉の先には、ひとりの少女が立っていた。薄紅の髪を肩で切りそろえ、浅葱色のきつい眼差しを持つ少女。少女の後ろの壁一面は、水晶玉が天井までびっしりと並んでいる。「どちらさま?」少女、水晶調律師はゆるりと笑みを浮かべながら、青年にそう問いかけた。 #空想話

2012-09-12 11:50:09
志水了 @rssyubinbou

我が家には縁の下に住み着いている犬と猫がいる。朝、彼らが勝手口にやってくると、じいと私の顔を見て動かなくなった。どうやらくっついてると暑いので、外に日除けを作ってくれとのことである。仕方がないのでその通りにしてやると、彼らはのびのびと寛ぎだした。優雅な居候だ。 #twnovel

2012-08-03 18:21:36
志水了 @rssyubinbou

我が家には縁の下に住み着いている犬がいる。黒と茶のいつも艶々とした毛並みだ。いつから来たのか分からないが、お腹がすいた時だけ勝手口にやってくる。最近とみに暑くなってきたので気になって縁の下を覗いてみると、猫と一緒に寝そべっていた。どうやら住人が増えたようだ。 #twnovel

2012-08-02 13:19:38
志水了 @rssyubinbou

彼は祭りの中、迷子の手を引いていた。賑やかな中、二人だけ静かで、二人の心を映しているようだ。今にも少女は泣き出しそうで。そんな時、空にひゅるりと今日一番目の花火が上がる。目を丸くした彼女と、遠くから聞こえてくる、少女を呼ぶ声。ああ、なんとか役目を果たせそうだ。 #twnvday

2012-07-14 10:34:49
志水了 @rssyubinbou

逢魔時に店を訪れる客がいる。その時間帯にしか現れない彼女は、おそらく人ならざるものなのだろう。何が面白いのか、いつも人が飲む珈琲を頼んでは窓から外を眺めている。「私も、ああしてみたいのう」ぽつり、話した彼女の背中は夕暮れの薄闇に染まり、妙に寂しそうに見えていた。 #twnvday

2012-06-14 19:50:20
志水了 @rssyubinbou

誰もいない夜の部屋で、ぼんやりと煙草に火を点ける。薄く煙が上がる中、窓のカーテンをじっと眺めた。細く開いた窓から、風が吹き込み、ゆらりと揺れる布きれ。その部屋にはかつていたあの人の名残はかけらも無く、ただひとりな事にどうしようもなく息が詰まりそうになった。 #twnovel

2012-06-04 12:34:31
志水了 @rssyubinbou

ふと生徒に呼ばれた気がして、振り返ったが、そこには日差しを浴びている机が並んでいるだけだった。昨日までは、教え子達が別れを惜しんで泣いたり、笑ったりと賑やかだった教室。教壇から見渡せば、まだその光景が鮮明に蘇る。彼は生徒達の顔を思い浮かべながら、静かに缶コーヒーを傾けていた。

2012-06-01 12:06:24