リレー小説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna 少し視線を上げれば顔を見ることもできるが、恐怖心が邪魔をした。そこに彼女の顔があればいい。でも違ったら？そこにあるのが全く別人の顔だったら…。そこまで考えたところで急に馬鹿らしくなった。これは夢なのだ。深刻になったところで目覚めれば忘れる。 #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo 目を閉じ､深く溜め息を吐いた｡｢珍しいですね､電車なんて｣すぐ隣から発せられた声に思わず飛び退く｡声を発した犯人は黒目がちの目を更に開き､そして手を口に当ててくすくす笑い出す｡紛れもない､彼女だった｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 手首はある。両手とも。安堵して呆けていると、彼女はゆっくりと自分の手首をさすった。しっています。こちらを見ずに言う。あれは、わたしのてではありません。彼女の言葉をうまく変換できない。わたしのあねのものです。さっきまでの笑顔はどこへ。 #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna 頭に靄がかかったように考えが纏まらない。「まったく姉にも困ったものですよね。今度は手首だなんて…」彼女の言葉の意味がわからず、ただその白く美しい手首を見つめる。「あら、もしかしてあなた、また忘れてしまったんですか？」 #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo 何か言おうと口を開きかけると､電車がひとつ大きく揺れた｡ゆっくりと速度を落とし､止まる｡無言で席を立った少女の後に続き､慌てて電車を降りる｡靴底に柔らかい腐葉土の感触｡周りを見渡すと､そこはあの湖の畔だった｡振り向くと線路は無い｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 湖の前になにか浮かんでいる。人の手首だ。夢だとわかっていても気分が悪い。ひらひらと手招きしている。彼女がその手をつかんでぐいと引っ張った。モヤから浮かびあがるように、手以外の部分が現れた。それは彼女と同じ顔をした少女だった。　 #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna ふふ、捕まっちゃったわね。手首を捕まれたまま、同じ顔の少女は妖艶な笑みを浮かべた。双子にしてもその顔立ちは余りにも似すぎていて、しかし醸し出す空気は全く違う二人。湖に視線を落とすと、三人の少女がこちらを見ていた。彼女達とそして…これは誰… #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo ｡奇異な状況に順応できずにいると､湖面の所々がぽこぽこと沸き出した｡次々と少女の白い顔が浮かび出す｡眩暈を覚え､傍らの双子のような二人の少女に縋るように目を向けた｡｢思い出した?ママ｣首を傾げながら､大人びた微笑みで少女が問いかける｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 私を取り囲むように同じ顔の少女が並んでいる。私が夢で生み出した少女達。「ママはいつまでここにいるの？私が、変わってあげましょうか？」少女達がゆるりと私ににじりよる。駄目だ、目覚めなくては。しかし、目覚めない。これは本当に夢…？ #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna 大丈夫、怖がらないで？ここはあなたの為だけにある場所なのだから。今度はどのワタシが必要なの？取り囲む無数の少女の中から、最初の彼女が囁きかけてきた。早くここに来た理由を思い出さなければ。彼女達の中から誰かを選ばなければ戻れないのだ… #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo その強迫観念に､今まで誰より親しく感じていた少女さえも恐ろしく感じた｡震える手で『私の知っている』夢の少女の手を掴もうとすると､突然､辺りが眩しく光った｡｢捜しましたよ!こんな所にいたんですね｣不釣り合いな明るい声に緊張の糸が切れる｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 空から、隣りに住むあの青年が駆けてくる。小走りで手を大きく振りながらこちらへ来る彼の姿は、こんな時にも滑稽なほと爽やかだ。目を丸くしていると、彼に手を引かれて私の体も宙に浮く。とっさに、彼女にも手を伸ばした。「こちらへ！」 #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna 伸ばされた無数の白い腕の中から彼女の手を取る。瞬間、まばゆい光に包まれ何も見えなくなる。気がつくと見覚えのある公園のベンチに腰掛けていた。「あぁ、よかった」言いながらこちらを覗きこむお隣さんは、心配顔すら春の陽射しより爽やかだった。 #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo ｢ほんと､あんたはいつも邪魔ばっか｣事態を飲み込めないでいる私の横で､少女が頬を膨らませている｡この子はこんな口調で､こんな顔もするのかと驚く｡少女の怒る横顔を見て､一気に頭の中のモヤが晴れた｡｢あ!やっと思い出したんですね｣ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 彼が嬉しそうな声で言う。そうだ、私はずっと目覚めていない。事故にでもあったのか。理由はわからないが、随分と長い間夢のなかに留まっている。退屈で、少女を一人、作り出した。ところが、少女達は私の意思に関係なくどんどん増えた。 #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna いつまでも目を覚まさないあなたを心配した方の依頼で、僕はあなたを迎えに来たんですよ。もう、戻れますね？すらりと差しのべられた彼の手を取ろうとすると、横から彼女がそれを止める。「ねぇ、私のことはどうするつもりなの？」真剣な眼差しに戸惑う。 #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo ｢それは問題ありませんよ！そもそもあなた方だってこの方の一部なんですから｣ ぱぁっと咲くような笑顔でしゃしゃりでる｡ その笑顔に安堵した私と対照的に､少女は不機嫌だ｡ 体が重い｡目が霞む｡世界の輪郭がぼやけ､急激な眠気に襲われた｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 目を開ける。見覚えの無い、白い布団にくるまれている。見覚えのある顔が覗きこんでいる。目の下のほくろ。「おねぇちゃん…」夢で見た少女と同じ顔の彼女。しかし、少女ではない。彼女は私の手首を強くにぎりしめて、涙をこぼした。「おはよ」 #怪説

マイティ @maitea919

@QO_cuo @krdyna 「貴女が夢の中から出していたSOSは、ちゃんと妹さんに届いていましたよ」涙ぐむ彼女の顔をぼんやりと眺めていると、反対側からお隣さんの声がした。白衣を着た彼は、現実の世界においても正視するのが憚られるほどに爽やかだった。 #怪説

熊人 @krdyna

@maitea919 @QO_cuo ｢また迷惑かけて…こんなお姉ちゃんでごめんね｣動きにくい口で途切れ途切れに呟くと､突然肩を揺さぶられる｡私は私のままでいいということ｡私が妹を羨ましく思うのと同じ位､妹も私に憧れているということ｡罵倒と嗚咽混じりに怒鳴り散らされた｡ #怪説

cuo @QO_cuo

@krdyna @maitea919 泣きじゃくる顔を見つめる。子供の頃と変わらない顔。一緒に遊んだあの湖で、この子は良く泣いていた。また、あの湖に遊びに行こう。夢で見た陰鬱な空気はないだろう。湖面は青く輝いて私たちを迎えてくれる。今度は夢でなく、ひとりでもなく。 完 #怪説