季節を繋ぐトンネル

おぼえがきですよ その他まとめ http://togetter.com/id/tora404
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齋藤虎之介 @tora404

長い長い出口の見えないトンネルを自転車で走っていた。出口の光が針の先ほどにしか見えない。せっせと自転車を漕ぎ出口付近にようやく着いた。今まで薄暗かったトンネルに目が慣れてしまい外の風景が眩しくて目を細めた。目が慣れてくるといつもとは違う眩しさの原因がわかった。一面真っ白な雪に覆わ

2013-02-23 18:08:20
齋藤虎之介 @tora404

れていた。トンネルに入る前は雪は積もっていなかった。入り口と出口でこんなにも違う風景が見られるのかぁと少し感心し、少し得した気分になる。しばし、その雪景色に見入っていたけれど180度方向転換し、またトンネルを走りだした。時々トンネルの天井を見ながら黙々とペダルを漕いだ。どこから雪

2013-02-23 18:09:00
齋藤虎之介 @tora404

が積もってるんだろう?どこから雪は積もってないんだろう?そう考えなら時々天井を見上げながらペダルを漕いだ。雪が積もっている場所と積もっていない場所がハッキリと分かれているなんて事はあり得ない。そんなことは分かっている。雪の積もっていない場所から最初は薄っすらと雪化粧、それが段々と

2013-02-23 18:09:32
齋藤虎之介 @tora404

厚くなり完全に真っ白な雪景色に変わる。そんないつもの風景から雪景色にグラデーションしているのは分かっている。でも、雪の降っていない場所から雪の降り積もった場所が見られるのではないか?なんとなくだけれど雪の降っていない場所に立っている僕に向かって真っ白に降り積もった雪景色の中から女

2013-02-23 18:09:51
齋藤虎之介 @tora404

の人が手を降っている光景をイメージした。ちょっと歩けば彼女の所へ行ける。けれど雪のない自分のいる場所と雪の降り積もった彼女のいる場所があまりにもコントラストが違うため絶対に行けないような気持ちになる。季節の違う世界ごしに2人で向き合っているような感覚に陥った。天井を見上げるとトン

2013-02-23 18:10:06
齋藤虎之介 @tora404

ネルのオレンジの照明がゆっくりと後ろから前に流れていく。照明のある所は明るく、照明と照明の間の区間は少し薄暗い。明るい場所から少し薄暗い場所へ。何度も何度もそれを繰り返す。照明の下に僕がいて、照明と照明の間の薄暗い所に先程の女性がいたらどうだろう?とイメージしてみた。先程のイメー

2013-02-23 18:10:23
齋藤虎之介 @tora404

ジした場所よりも遥かに近い場所で向き合っているけれど、やっぱり同じような気持ちになった。雪の降っていない場所と積もっている場所、照明の下と薄暗い場所。どの程度まで近づいたら辿り着けないというイメージが払拭されるんだろう。トンネルの天井を見上げながら黙々とペダルを漕ぐ。一瞬目の前が

2013-02-23 18:10:39
齋藤虎之介 @tora404

真っ白になり青空と白い雲が見えた。いつの間に入口から外に出ていた。自転車を止めしばし空を見上げる。出口の方は晴れてるんだろうか?曇ってるんだろうか?そう考えならトンネルの遥か彼方に見える針の先ほど光を見た。このトンネルがもう少し短かったらどうだろう?こちら側から出口の雪の降り積も

2013-02-23 18:10:54
齋藤虎之介 @tora404

った景色がハッキリと見え、そこに僕に手を振る女性が見えたら。雪の降っていない僕のいる場所、雪の降り積もった彼女の場所、それを繋ぐ薄暗いトンネルのおかげですんなりと向こう側に行けるような気がした。なんだか嬉しくなってトンネルをまた引き返した。きっと出口も晴れているそんな気がした。

2013-02-23 18:11:12