よいか。魔界大冒険はね…

「ドラえもん のび太の魔界大冒険」における科学と魔法の扱われ方や虚構としてのまとめ方に関する素晴らしさ概要
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飛軒 六 @tobunoki

よいか。魔界大冒険はね、もしもボックスを使ってパラレルワールドを造る。もしもボックスに電話をかけた時点で、世界は改変され、科学の世界から魔法の世界に変貌する。これだけだと、普通の平行世界の話だ。しかし、物語の途中、たいへんなことが起こってしまうのだ。(続く)

2013-03-15 21:50:45
飛軒 六 @tobunoki

(承前) それは、ドラたちが問題解決の為に、タイムマシンを使って遡行し、魔法世界から科学世界へ時間軸を経由して帰還するとき、まあこれは実にドラらしいのだが、タイムマシンの抽斗を空けっぱにしてしまうのだ。間抜けだ。そして、この開放された時間トンネルを、魔界の魔物が通り抜けて来る。

2013-03-15 21:55:12
飛軒 六 @tobunoki

(承前) 科学の世界のドラは科学の道具が使えるが、魔法世界に行ってもその道具を使うことができる。科学の世界の存在が、科学の力とともに、魔法世界に侵入する話だ。だから当然、魔法世界の存在がその魔力とともに、科学の世界に侵入することもできるのだ。それが起こってしまった。大変なことだ。

2013-03-15 21:59:30
飛軒 六 @tobunoki

(承前) メジューサが科学世界に乗り込んだ以上、最早科学世界もまたもとの世界ではない。その証拠にこの物語は、序盤から、もしもボックスを使う前から動く石像という魔界の存在が登場する。もう魔法の力が現実に影響を及ぼしている。時間軸でくっきり分かれていた世界の境界が溶け出しているのだ。

2013-03-15 22:03:37
飛軒 六 @tobunoki

(承前) だからこそ、最後、もしもボックスを使って、全てを元に戻し、大団円を迎えたあとに、のび太がチンカラホイととなえると、しずかのスカートが反応してしまうのだ。これは魔法か偶然か。風のせいだろう、というオチで物語は閉じるのだが、魔法かもしれない余地を残しているのである。

2013-03-15 22:06:44
飛軒 六 @tobunoki

(承前) 従って、この物語は、その内部で現実(科学)と虚構(魔法)を時間軸で区切り、区切ったあとに接続し、綯い交ぜにして、結果として、最初から最後まで現実と虚構が重なった一つの別の世界を完成させ、閉じさせるという、荒技をやってのけているのである。これが凄い。凄過ぎる。

2013-03-15 22:10:06
飛軒 六 @tobunoki

(承前) 読者は読み始めは現実(科学)世界に居る。だが途中で虚構(魔法)世界に踏み込み、いつの間にか「あ、最初から虚構だ」という事実に気付き、そして物語に呑み込まれてしまうのだ。この美しい構造こそが、私が最も好む大長編ドラの一つであると公言して憚らない大切な理由なのだ。(おわり)

2013-03-15 22:13:31