田中ピカ○ュウの火力主義講座#5

Wグデーリアンの陸戦講義の裏メニュー的な何かです。 今回はドイツ軍の砲兵運用についてのお話がメインです。
8
田中ピカチュウ @sovozisan

機動力と火力という、相反する要素のどちらを優先するか、あるいはどうやってバランスさせるか、という課題は第二次世界大戦中の各国にとって悩みの種でした #火力主義講座

2013-03-21 23:56:58
田中ピカチュウ @sovozisan

イギリス軍は第一次世界大戦方式の火力戦の復活を優先して組織改革を行いましたが、その間、ドイツ軍もただボーッとしていた訳ではありません。 #火力主義講座

2013-03-21 23:57:50
田中ピカチュウ @sovozisan

ドイツ軍は砲兵火力を不必要と考えていたのではありません。第一次大戦時に生まれた空陸一体の突破作戦という概念がより精密に再現されたのが電撃戦ですが、それと同時に砲兵の火力集中を行うための基礎的な組織も細々とですが維持されていたのです #火力主義講座

2013-03-21 23:59:04
田中ピカチュウ @sovozisan

イギリス軍と異なり、軍直轄の野戦重砲兵や師団砲兵を集中指揮するための砲兵指揮官は開戦前から配置されていましたし、砲兵火力集中の訓練も実施されています #火力主義講座

2013-03-22 00:00:13
田中ピカチュウ @sovozisan

この点では開戦前のイギリス軍よりもはるかに良い状態を保っていたとも言える程です。 #火力主義講座

2013-03-22 00:00:41
田中ピカチュウ @sovozisan

けれども開戦前までの演習で実施された砲兵の集中規模はせいぜい100門程度のものでしかなく、第一次世界大戦とは比べようも無い規模です #火力主義講座

2013-03-22 00:01:06
田中ピカチュウ @sovozisan

イギリス軍より良好とは言うものの本格的に火力主義を復活させるには、野砲の生産も砲弾の生産もまったく間に合いません。緒戦の火力優位は連合軍よりは良好といった程度でしかないのです。 #火力主義講座

2013-03-22 00:01:41
田中ピカチュウ @sovozisan

このためにドイツ軍砲兵は電撃戦の表舞台に立つことができず、補助的存在に甘んじることになります。 #火力主義講座

2013-03-22 00:02:08
田中ピカチュウ @sovozisan

それでも敵の抵抗が弱く、しかも良好な道路網が発達したフランスの戦場では、急進撃する戦車部隊に牽引式の野砲兵はよく追随してあまり破綻を見せません #火力主義講座

2013-03-22 00:02:56
田中ピカチュウ @sovozisan

ドイツ軍全体の機械化率はひいき目に見ても20%程度でしかありませんから、大砲を馬でガラガラ牽いていても置き去りにされることはありません #火力主義講座

2013-03-22 00:03:31
田中ピカチュウ @sovozisan

ドイツ機甲部隊とはいえども長距離の進軍速度はナポレオン時代と大した差がないのです。 #火力主義講座

2013-03-22 00:04:03
田中ピカチュウ @sovozisan

もともと限られた工業力を戦車と取り合いになる運命にあった自走砲はただでさえその生産を抑制されていましたが、緒戦で明らかな破綻が無かったことで砲兵の自走化はさらに停滞してしまいます #火力主義講座

2013-03-22 00:04:38
田中ピカチュウ @sovozisan

突撃砲という優れた発想が早くからあったにもかかわらず、歩兵用の直接照準射撃を行う重装甲自走砲の配備はなかなか進みません。 #火力主義講座

2013-03-22 00:05:26
田中ピカチュウ @sovozisan

こうした状況で1941年春を迎えたドイツ軍は来るべき対ソ連戦というかつてない大規模機動作戦のために砲兵の組織改革を実施します #火力主義講座

2013-03-22 00:06:45
田中ピカチュウ @sovozisan

ポーランドやフランスでは破綻しなかったものの、比べようもなく広大で、しかも道路事情が悪い長距離の進撃を必要とする対ソ戦、今度こそ牽引式の砲兵は使い物にならないだろう、という予測によってドイツ軍はかなり極端な改革を実行に移します。 #火力主義講座

2013-03-22 00:08:17
田中ピカチュウ @sovozisan

それは軍団砲兵の事実上の解体です。ドイツ軍は火力集中のための予備として存在していた野戦重砲を師団レベルに分散配置し、師団砲兵もまたより下位の組織に分配してしまいます。 #火力主義講座

2013-03-22 00:09:21
田中ピカチュウ @sovozisan

これでドイツ軍は、中隊規模であっても、何らかの専用砲兵を持つようになります #火力主義講座

2013-03-22 00:10:19
田中ピカチュウ @sovozisan

これは下級指揮官が上部組織に対して砲兵支援を要求しなくとも、小規模ではあってもすぐ使える便利な砲兵を自分専用に持たされたということです #火力主義講座

2013-03-22 00:11:32
田中ピカチュウ @sovozisan

その代わりに、大規模火力集中の基盤である軍団砲兵は瀕死となり、大規模火力集中という概念は消滅してしまいます。 #火力主義講座

2013-03-22 00:12:22
田中ピカチュウ @sovozisan

機動力向上のための火力分散は徹底されましたが、師団レベルには砲兵指揮官が置かれず、本部機能を欠いているために、分散した砲兵の再集中は考慮されていません。

2013-03-22 00:13:29
田中ピカチュウ @sovozisan

このようにかなり思い切った改革ですが、ここにはドイツ軍の抱いていた大規模かつ広範囲な機動作戦にあたっての危惧があります。 #火力主義講座

2013-03-22 00:14:30
田中ピカチュウ @sovozisan

砲兵火力をここまで分散した背景に存在したものは、火力集中を行うために上位組織に砲兵をまとめ、広大な戦場を駆け巡る戦いを始めると、砲兵は必ず遅れてしまい、軽野砲3個大隊、中口径野砲1個大隊といった規模の師団砲兵は東部戦線の機動戦に対応できない、という予測です #火力主義講座

2013-03-22 00:17:28
田中ピカチュウ @sovozisan

たとえ小規模であっても局所に即応できる火力を準備することの方が、大規模な火力集中よりも有益であるという考え方が電撃戦の根底にあることが窺えます #火力主義講座

2013-03-22 00:18:32
田中ピカチュウ @sovozisan

さらに言えば、大規模火力集中を準備するような時間が、電撃戦には許されていないということでもあります #火力主義講座

2013-03-22 00:19:15