政党政治家と官僚の関係

民主党がついに理解できなかったもの
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@NaoyaSugitani

清水唯一朗『政党と官僚の近代』(藤原書店、2007年) 服部龍二『日中国交正常化』(中公新書、2011年)を読んだ。思うに、民主党政権失敗の最大の要因の一つが脱官僚という倒錯した目的を掲げた点にあったと思う。日本近現代史を正しく読み取らなかったことに、民主党の失敗の原因があった。

2013-04-26 21:15:34
@NaoyaSugitani

そもそも政党と官僚というのは日本の政党政治が形成されて以来深い関係にあった。立憲政友会を中心に形成された原敬内閣は大臣クラスに元官僚出身者を多く起用し、政党に政権担当能力と行政能力を身につけさせた。床波竹二郎は代表的な存在である。彼らの存在が政党政治には不可欠だった。

2013-04-26 21:19:04
@NaoyaSugitani

一方政友会に対して同志会・憲政会・立憲民政党に連なる勢力は、結成以来官僚勢力が中心となって運営されてきた。加藤高明・浜口雄幸・若槻礼次郎などはその代表である。彼らは行政をよく理解し、安定的に政策を実行していった。政友会・民政党両党ともこうした官僚政治家の存在が重要だったといえる。

2013-04-26 21:21:45
@NaoyaSugitani

つまり政党政治の形成には官僚の存在が不可欠だった。それは戦後においても、吉田茂が池田勇人や佐藤栄作といった官僚出身者を自党に引き込んだことから見ても、継承されていた。日中国交正常化においても外務官僚は特筆すべき活躍を見せた。官僚と政党は相互に絡み合いながら、存在していた。

2013-04-26 21:24:03
@NaoyaSugitani

しかし自民党の長期政権が続く中でこうした政党と官僚の在り方に疑義が生じるようになった。また、官僚の汚職やモラルの低下といった問題がある意味誇大にメディアに取り上げられ、官僚不信が高まっていった。そうした中で民主党は政治主導を掲げて政権交代へと邁進した。

2013-04-26 21:25:45
@NaoyaSugitani

民主党は結果的に政権交代をなし得た。脱官僚を掲げ、官僚から行政面におけるイニシアティブを獲得しようとした。しかし、それは無理だった。国家戦略室の無力さに表れているように、官僚のやってきたことを限られた人数の代議士で代替するのにはそもそも不可能があった。

2013-04-26 21:27:17
@NaoyaSugitani

致命的だったのは、民主党に行政面での経験をほとんどしていない政治家がいきなり脱官僚の名の下に政治主導を始めようとしたことだった。鳩山由紀夫・菅直人・小沢一郎らには行政経験があったものの、それらは全て十分なものではなかった。

2013-04-26 21:29:09
@NaoyaSugitani

結果として民主党はほとんど実のある政策を実施できなかった。更に民主党の問題点は政党としての統治が全くなっていなかった点、代議士の能力がそもそも十分でなかった点などが考えられる。だが政治家と官僚という不可分のものを分けようとしたところに錯誤があったようにも思われる。

2013-04-26 21:30:38
@NaoyaSugitani

自分たちの能力や自党の実力を見誤り、政治主導という倒錯した理念を展開して政権に就いたものの、政権は混迷を極め瞬く間に求心力は低迷した。支持率は急落し、更に大臣の失言などが追い打ちをかけた。結果自民党末期政権のように首相の首を挿げ替えることでしか政権を維持できなかった。

2013-04-26 21:33:39
@NaoyaSugitani

民主党は結局、自分たちの能力や実力や政党・官僚の統治機構の相互関係などをほとんど理解せずに政権運営を行おうとしたとしか思えない。民主党が一年前の選挙で57議席を獲得したのは、まさに民主党政権三年間の評価だった。当然の結果だといえよう。

2013-04-26 21:36:24
@NaoyaSugitani

加藤・若槻・浜口ら官僚政治家はその行政処理能力に卓越した能力を発揮した。こうした歴史的文脈を果たして政治主導という空疎な名目にとりつかれた民主党代議士がどれほど理解していたかは怪しい。空虚な世論やメディアに乗せられ、自分たちを過大評価したまま政権交代してしまったと言うべきだろう。

2013-04-26 21:39:15