【竹の子書房】(BL)玉手箱 →ガーデン← 水晶箱(GL)【BLGL連携】
@ts_p 「どうしたのよ、らしくない」 「楓、ちょっと聞いてくれる? 今年はねー、狙ってた人がいたのよ。会社に出入りしてる業者さんなんだけど……結婚してたー!」 いつきは相変わらずだ。「今年もひとりかぁ。またここ貸し切っていい?」 「いいよ」 ――今年もまた、ふたり。
2010-11-18 00:29:12@ts_p いつからだろう。このままで良かったはずなのに、もう私は我慢できない。彼女が他の誰かと一緒にいるなんて我慢できない。暗い気持ちと共に生じた蔓は身体を縛り心を苛む。彼女は私の気持ちを知っているはずなのに。それとも、知っているから? 花が散り、血肉色の果実が腐り堕ちていく。
2010-11-18 00:39:16@ts_p 「それにしても、わたしら、福谷先輩の何処が好きだったんだろうね」 千尋と顔を合わせるたび、その話になる。一過性の熱病と言うにはあまりにも熱く、そして未だに尾を引き続けている。同じ価値観を持つもの同士、千尋ともそうなるかと思ったが、そういう問題でもないようだ。
2010-11-18 00:47:25@ts_p 「うーん、やっぱり先輩だから?」 ふたりが出す結論はいつも同じだった。それぞれの心と身体に、先輩が残っている。それが残り続けている限り、私達はずっとこのままなのだろうと思う。私も千尋もそれを自覚している。私達はずっと、我儘な花の香りが強く残るこの場所から離れられない。
2010-11-18 00:53:21@ts_p 「GL<ガーデン>」より「デンドロビューム」。ガンダムのアレしか頭に浮かんでこなくて困ったじゃないか!w #tknk
2010-11-18 00:53:55@ts_p 花に囲まれた喫茶店。幼なじみがはじめた小さな店。店内も季節の花々が飾られ、心地よい空間になっている。聖夜にその店を貸し切り、明け方まで騒ぐのがここ数年の日課になっていた。いつも通りコンビニのローストチキンとケーキを抱えて店に入ると、笑顔の楓が出迎えてくれた。
2010-11-18 01:02:06@ts_p 私からコンビニ袋を受け取った楓は、てきぱきとそれらを皿に並べ、テーブルへ運んでくる。そしてテーブルの中心にはいつものサラダ。裏庭で自家栽培しているハーブで、ロケットなんとかというらしい。苦みが癖になるおいしいサラダだ。ケーキに蝋燭を灯し、室内灯が消される。
2010-11-18 01:04:46@ts_p 蝋燭の頼りない明かりに、お互いの顔が照らし出される。楓は私の顔をまっすぐ見つめていた。その唇がわなわなと震え、その瞳からは大粒の涙が溢れる。「ごめんなさい……いつきが……好きなの……」 涙を拭きながら、消え入りそうな声で楓が告げた。
2010-11-18 01:07:56@ts_p 私は楓の側に行き、その肩を抱きしめた。その間もずっと、楓は「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していた。謝るのは私の方だ。たぶん、ずっと前から楓の気持ちに気付いていた。なのに、それを受け止めるのが怖くて、目を背けていた。気付けば、私も泣きじゃくっていた。
2010-11-18 01:10:48@ts_p 私と楓は抱き合ったまま泣き続けた。泣いて、泣いて、泣き疲れて。そしてお互いに顔を見合わせた。「……酷い顔」 照れ隠しの悪態がつい出てしまう。「いつきだって」 楓の顔に笑顔が戻る。今度は二人で笑いあった。そして、そっと唇を重ねた。
2010-11-18 01:14:02@ts_p 来なければ良かった。招待状の「出席」にバツを付けて送り返したはずなのに、自分はなんでこんなところにいるんだろう。胸が痛む。彼女に付けられた傷が痛む。あの刃で全て終わった。彼女も私も転校を余儀なくされ、離ればなれになった。そうしたのは全て私だ。
2010-11-18 01:22:51@ts_p 何故そうしてしまったのだろう。嫌いだから? 違う。そうじゃない。私はずっと彼女のことが好きだった。あの日から、あの日彼女に想いを告げられてからずっと。初めて身体を許したのも、彼女のことを愛していたからだ。なのに、何処で歯車が狂ってしまったのだろう。
2010-11-18 01:25:34@ts_p ずっと彼女に見て欲しかった。彼女が私から離れていくのが怖かった。だから、壊れてしまうならいっそ、自分の手で全てを壊してしまいたかった。彼女が私を忘れるくらいなら、嫌って欲しかった。憎んで欲しかった。永遠に消えない傷を刻みたかった。でも、その傷は私の身体だけに刻まれた。
2010-11-18 01:28:17@ts_p 今、私はその傷口が塞がらぬよう、こうして彼女の門出を見送っている。ブーケが舞い、女たちが騒ぐ。その時、彼女と視線が重なった。彼女の顔に困惑の色が浮かぶ。やっぱり来なければ良かった。私は今、どんな顔をしているだろうか。それを知るのが怖くて、そっと会場を後にした。
2010-11-18 01:33:03@takenoko_GL 色々焦って呟きます。組版担当の方、竹の子書房掲載時の名称を「ゑな」から「真佐雪」に変更をお願いします。ううむこれで大丈夫かな?
2010-12-18 01:18:37