2010/09/11 ツイッター小説 お気に入りセレクト

影山影司 @apto117

#twnovel その地方には、死者を蘇らせる伝説も秘薬も儀式もない。特別な人間を食う文化も、死後神格化する伝統も、墓を建てたり冥福を祈る思想もない。死は死で、それで終わりなのだと族長は語る。ただ、死者の心臓に杭を打ちつけ、二度と復活しないようにして土に埋める風習だけがあると。

. @gfs5

#twnovel とっぷりと星に沈んだ夜、我々はカレーを温めて食べるだろう。星の形に切ったはずが煮崩れて消えたにんじんや拾い集めた肉片の入ったカレーは我々の腹を満たすだろう。うまいカレーの香りは天の川の流れに乗ってどこか遠くの星に届くだろう。その星の者もまた、カレーを作るだろう。

ゆず @nanakoro8

#twnovel 99年振りに発掘された「オオサカ」に調査員が向かう。荒廃が進んでいて完全な形で残っていたのは「エヴェッサン」おそらく儀式に使われた像なのだろう。不気味に笑うそれは、一体今まで何人の人間に微笑みかけたのだろうか。私はかつてそこに在った「ニホン」に思いを馳せた。

ゆず @nanakoro8

#twnovel 『わたしの夢』あたしは火星で生まれました、でもあたしの曾おじいさんは地球人らしいです。地球って一体どんな星なんでしょう、天体望遠鏡でも見つける事ができません、でもおかあさんの話では宇宙のどこかにあるみたいです。だから、私の夢は宇宙探検家になって地球を探す事です。

@yukiru_heath

#twnovel 竜人族の少女が切り盛りする鉱物の店がある。先日雇われたのは青い髪の青年で、これが奇妙な癖があった。ふとした瞬間に手から星が零れ落ちるのだ。今日はその星が溢れて仕方無い。少女は少し考えて言った。「その大きな石に触って」すると星が石に吸い込まれて中で煌めき始めた。

shoe tokyo @shoetokyo

そうだよそこには音があったんだよと耳打ちをする伝説の二人の片割れが、でも誰もその音を聞いた人間はいなかったんだけどねと肩をすくめている伝説の二人のもう片割れが、つまりそこに君たち二人が生まれる余地があったわけだなと呟く声が互いの不在をたしなんでいる。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

夜が剥がれ落ちたら朝がくる。また塗りなおして夜がくる。犬の遠吠えは寒くなるという知らせ。太陽の隣りが今年は空くのか、いまから心配になってしまう夜明け。 #twnovel

シンイチVR2 @shinichikudoh

「君は一度も話していないが、言いたいことがあれば自由に語ってくれて構わんのだよ」「そうしたいのも山々ですが、下手に口を滑らせて嫌われるのが怖くて。逆になぜ貴方が躊躇いもなく下らない事ばかり話せるのか教えてほしい位で」「もともと全員から嫌われてるからさ。君も含め」 #twnovel

@TAKEZAEMON

#twnovel 僕は宇宙人です。僕は突然現れた宇宙船に拉致されて、ここに連れて来られました。でも、僕の体がケイ素でできていることとあまりにも小さかったことから、今日まで発見されなかったのです。あぁ、僕は故郷に帰りたい。皆さんが勝手に名付けている、小惑星イトカワに…

tokoya @tokoya

#twnovel 真面目に生活していても、いつ冤罪で犯罪者にされてしまうか分からない昨今。俺は冤罪を逃れるために画期的な装置を開発した。常に自分の頭上に浮かんで、周囲を録画する装置だ。これなら何かあっても身の潔白を立証できる。なのに俺は逮捕されてしまった。映画館で盗撮した罪で。

simmmonnnn @simmmonnnn

#twnovel 「大人になるって、どういうことなのかしら」「からだが『大』から『小』になるのさ」「逆ではなくて？」「文字を思い浮かべてごらん。『大』は子供の寝相、『小』は大人の寝相」「今はもっと縮こまってるけど」シングルベッドで二人は笑い合う。シーツに付いた血は乾き始めている。

kyo365 @kyo365

【茜荘】 ボロボロのアパート、茜荘。大学生活課の紹介。築40年。決めた理由はトイレが綺麗だった事。盗まれる物がないから鍵かけず。たまに知らない奴が寝てた。いろんな奴と酒を飲んだ。熱血。芝居虫。ブレザー野郎。殻籠り。イベント屋。 あいつら、今、何してるんだろう。 #twnovel

ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 姉と私は化粧室で互いの服を交換して着替えた。入れ替わって彼を驚かせてやりたい。双子の姉妹の子供じみた悪戯。「彼はあそこのテーブル」姉は指をさして妹の背中を押した。私が姉の恋人に会うのは初めてではない。幼い頃から姉の持っているものが欲しいのは今も変わらない。

裏ちび汰 @negamymind

虫の音が聞こえ出してだいぶ経つけれど、動くとまだ暑い。「あのさ…」裸のあなたが仰向けのまま切り出した。やっぱり。夏とともに始まった恋、夏の終わりにリンクした予感。「一緒に、暮らさない？」「？！」予想外の言葉に返事ができない。慰めに聞こえてた虫の音が祝福に変わる。 #twnovel

roardel @roardel

魔女のサーラが弟子をとった。森中がその話題で盛り上がった。「普通の人間の女の子だよ」リスが言うと、なーんだ、とみんな落胆。そんな中、思慮深いフクロウだけは、ホウ、と感嘆の声を上げる。「村から50マイル離れた森まで分け入ってくるなんて、普通の決意じゃないよ」 #twnovel

れいらさんの裏垢 @unjealous

余所行きの服を着て出掛けてみる。普段はお洒落に無頓着なので喜んで貰えるだろうと思ったのだけれど、ボクの姿をひと目見たキミは少しだけ悲しそうな顔をした。そんな事は初めから分かっていた筈じゃないか。溜息を一つ吐いて、妻のくれた腕時計に目を落とす。 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

タクトが手から滑り落ちた。私は平静を装って素手で指揮を続けたが、優秀な演奏家たちは気づいただろう。皆一瞬だけ視線で何事かと訴えながらも手は止めない。音楽に生きる者に必要なのは目でも耳でもなく、手だ。神様、どうか。これだけは奪わないでください。指先の感覚が、段々。 #twnovel

櫻木 えり @erin_sakuragi

#twnovel ずっと動きっぱなしで、一日中大忙しの君。みんなが君をみては、目を細め、その眩さを称えている。どれだけ焦がれても、僕じゃあ君を手に入れることなんてできやしないけれど。ずっとずっと君をみつめているよ。大好きな僕の太陽へ、向日葵より。

Gabb-- @itisnot

商品を渡し、レシートを渡した。それで私達の関係は終わったはずなのに、その客は動こうとしなかった。何かを待つような目線でこちらを見て、やがて「これで終わりですか？」と言ってきた。頷くと、彼はレジ台を強く叩きレシートを広げ見せてきた。777円。ええと、…おめでとう？ #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

ピザを買うお金で熱海に行けるねと言ったきみ、それが発端だった。そうと決まれば支度は十五分、靴を履きながら少しでも前へ進みたくて浮き足立っていた。あの頃はそんなことの繰り返しで、それが知らない間に積み重なっていた。靴のかかとの折り目、行き先がない土産。 #twnovel

layback @laybacks

ちっ、舌打ちする癖いい加減にして？　生意気言ってんじゃねぇ、俺は女の髪を掴み床の上を引き摺り回す。やめて、やめて、すこん、と手応えが抜け、手には髪の束。頭皮がへばりついている。おーすまんすまん、俺は床で呻いている女の髪を再び掴み、こっち向けおい、言え、誰が悪い？ #twnovel

いつ @en_eo

#twnovel ある雨の日、死神と出会った。傘を持っていない彼は、道行く人を真似て代わりに鎌を差していたが、当然のようにどぼどぼに濡れている。笑いかけたとき、彼と目が合った。うわ、と一歩足を下げる。「…すみません、タクシーの番号教えてください」　死神もタクシーに乗るのか。

藍　真史 @shin1960

#twnovel UFOとは大きな乗り物だと思っていました。だからこんなものがUFOだとは思わなかったのです。机の上でじっとしたまま動かない、てんとう虫ほどのお皿が。今引き出しの中には２０機ほどが待機してます。砂粒みたいなのが行ったり来たりしているのは、たぶん宇宙人なのでしょう。

すわぞ @suwazo

#twnovel 目の前に40億年前、1億年前、1万年前、1千年前の地球が並んでいる。それぞれコピーしてスペアを作っておいたそうだ。地球最後の生存者は呆然とそれらを見つめる。「どこからやり直すかね？」そう問われた。すぐに答えを返せない。あなたは誰ですかと問うこともできずにいる。

17+1 @17plus1

「大きくなったら歌手になりたい。しかし今のわたしは音痴だ。相対音感もありゃしない。だからパソコンを駆使し音の波をいじくることにした。振幅をいじり周波数をいじり波の形をいじり美しい声色を創り出した。ほとんどボーカロイド。どう、すごい？　まだeの音は無理なんだきど」 #twnovel