山本七平botまとめ/「人が何に対して被統治意識を持つか」が最大の問題/~政府ではなく会社に被統治意識を抱く現代人~

山本七平著『存亡の条件――日本文化の伝統と変容――』/第二章 民族と滅亡/統治する側・される側/64頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【統治する側。される側】今まで述べて来たような状態が、最初に、その破局を露呈した部分は、被統治意識と統治という問題であった。 これが『滅亡について(ペリ・ハローセオース)』の最大の問題であったことは、ヨセフスはよく知っていた。<『存亡の条件』

2013-03-31 10:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

②そしてこれがはっきり露呈してくるのがヘロデ王の時代であり、彼はこの時代に全著の約三分の一を費やしている。 最近はアメリカでも「被統治意識」は問題になっている。 多くの人は連邦政府や州政府に「統治されているという意識」をもたず、逆に企業や組合に対してこれをもっている、という。

2013-03-31 10:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

③これに対してアメリカは強い反省があるが、日本は逆で、この点では、日本の方が先進国ないしはそのタイプの正統派かも知れない。 たとえば「法もしくは法に基づく政府の指示を無視しても組合の指示に従う」という場合、彼が被統治意識をもっている対象は組合であって政府ではない。

2013-03-31 11:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

④また「法は無視するが会社の社規社則は守る」 「政府の呼出しは無視するが、会社のタイムレコーダーには突進する」 という場合、その被統治意識の対象は企業であって政府ではない。

2013-03-31 11:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤また断乎として土地収用を拒否していた人間が、上役から「君、あまり頑固にして新聞だねになると、昇進にひびくよ」といわれただけで拒否をやめる場合、彼の意識にある「統治者」は会社であって政府でも法でもない。 従ってこういう人間が、会社の指示で法を破っても当然であろう。

2013-03-31 12:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥人が何に対して被統治意識をもつか、という場合、これが非常にはっきりしているのは、戦前では「天皇」であった。 この場合、問題は人びとのもつ被統治意識であって、天皇個人の意向はそれと無関係である。 これがはっきり出ているのが、イスラエルの神政政治という概念である。

2013-03-31 12:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦『君は天皇を見たか』という設定は成り立つが、「君は神を見たか」という設定は成り立たない。 「玉音」は鼓膜に達するかも知れないが、「神音」は、少なくとも、鼓膜は震動させない。 もちろん、その存在を証明した者はいない。

2013-03-31 13:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧従ってここに「被統治意識とは何か」という問題が、夾雑物なしに提出されているのである。 古代によく民の動揺を防ぐ為「喪を秘す」という事が行われた。 これは「喪を秘された」主権者は既に存在しないのだが、人々のその主権者への被統治意識はそのままに残しておく、という事であろう。

2013-03-31 13:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨従って、神が存在しなくとも、いわば「永遠に喪を秘す」という形で、神政政治は存在しうるわけである。

2013-03-31 14:27:57