結城浩『数学文章作法 基礎編』のオオカミさんによる感想

結城浩『数学文章作法 基礎編』について、メダカカレッジ主宰の大上丈彦さんが感想を書いてくださったのでまとめました。
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大上丈彦 @otakehiko

『数学文章作法』の感想を。

2013-05-03 08:45:57
大上丈彦 @otakehiko

『数学文章作法』:世の中に「わかりやすさを全く考えない猛者」は少ないと思うので、標準的な感想は「この本に書かれていることの、一部は実践してるけど、一部はやってない」だろう。私もそうだ。わかりやすい文章はみんなの願いで、入門書全体のわかりやすさレベルが上がるのは歓迎である。

2013-05-03 08:46:33
大上丈彦 @otakehiko

『数学文章作法』はかなり内容に踏み込んではいるが、基本的には「形式的なわかりやすさ」についての本である。ただこれは大事な切り分けと思う。実は私も「わかりやすさ」についての執筆依頼に対して、いろいろ考えて(難しくなって)やめたことがある(^^;)

2013-05-03 08:46:56
大上丈彦 @otakehiko

『数学文章作法』(のプレビュー版)を見て、なるほどこの手があったか、と思った。内容のわかりやすさは非常に相対的で、読む人のバックグラウンドによって同じ文章でも伝わり方が異なる。だからそれを一概に語るのは難しい。形式的なわかりやすさならある程度一般的なこととして書ける。

2013-05-03 08:47:19
大上丈彦 @otakehiko

それで「この手があったか」と思ったわけだが、そう思ったところで、そういう本を私が書けるかというと、書けないんだけどね。『数学文章作法』の緻密さを見ると、書くのやめて良かったと思うし、無理だと諦めたフィールドで良い本ができてくると、いやーすごい人っているなあ、と素直に思う。

2013-05-03 08:48:03
大上丈彦 @otakehiko

それはともかく、これからの校正作業は『数学文章作法』レベルのわかりやすさチェックは標準になるだろう。ああ、プログラム言語の構文チェックのように完全自動化が可能なら校正さんに出す前に自分でチェックかけられるのだが…、もう最初から謝っとく。すみません、よろしくお願いします。

2013-05-03 08:48:36
大上丈彦 @otakehiko

ところで、『数学文章作法』は「数学に関わらない人にも読んで欲しい」という感想がたくさん出るだろうと予想する。それはそうだなと思うのだけれど、一方で「数学に関わらない人には読みにくいだろう」とも思う。つまり、この本の「主題」は一般的だけど、「対象読者」は限定的だ。

2013-05-03 08:49:07
大上丈彦 @otakehiko

その点、『数学文章作法』は「数式混じりの文章を書く人のための」と言っている。これはとてもウマい。実はこれが一番「ナルホド」と思った。そうかこういう読者の絞り方があったか。この言い方なら読者は絞っていない。でも数式混じりの文章を書く人って数学をわかってる人だよね。

2013-05-03 08:52:38
大上丈彦 @otakehiko

『数学文章作法』はメルマガでプレビュー版を読んでいたが、一冊にまとまるとまた違う感想も出てくる。メルマガのときは想定読者≒マーケティング的なことにあまり気が回らなかったが、内容とあわせて、勉強になった。

2013-05-03 08:54:11
大上丈彦 @otakehiko

私ももっとわかりやすい本を書きたい。『数学文章作法』みたいな本が出ると読者側がきっとそういう目で私の本を評価する。ハードル上がる感あり。でもね、ハードル上がるのって大いに結構なのだ。読者さんだって、わかりやすさにおいて高いレベルで競争になるのは歓迎してくれるだろう。

2013-05-03 08:55:13
大上丈彦 @otakehiko

今後は「数式混じりの文章を書く人」には必携というより「準拠が常識」になると思う。「本当に革新的な技術は未来の当たり前」って、技術だけの話じゃないんだよね。丁寧で、役に立って、面白い本をありがとうございました。『数学文章作法』の感想以上。

2013-05-03 08:55:49