「ショウダウン・イン・キンダチ・ストリート」　――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

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サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より。

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キョート・リパブリックは、その名の通り日本にありながら日本から独立、自治を行う自主国家である。電子的鎖国を行う日本大陸にあって、唯一外国に開かれた空港を持ちながら、平安時代のレリックを多く有する、観光都市としての側面もあわせ持つ古き都市。 1

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そして……だからこそ、多くのニンジャが生息する。かつて、ネオサイタマの「ソウカイ・シンジケート」と、東西を二分する規模の巨大組織、「ザイバツ・シャドーギルド」が存在したことは、みなさまがご存知のとおりだ。 2

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だが、そのザイバツも崩壊した。もちろん、その事実は一般市民の、そして諸外国の目からは巧妙に隠蔽されている。重要文化財であり最大の観光名所でもあったキョート城は爆破されたことになっているし、上空に浮かぶ暗黒太陽のごとき超自然の渦巻きがなんなのかを説明できるものはけして多くない。 3

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しかし……ニンジャがその姿を消したわけではない。ザイバツ崩壊後のキョートにも、未だ多くのニンジャが生息している。あるものは観光都市アッパーガイオンに、あるものは観光都市を支えるアンダーガイオンに、あるものはセキバハラの荒地に、またあるものはキョートを離れ東に……。 4

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人が人で在り続ける限り、ニンジャもまた存在するとでもいうのだろうか……。一例を示そう……試みに、カメラを、観光都市アッパーガイオンの整備された一区画を抜けて、アンダーガイオンを五層まで下ろせば……見えてくるのはキンダチ・ストリート。 5

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織物、チャ道具、オリガミ、バンブーインテリア……平安時代から続く芸術的工芸品の工房が軒を連ね、「マニファクチャ的」「伝統です守りたい」「みんな団結で」などの意識的ノボリはためくこの区画に……今、三人のニンジャが対峙している。 6

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一人はダンスマカブル。藍色装束にシルバーの美的メンポ。深く腰を落とした姿勢からはゆだんないカラテアトモスフィアが立ちのぼる。右手には鎖分銅を振り回し、左手に構えたカマがギラリと光る。古くからキンダチ・ストリートを支配するアマギキ・ゴジョカイ・ギルド所属のニンジャである。 6

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彼の視線の先には二人のニンジャ。一人はアマギキに敵対する、新興勢力ベリャーエフ・シンジケート所属のニンジャ、スパロウ。普段身に着けているロングコートを脱ぎ捨て、スタイリッシュストライプベスト風ニンジャ装束と、斜めかぶりのハンチング姿。腰には二丁のデッカーガン。 7

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そして最後の一人は……「裏切り者め」最後の一人を睨み、ダンスマカブルが吐き捨てる。「あの包囲を抜け出したのは褒めてやろう。しかし、そうまでしてベリャーエフに着く理由があるのか？」「なにしている、ダンスマカブル＝サン！殺せ！裏切り者を！」三人を取り巻く観衆の一人が叫ぶ！ 8

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それは黒地にシルバーの刺繍でヒシ・ガタ・クロス模様を抜いとったオーガニックシルク製ハン・テンをまとった太った男。ヘイキチ・アマギキ、アマギキ・ゴジョカイのボスである。「奴は俺の愛しいベスティアリ=サンを殺した！報復を！」普段の慇懃な笑顔をかなぐり捨て、甲高い声で猛り狂う。 9

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ダンスマカブルの目が細まる。ベスティアリとは、アマギキ・ゴジョカイ・ギルドに所属する別のニンジャである。今は対峙する三人の間に、生首だけが転がっている。「若輩といえ奴もニンジャ。しかも恐るべき古代ローマカラテの使い手であったが……なるほどあの責め苦を生き抜いただけはある」 10

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「そうだねエ、いい加減始めなヨ、お二人＝サン」観衆のもう一端、バイオ白テン百パーセントの毛皮コートを着た女が邪悪な笑みを浮かべる。ナターリヤ・シモダ・ベリャーエフ。今やキンダチ・ストリートを二分する勢力となったロシア系マフィア、ベリャーエフ・シンジゲートの女ボスである。 11

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「イエス、ボス」スパロウがナターリヤに頷き、「いいな」隣に立つ巨漢に呼びかける。観衆の間に緊張が走る。半分はニンジャへの恐怖、もう半分は始まる闘争への期待。なんとなれば、このニンジャ・ショウダウンの観衆九十九パーセントが、アマギキとベリャーエフ、両陣営の構成員たちだからだ。 12

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そして……「おじさんは……だいじょうぶだよね？」残る一パーセントを構成する、二人のうち一人が、彼女をかばうように前に立つ老人に尋ねた。「まけないよね？」「ああ、大丈夫だ」老人は孫娘に言った。「あの人は強い……ちゃんと約束通り、ワシらの前に戻ってきたじゃろう？」「うん……」 13

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二人の会話の間にも……「ドーモ、ダンスマカブル＝サン。スパロウです」スパロウがアイサツ。イクサ開始時の、戦闘参加者によるアイサツはニンジャの掟である。「ドーモ、ダンスマカブルです」ダンスマカブルもアイサツ……そして。「アイサツせよ、裏切り者＝サン」 14

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「チッ」裏切り者と呼ばれた巨漢のニンジャは、ボロ布のような衣装の中、そこだけ白く真新しい包帯の下で、汚れた乱杭歯を剥きだしてアイサツした。「ドーモ、俺は……」 15

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「ショウダウン・イン・キンダチ・ストリート(前編)」

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数時間前。少女ルリ・イシバシは祖父の工房で一人アヤトリをしていた。 17